JR常磐線は、開業100年を超える歴史ある沿線。品川仙台間を結ぶ長い沿線でもあります。2015年には上野東京ラインが開業し、東京駅へのダイレクトアクセスが可能に。利便性が大きく向上しています。今回は、高度成長期以降、子育て層の支持を集め発展した松戸や柏といった都市と結ばれるJR常磐線沿線の住宅事情について紹介します。
常磐線の特徴
JR常磐線(以下、常磐線)は、東京都から宮城県までを結ぶとても長い沿線です。上野駅から仙台駅までの路線距離は、360キロメートルを超えます。歴史も長く、1889年の水戸鉄道の水戸〜小山間開業が起源です。1896年には、首都圏の南千住、北千住、松戸、柏、取手といった主要駅も開業しています。
1971年には、東京メトロ千代田線との相互直通運転がスタート。各駅停車の常磐緩行線が大手町駅へ直結する一方で、快速扱いとなる常磐線は日暮里駅、上野駅と結ばれています。
東京メトロ千代田線の相互直通運転以降は、通勤利便性の高い住宅地として沿線の街は発展します。なかでも、松戸市、柏市は首都圏のベッドタウンとして多くの住宅が建てられました。
2015年に上野東京ラインが開業すると、それまで上野駅が終着駅だった常磐線は東京駅を経由して品川駅まで直通でアクセスできるように。横浜駅などへもスムーズにアクセスできるようになりました。常磐線快速利用で柏駅から東京駅までは、わずか7駅。首都圏の主要沿線の中でも、常磐線は都心アクセスに優れた沿線と言えるでしょう。
東京都心まで早い、暮らしやすい 自然が豊富な常磐線沿線の街
常磐線沿線の魅力として挙げられるのが、良好な通勤アクセスです。東京メトロ千代田線綾瀬駅の隣駅の亀有駅や金町駅からは、大手町駅へ直通20分台でのアクセス。東京都心のビジネスエリアへダイレクトに30分以内で往来できるのは大きな魅力です。また、松戸駅からは常磐線快速利用でターミナル駅北千住駅へ1駅8分。東京駅へも直通電車なら30分程度でアクセスできます。
また、住拠点としてにぎわいのある街が多いのも常磐線沿線の街の特徴です。東京メトロ千代田線が乗入れたことで、1970年代以降多くの街が住宅街として発展。例えば、亀有駅などは、「亀有銀座商店街」や「亀有中央商店街」など複数の商店街が点在し、2006年には大型商業施設「アリオ亀有」も誕生。駅前には「リリオ亀有リリオ館」などの複合商業施設なども点在する暮らしやすい街です。
常磐線沿線の街の特徴のもう一つが、豊かな自然が残っていること。沿線には、中川、江戸川、手賀沼といった川や湖があり、自然を活用した公園も点在します。
たとえば、金町駅が最寄り駅の水元公園は、都内で唯一の水郷公園で、開園面積は23区内の都立公園としては最大の963,630.81平方メートルにも及びます。柏市と我孫子市の間に位置する手賀沼の周辺には、手賀沼公園や柏ふるさと公園などがあり、地域の憩いのスポットとして多くの人に親しまれています。
住宅価格はというと、常磐線には値ごろ感がある街も存在します。たとえば、新松戸駅なら新築マンションの3LDKタイプが3,000万円台で手が届きます。松戸市や柏市は戸建ての供給も活発なので、住まい探しの選択肢も豊富です。東京方面へ通勤するファミリー層にとって魅力的な沿線と言えるでしょう。
次に筆者おすすめの常磐線の街を3つ紹介します。
再開発で駅前が整備 水元公園や柴又も近く、暮らしやすい金町
常磐線でおすすめの街としてまず挙げたいのが、金町駅(東京都葛飾区)です。東京メトロ千代田線が乗入れる常磐緩行線の駅で、ターミナル駅の北千住駅へは3駅約9分。大手町駅へも直通でアクセス可能です。
京成金町線の京成金町駅への乗り換えも可能で、1駅で柴又駅へ到着。映画『男はつらいよ』で有名な柴又帝釈天があり、参道には下町情緒あふれるお店が並びます。
水元公園や中川、江戸川の河川敷など豊富な自然が残る金町エリアですが、この10年あまりでさらに街が魅力的に変わりました。2009年には、金町駅南口駅前の複合再開発によるタワーレジデンスである「ヴィナシス金町」が誕生。「葛飾区立中央図書館」やスーパー「マルエツ」、飲食店などとマンションが一体で整備されました。
新宿6丁目地区では、2013年に「東京理科大学葛飾キャンパス」が誕生。区立公園として葛飾区最大の約7.1万平方メートルもの「葛飾にいじゅくみらい公園」も整備され、休日は多くの家族連れでにぎわいます。
さらに、2021年には金町駅南口に複合再開発施設「ベルトーレ金町」がオープン。カフェや飲食店、クリニックに加え、子どもから大人まで多彩な活動や体験ができる施設「カナマチぷらっと」が誕生。キッズスペースやライブラリースペース、創作室、テレワークブースなども用意されています。
駅前に団地があるなど、住宅地として古くから発展したエリアであるため、金町駅周辺は飲食店や商店など多彩なお店がそろっています。東金町一丁目西地区第一種市街地再開発事業の市街地再開発組合が設立されるなど、さらなる再開発の動きもあります。街の将来性が期待できることも注目ポイントです。
金町駅周辺では、活発に新築マンションが販売され、3LDKタイプが5,000万円台で手が届くケースも。中古マンションストックも豊富で、徒歩圏でも3LDKタイプが2,000万円台から検討可能です。
新築戸建ての供給も活発で、徒歩圏エリアで4LDKタイプが4,000万円台から検討できます。さまざまなタイプの住宅をニーズに合わせて比較検討できるのも、金町エリアで住まいを探すメリットと言えるでしょう。
東京駅まで直通約30分 駅周辺の利便性が高い松戸
49万人を超える人口を誇る松戸市の中核駅として発展したのが松戸駅(千葉県松戸市)です。常磐線快速利用で北千住駅へ1駅約8分。東京駅までも直通なら30分程度でアクセス可能。都心通勤者にとっては、とても便利な街です。
松戸の魅力は、駅周辺に商業利便施設が集まっていること。新京成線が乗り入れるターミナル駅でもあり、駅周辺には商業ビルが建ち並び、西口・東口ともにペデストリアンデッキで結ばれています。現在、東口では駅の改良工事が進行していて、東西通路の幅拡張や6階建ての駅ビルが建設中です。
松戸駅周辺には、「アトレ松戸」「ダイエー松戸西口店」のほか、「イトーヨーカドー松戸店」の入る「プラーレ松戸」「ピアザ松戸」などがあります。また、「KITE MITE MATSUDO(キテミテマツド)」には、「ロピア松戸店」をはじめ多彩なお店が入っています。街の中心市街地に生活関連施設がコンパクトにそろっているので、買い物にはとても便利です。
「松戸市役所」や「松戸市文化ホール」、「松戸市民会館」「松戸市立図書館本館」などの公益施設もそろっています。「松戸中央公園」などの憩いの場もあり、クリニックや病院などの医療施設も豊富なので、いざというときにも心強いでしょう。
松戸駅周辺でも新築マンションが販売されています。2LDKタイプは3,000万円台から、3LDKタイプは4,000万円台から選べます。中古マンションの流通も活発で、3LDKタイプが3,000万円台から販売されています。また、新築戸建ては駅まで距離のある立地の物件が中心ですが、徒歩圏でも4,000万円台から見つけられます。都心アクセスが良好かつ商業施設も充実した街なので、アクティブな共働き夫婦におすすめの街です。
とにかく便利な街・柏 商店街や商業施設も充実
最後に紹介するのが、柏駅(千葉県柏市)です。常磐線の快速停車駅で松戸駅から一駅先の停車駅となります。山手線へのアクセスも良好で、20分台で日暮里駅や上野駅へアクセス可能。東京駅へも30分台で往来ができます。
柏駅の魅力は商業施設の充実。人口43万人超(2021年11月1日現在)の柏市の中心だけに、柏市役所などの公益施設に加え、駅周辺部中心に商業施設が充実しています。
東武野田線も利用できるターミナル駅で、駅の東西はペデストリアンデッキで行き来が可能。「柏高島屋ステーションモール」や「柏マルイ」「柏モディ」といった商業施設にスムーズにアクセスできます。駅前からは、ハウディモールやアーケードのある柏二番街商店会などの商店街が連なります。家電量販店から飲食店、物販店、スーパーなどがそろっていて、食事や買い物を一度に済ませられます。
また、駅周辺部は商業エリアが集積している一方で、10分ほど歩くと住宅街が広がります。生活利便性の高さと落ち着いた住環境の両方がかなうのは、柏駅の魅力でしょう。豊かな自然も身近にあり、「手賀沼公園」や「柏ふるさと公園」といった憩いのスポットも充実しています。
さらに、「日立台公園」の敷地内にある「三協フロンテア柏スタジアム」は、サッカークラブのホームスタジアム。「セブンパークアリオ柏」や「モラージュ柏」といったロードサイドの複合商業施設も点在しているので、車利用ならオフタイムの選択肢もさらに増えます。また、駅前に商業施設がそろった柏の葉キャンパス駅や流山おおたかの森駅などへもアクセスしやすいエリアです。柏は、豊かなライフスタイルがかなう街と言えるでしょう。
柏駅周辺は、新築マンションの供給も活発です。駅距離などの立地によってマンションの特性も異なりますが、3LDKタイプのファミリー向けの間取りが中心です。価格帯は、3LDKが4,000万円台から購入可能。共働きなら十分手が届く価格設定で分譲されています。同様に、中古マンションの流通も活発で、3LDKタイプが3,000万円台から検討可能。予算に応じて新築と中古を比較できます。新築戸建ての分譲は限られますが、1駅隣の南柏駅では供給もコンスタントにあります。徒歩圏で新築戸建てが3,000万円台から手が届きます。
東京駅周辺の再開発で将来性も魅力の常磐線
通勤アクセスが良好で生活利便性の高い街が多く、自然も身近な常磐線沿線ですが、日中時の電車の本数がやや少ないことを頭に入れておく必要がります。たとえば、松戸駅の10時台の電車の本数は7本、常磐緩行線の停車駅新松戸駅は7本です。沿線にベッドタウンが多いだけに、通勤時以外の電車の本数は限られています。
しかし、駅徒歩圏で新築マンションや戸建てに手が届きやすい点は、常磐線沿線で住宅を選ぶ大きなメリット。特に東京駅周辺では、八重洲地区や常盤橋地区の再開発で、今後もオフィスが増えそうです。そのエリアにダイレクトにアクセスできる常磐線は、将来性も期待できるでしょう。商店街や大型商業施設が充実し、豊かな自然が身近にある常磐線沿線の街は、休日の過ごし方の選択肢も多彩。都心通勤のファミリー層や若いカップルに特におすすめしたい沿線です。