年末調整で会社に提出する書類には、扶養家族について記載する申告書があります。年末調整における扶養家族とは、どのような人のことを指すのでしょうか。今回は、年末調整の扶養家族について、扶養の対象となる人や、扶養控除を申請する際の注意点などを解説します。
そもそも年末調整をする意味は?
毎月の給与から天引きされている源泉所得税は概算で算出されているため、実際に納めるべき税額とは差額が生じてしまいます。年末調整は、税額を確定させてその差額を精算するための手続きです。
年末調整の手続きは会社を通して行います。勤務先へ必要書類を提出し、すでに源泉徴収した分との差額を給与で清算してもらいます。対象となる人は給与所得を得ている会社員や公務員などです。
源泉徴収された金額と実際に納める税金は、年の途中で給与額に変更があったり、扶養家族が増えたりすると、大きく差額が生じてしまいます。また、生命保険や地震保険の掛け金を払っている人は所得控除の対象になるため、年間で支払った保険料によっても所得税額が変わります。これらの諸条件を加味して、年末に個人別に正確な所得税を再計算し直す必要があるのです。
年末調整における扶養家族とは?
所得税法上、控除対象の扶養家族がいる場合、一定の所得控除が受けられるため課税対象となる所得金額が低くなります。ただし、控除を受けるためには年末調整で所定の申告書を提出しなければなりません。年末調整における扶養家族とは、どのような人が対象になるのでしょうか。以下に解説します。
扶養家族の対象となる人
「扶養家族」といっても、健康保険上と所得税法上では対象者に違いがあります。年末調整においては、配偶者は配偶者控除の対象となるため、扶養家族には含まれません。年末調整で扶養家族に該当する人の範囲は、以下の要件のすべてに当てはまる人です。
・配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)
・都道府県知事から養育を委託された児童(里子を養育している場合)や市町村長から養護を委託された老人(養護委託制度により身寄りのない高齢者などを養護している場合)
・納税者(年末調整する本人)と生計を一にしていること
・年間の合計所得金額が48万円以下(給与収入のみの場合は103万円以下)
・青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと、または、白色申告者の事業専従者でないこと
同居していない親族も対象になる
年末調整における扶養家族は、必ずしも同居している人に限らず、別居している親族も控除対象となります。たとえば、一人暮らしの学生や別居している親なども、納税者本人と生計を一にしていれば扶養控除の対象と認められます。それらを正しく申告するためには「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に同居の有無や、別居の場合は住所や居所を記載して提出しなければなりません。
扶養控除の種類と控除額
扶養家族の範囲に該当する人のうち、年末調整をする年の12月31日時点で16歳以上であれば扶養控除が受けられます。控除額は、扶養家族の年齢や同居の有無によって以下の表のように4段階に設定されています。
扶養控除の手続きをするには?
扶養控除の対象となる家族がいる場合や、扶養控除の対象となる家族が増えた場合、どのような手続きが必要になのでしょうか。ここでは、年末調整での手続きのしかた、年末調整で手続きするのを忘れた場合の対処法を解説します。
年末調整で扶養控除の手続きをする場合
年末調整の書類は、年末が近づいたら会社から配布されることがほとんどです。所定の用紙に手書きで記入する場合もありますが、電子化を導入した会社ではシステム上でパソコンなどから手続きできます。
扶養控除の申請は、勤務先へ「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出します。扶養控除申告書は申告する扶養家族の有無にかかわらず提出しなければなりません。その年の途中に扶養家族が増えた場合や、扶養家族の範囲から外れた場合は、その旨を申告します。
扶養家族で同居していない場合は、納税者本人と生計を一にしていることの証明が求められる場合があります。その際は、定期的な仕送りの事実がわかる送金関係の書類が必要です。
年末調整で扶養控除の申請を忘れたら?
年末調整で扶養控除の申請を忘れた場合、源泉徴収票を交付する翌年の1月末日までは年末調整のやり直しをしてもらうことも可能です。ただし、会社はそれらに付随する法定調書や給与支払報告書の作成や再提出をしなければならず、担当者の負担が増えることになります。そのため、自分の不注意による申請忘れは、なるべく避けるべきです。
また、期限を過ぎた場合や自分で手続きをしたい場合は、個人で確定申告をします。控除漏れがあった場合は、受け取った源泉徴収票をもとに、5年以内であれば還付申告が可能です。
ただし、年末調整後に扶養家族が減った場合は、期限に関係なく年末調整をやり直して不足分の所得税を納める必要があります。
年末調整で扶養控除の申請をする際の注意点
年末調整では、扶養家族や配偶者について正確な情報を記載する必要があります。ここでは、会社に扶養控除や配偶者控除の申請手続きをする際の注意点を解説します。
配偶者の場合は配偶者特別控除もある
配偶者の所得が年間48万円を超えた場合、配偶者控除は適用されませんが、配偶者特別控除が受けられるケースがあります。配偶者特別控除の適用条件は、生計を一にする配偶者の合計所得金額が年間48万円超133万円以下で、納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下の場合です。配偶者特別控除の控除額は、下表に示すとおり納税者本人の合計所得金額と配偶者の合計所得金額によって決められています。
扶養家族の年収を正確に把握する
納税者本人が扶養家族や配偶者の所得を正確に把握しておらず、年末調整の手続きで過少申告をした結果、本来納めるべき所得税額が不足していた場合は、税務署から会社宛に是正調査の通知が届くことがあります。
たとえば、学生のアルバイト収入が年間103万円を超えていた、親の年金収入が増えていた場合などです。是正が必要になった場合は、不足分を会社から徴収され、会社が税務署へ納付することになります。
マイナンバー制度により法人や個人の納税情報などが紐づくため、誤認がある場合は発覚しやすくなっています。納税を正しく行うためにも、扶養家族の年収は正確に把握する必要があるといえるでしょう。
まとめ
年末調整における扶養家族とは、子どもや親などの決められた範囲の生計をともにする親族で、年間所得が48万円以下(給与収入のみの場合は103万円以下)の人のことを指します。扶養控除の対象には配偶者は含まれず、配偶者控除や配偶者特別控除が適用されます。扶養控除を受けるには年末調整か確定申告の手続きが必要です。会社へ扶養家族の申告をする際は、控除対象の要件をよく確認して、申告漏れや内容に誤りがないように注意しましょう。
(最終更新日:2021.12.06)