11月17日(水)に消費者庁から「着衣着火に御用心!毎年約100 人の方が亡くなっています!」との見出しでニュースリリースが公表されました。「着衣着火」とは同資料によれば何らかの火源により身に着けている衣類に着火した火災のこと。あまり聞きなれない言葉ではありますが、人間の身に一番近い距離の火災であるため、正しい対処法を知っておく必要があります。今回はこの消費者庁の資料から抜粋する形で「着衣着火」に関する事例や対処法をまとめます。
着衣着火に関する被害データ
今回発表された資料ではまず着衣着火に関する統計データが示されています。総務省消防庁「消防統計(火災統計)」によると、平成 27 年から令和2年までの6年間に火災により 6,944 人の方が亡くなっています(放火自殺者等を除く)。そのうち、着衣着火により亡くなった方は 572 人(約8%)で、そのうち8割以上が65 歳以上の高齢者(493 人)です。 年別に見ると、火災による死者数(放火自殺者等を除く)は毎年約 1,200 人で推移し、着衣着火による死者数は 100 人前後で推移しています。
また、総務省消防庁「火災の実態」によると、平成 27 年から令和元年までの5年間の着衣着火による死亡者数の内訳では、その他火気取扱中及びその他を除くと、たき火中の割合が1番多く、次いで炊事中となっています。
家での着衣着火原因はコンロとろうそくが多い
今回発表された資料によると、東京消防庁管内で平成 30 年から令和2年の間に発生した住宅内での着衣着火の出火原因は、こんろが約8割を占め、続いてろうそくが約1割でした。医療機関ネットワーク事業を通じて寄せられた屋内での着衣着火でも同様に、こんろが最も多く約6割、続いて仏壇のろうそくが2割以上を占めていました。
こんろ使用中の事例
・上半身をかがめた際に、こんろの火が衣服に引火
・こんろの奥にある鍋を取ろうとした際に衣服の脇の下に引火
・料理中にブラウスのひらひらした袖に引火
・料理中にこんろに背を向けてテレビを見ていたところ背中に引火
など、動作や服装によりこんろの火に近づき過ぎたため衣服に着火しています。
また、火に直接あたっていなくても、火から放射される熱により衣服に火が着くことがあるので、注意が必要です
仏壇のろうそくの主な事例
・供え物の花を替えようとしたところ衣服に着火した
・仏壇の掃除中に、ろうそくの火が袖に燃え移った
など、ろうそくの火が灯った状態で、仏壇周りで手を伸ばすような動作により着衣着火している事故が発生しています。
このような事例を踏まえて、消費者庁では以下の注意喚起をしています。
▼こんろ・ろうそく使用時の注意点
・こんろの奥に調味料など手に取る物を置かないようにしましょう。また、こんろ周りは整理整頓をしましょう。
・料理をする際は、マフラ―やストールなどは外し、袖口やすそが広がっているゆったりした衣服は控え、炎に近づかないように注意しましょう。
・鍋等を火にかける際は、鍋底から炎がはみ出さないよう、適切な火力に調整しましょう。「ながら掃除」などはせず、火のそばで作業をするときは一度消火しましょう。
・仏壇周りの掃除、供え物の入替えなどを行う際は、ろうそくの火は消しましょう。
コロナ禍で消毒用アルコールによる引火にも注意
新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、手指の消毒等のため、消毒用アルコールを使用する機会が増えているとのこと。消毒用アルコールには危険物に該当するものもあり、取扱いを誤ると火災等を引き起こすおそれがあるので、十分な注意が必要です。
消費者庁によると消毒用アルコールは火気により引火し易いため、手指消毒等の際、アルコールが衣服に染み込んでしまうと、直後に火のそばに近づいた場合、衣服に着火する危険があるとのこと。
また、消毒用アルコール以外でも、
・暖房器具へ給油する際に燃料を衣服等にこぼし、そのまま暖房器具の火を着ける。
・高濃度アルコール飲料を衣服等にこぼし、その直後にたばこの火を着ける。
・作業着に付着した油汚れをそのままにして、火花が飛び散る作業をする。
など、引火し易い液体等が衣服等に付着したまま火を取り扱うことは大変危険としています。
これらの状況を踏まえ消費者庁では以下の注意喚起をしています。
▼アルコールなど引火し易い液体が衣服に付着等した場合の注意点
・火のそばには近づかないようにしましょう。
・ライターなど火の出る機器等は使用しない、暖房器具に火を着けないようにしましょう。
万が一の対処法
消費者庁では万が一着衣着火が発生した場合の対処法を以下の通りまとめています。
着衣着火の対処法
・衣服に着火した場合は、その衣服が素早く脱ぐことができる場合は脱いでください。脱ぐことが難しい場合は、着火している部分を叩いたり、水をかけるなどして早急に消火しましょう。
・消火に使う水は近くにあるものを利用してください。(例:水道水、流しの洗い桶の水、浴槽の水、花瓶の水、飲み物など)
・水がない場合は、走り回らないでその場に転がって、燃えているところを床や地面に押し付けて消火してください。走ると風が起きて火の勢いが増す可能性があり、かえって危険です。また、転がることは、火が顔まで上るのを防ぐ効果もあります。
・衣服の火が消えたら、すぐに 119 番通報をしてください。やけどを負っていたらその旨も必ず伝えてください。
やけどの対処法
消火した後も水で冷やし続けて、やけどを悪化させないようにしてください。無理に衣服は脱がず、衣服の上から冷やしましょう。やけどの部位への刺激が強い場合は、容器に貯めた水で冷やすようにし、水道水・シャワーを直接当てないようにしましょう。
やけどを負った場合は自己判断で対処せず、医療機関を受診してください。事故事例の中には調味料等をやけどした部位に付けていたものもありましたが、かえって症状を悪化させたり、治療の妨げになる可能性がありますので、絶対にやめてください。