気象庁によると、赤道付近の南米太平洋沖の海水温度が平年よりも低くなる「ラニーニャ現象」が発生したそうです。過去、ラニーニャ現象の発生した年における冬は、東日本や西日本、奄美・沖縄地方で平年よりも気温が低くなる傾向があります。つまり、“寒い冬”になる可能性が高いということです。これから新しい暖房器具に買い換えるという家庭も少なくないでしょう。最近のトレンドについて、専門家に話を聞きました。
この冬の燃料高騰を踏まえるなら「エアコン」
暖房器具は設置場所や用途によって選び方が変わってきます。部屋全体を暖めるメインの暖房なのか、体の一部を部分的に暖めるものなのか、それぞれ適材適所があります。それぞれの電気代・燃料代も気になるところです。
独自開発の測定器やプログラムで家電性能の数値化を行う家電コーディネーター・藤山哲人さんは、今冬の化石燃料(灯油など)の高騰を指摘します。
「初期費用はかかるものの、ランニングコストとしての燃料代(電気代)でみれば、ガスや石油ストーブよりもエアコンのほうが断然安くなっています。リビングでは、今はエアコンが主流になっていますし、エアコンを中心に考えてはいかがでしょうか」
オールシーズン活躍するエアコンは、ヒーターやストーブと違って給油の必要がなく手軽です。さらに、やけどや発火の心配がないため、小さい子どもがいる家庭や留守番中のペットにも安心です。どんな人にもおすすめの暖房器具と言えるでしょう。
電気代が気になる人は省エネモデル、空気の乾燥が気になる人には加湿機能や空気清浄機能を搭載しているタイプがおすすめです。もちろん、6畳用とか10畳用というように、部屋の広さに合わせて選ぶのが基本です。
ただ、暑がりの旦那さんと寒がりの奥さんがいる場合、エアコンで2人が同時に快適に過ごせるようにすることはできるのでしょうか。
「三菱とかパナソニックには、暑がりの方に若干温度が低い温風を当て、寒がりの方に若干暖かめの温風を送風するという、そういった2つの温度の気流を出すエアコンがあります。これは2~3年ぐらい前から人気です。もう1つのタイプとしては、部屋全体を誰もが快適と感じるような春とか秋の状態にするように、できるだけ部屋内の温度差をなくして温度を均一にするエアコンもあります。富士通ゼネラルやダイキンが出しています。その2タイプから選んではいかがでしょうか」(藤山さん)
石油ファンヒーターには2つのタイプ
近年は寒冷地仕様のエアコンも増えていますが、本州に限れば、一般のエアコンでほぼすべてカバーできるほどパワーアップしています。室外機が凍らないような機能も施され、室外機の機能低下などの問題はほぼ解消されています。
「現状は各メーカーともだいたい、札幌と同じ緯度までなら寒冷地仕様でなくても大丈夫というところが多いです。釧路や函館などでも使えるということです。寒冷地仕様のハイパワーの機種だと、旭川までOKになります。」(藤山さん)
近年は異常気象の影響か、札幌でも暑い夏が続き、一昨年はエアコンの普及率がかなり上がりました。設置するまでに2ヶ月という状況もあったとか。
札幌はもともとFF(Forced draught balanced Flue)式と呼ばれる石油ファンヒーターが多かったのですが、徐々にエアコンに切り替わっているようです。
「石油ファンヒーターには2つの種類があり、FF式(密閉式強制吸排気)式は室内のファンヒーターから2つの管が屋外に出ていて、自動的に綺麗な空気を外から吸って、排気は外に出すようになっています。北海道は FF式 の石油ファンヒーターになっている世帯が多いので、窓開け換気の必要はありません。しかし、本州のファンヒーターの場合はFF式ではない形式(開放式)が多いので、エアコンとファンヒーターを併用した場合は、必ず換気をする必要があります」(藤山さん)
エアコンと空気清浄機が合体した機種も
日本電機工業会(JEMA)の統計によると、空気清浄機の2020年1~11月の国内出荷台数は前年同期比34.3%増の約239万台。出荷額は同45%増の約687億円となりました。コロナ禍で、空気清浄機を購入した家庭が増えた格好です。
ただ、置き場所の問題で、エアコンと空気清浄機をまとめたいというニーズもあり、2019年末に発売されたシャープの『Airest(エアレスト)』が人気になりました。
「よく売れていると言われる空気清浄機は、シャープのプラズマクラスター付き空気清浄機ですが、Airestにはそれと互角の性能の空気清浄機が付いています。最近のシャープのエアコンと空気清浄機は同時に使った場合、お互いの風を邪魔しないように通信し合って風向きを調整しています。」(藤山さん)
冬の電気代を節約するなら加湿器を使う
冬の太平洋側はどこも乾燥するので、加湿器を使う人も多いでしょう。加湿器は美容や健康のためだけでなく、電気代を節約するにも役立ちます。
「加湿器をつけると体感温度が上がります。加湿器を入れて部屋の湿度を50~60パーセントにすると、エアコンの設定温度を2~3℃ぐらい下げても同じ暖かさを感じられます。エアコンや電気ストーブは、何かを燃やすタイプの暖房ではないので、温度が上がると必ず空気が乾燥します。のどが弱い方や肌の乾燥が気になる人は、セラミックヒーターやオイルヒーター、床暖房などでも加湿器を併用したほうがいいです。逆に、石油ファンヒーターやガスファンヒーターのように、何かを燃やすタイプの暖房は、加湿器を併用すると加湿しすぎになります。石油ストーブにやかんをかけるのもよくないです」(藤山さん)
どうせ買い換えるなら加湿機能の付いたエアコンを買いたいところですが、加湿器を別に買ったほうが断然安いとのこと。また、室外機の高さが20~30センチ高くなってしまうので、場合によっては置くことができない家庭もあるかもしれません。
メインの暖房であるエアコンの効率的な使い方
高気密高断熱の家だと、エアコンは1日中付けっぱなしにしたほうが電気代は安くつくと、今では広く知られています。
「自動運転モードがあれば、一番いいです。最近のエアコンは、部屋から人がいなくなった場合、自動的にそれを検知して、すぐ帰ってくる場合はスタンバイ状態になり、なかなか帰ってこない場合は電源自体をオフにするタイプがあります。自動的に節電してくれるので、自動運転がいいです」(藤山さん)
高気密高断熱の家でない場合や、エアコンに自動運転モードがなかったら、自分で電源を切らなければなりません。
「部屋を空ける時間として30分が目安。大都市圏で近所のコンビニに行くのであれば、切らない方ほうが電気代は安くつくと言えます。でも、スーパーに夕食の材料買いに行くのであれば、おそらく30分以上かかると思いますので、電源は切ったほうがいいでしょう」(藤山さん)
<取材協力>
家電コーディネーター・藤山哲人
https://www.facebook.com/tetsuhito.fujiyma