窓を開けているとさすがに寒くなってきました。気象庁が今年の冬はラニーニャ現象の影響によって西日本を中心に厳しい寒さになる恐れがあると警告していますが、足元では原油価格を中心にエネルギー価格や電気代が上昇しており、私たちのお財布も寒くなりそうです。
しかも今冬は電力危機の可能性があるとの報道もあります。これらの事象の背景を学びつつ、私たちはどのように対策すればよいかを考えましょう。
なぜ電力危機が迫っているのか?
そもそも何をもって電力危機とするのでしょうか。
一般的な電気は原油などのように、基本的には貯めておくことができません。そのため、電力の需要と供給のバランスを一定に保つ必要があります。電力の需要量は気温や人々の行動によって波を打ちながら変化します。
経済産業省や資源エネルギー庁によれば、この波というのが3%程度の変化率のため、電力供給の余力を示す「予備率」を最低でも3%をあらかじめ確保する必要があるとされています。
参考:経済産業省、資源エネルギー庁「今後の電力需給運用について」
現行のルールでは地域間で電力を融通するなどのあらゆる対策をとってもなお、不足エリアの予備率が3%を下回る見通しの場合は国から当該電力会社の管内に対し「受給逼迫(ひっぱく)警報」を発令することとなっています。
2022年2月には北海道、東北、東京、中部、北陸、関西、中国、四国、九州、沖縄の10エリアのうち、東京~沖縄の7つのエリアで3%台となり、過去10年で最も厳しい状況になるとの見通しが示されています。
この背景には世界的な脱炭素の流れがあります。太陽光発電などの再生可能エネルギーの普及によって、電力会社が需給バランスを保つために再生可能エネルギーによる発電が増える日中は火力発電の稼働率を落とします。その結果、火力発電の採算が悪化するため、老朽化した火力発電所の運転を取りやめることになり、供給量が不足しているのです。
生活を苦しくさせる物価上昇
コロナ禍において感染拡大を防止するために世界各国は経済活動を抑制していましたが、2021年の春先から欧米をはじめとする多くの国が経済活動を再開しました。
その結果、エネルギー需要が急増して原油価格が上昇し、企業の利益は圧迫され、家計にも物価上昇の影響が生じています。そこで、先進各国が産油国に対して原油の増産をするように働きかけましたが、ここでも世界的な脱炭素の流れを背景として産油国が増産に及び腰になっており、先進各国の呼びかけには応じず増産を見送ったことから、暫くは原油価格が下落することは考えにくそうです。原油の代替としてLNG(液化天然ガス)や石炭の価格も上昇していることから、11月の電気料金は大手10社すべてが値上げを決め、これで3ヶ月連続の値上げを全社が決めたことになります。
足元では食肉や小麦、コーヒー、食用油などの値段も上昇しており、電気代だけでなく様々な生活必需品の値段が上昇し私たちの生活を苦しくしています。いずれも経済の再始動による需要増と、人手やコンテナなどが不足するという供給制約という需給のミスマッチによって生じているもので、需給バランスが取れるまではしばらく続きそうです。
収入面でも厳しくなってくる
物価を表す経済指標である消費者物価指数を見てみると、9月の消費者物価指数(除く生鮮)は前年同月比+0.1%となっており、私たちの実感ほど上昇していないことが分かります。しかし、同月の企業物価指数を見てみると同+6.3%、輸入物価指数(円ベース)は同+31.3%となっており、こちらは実感通り物価上昇を表しています。
これが何を意味しているのでしょうか…日本の場合、企業が原材料高を最終価格に転嫁して値上げをすると、すぐに買ってもらえなくなってしまうため、なかなか価格転嫁できないという事情が分かります。しかし、企業はボランティア団体ではありませんから、利益を出さなければなりません。その結果、何が起こるかというと、非正規雇用を増やしたり、新規採用や設備投資を控えたり、または昇給や賞与を抑えたりしてコストを下げるのです。
つまり、世界的な物価高の影響で、私たちが買うものや日常的に払う金額が高くなるだけではなく、購買力の基となる収入が増えない、または減ってしまう可能性も出てきているということです。
家計で出来ることはあるの?
生活に必要な電気代や食品の価格が上昇する一方で、収入が増えない、または減ってしまう可能性が高まっている中で、私たち家計ができることはあるのでしょうか?
原油価格や電気代を操作することもできませんし、会社からもらう給料や賞与を操作することもできない以上、地味でもできることを着実にやっていくしかありません。
電気代を大幅に削減できるわけではありませんが、筆者は自宅の照明器具を白熱電球から
・LEDランプに切り替えたり、
・スマホやパソコンのディスプレイの明るさの設定を抑えたりしています。
また、最近は夏は外からの暖気を遮断し、冬は室内の温度を外に逃がさない優秀なカーテンも売られているため、そのようなグッズを揃えることも長期的には電気代を抑えることに繋がるでしょう。
さらに資産エネルギー庁では日常生活に支障のない範囲で電気を効率的に使用するための具体例として、
・冷蔵庫内の温度設定を「中」や「弱」にすることや、
・冷蔵庫で余分なエネルギーを消費しないよう、熱いものをさましてから入れるようにすることも節電につながるとしています。