猫が庭にやってきて、鉢植えを倒したり、花壇を荒らしたり、フンや尿をされたりして困った…という経験はありませんか? 今回は、猫の習性といたずら対策について、岡山県動物愛護財団事務局長の國近寛康さんに詳しく伺いました。
猫はどんな習性を持つ?
「猫のいたずら対策に、より効果的に取り組むためには、まずはその習性や好みについて理解しておくことが大切です」と國近さん。猫は基本的に単独行動を好み、縄張り(テリトリー)意識の強い動物。花壇をトイレにしてしまうのも、排せつ物のニオイでテリトリーを主張するためだそうです。
一般的に猫のテリトリーは餌場や寝床から半径約200メートル以内(個体差あり)といわれていますが、オスは発情期を迎えると行動範囲をさらに広げます。
「このテリトリーを定期的にパトロールしてマーキングを行うための“通り道”を決めているんです」(國近さん)
猫はどんな場所を好む?
猫は、基本的に人間や犬のいない静かな場所を好みます。
「一方で、餌を探さなくても簡単にもらえる場所や、気持ちよく排泄できるふわふわしたやわらかい土・砂・芝生などが敷かれた場所も大好きです」(國近さん)
そのほか、高い場所も好みます。マーキングを行うための通り道もブロック塀や門の上といった、高い場所に決めていることがほとんどです。飼育する際にキャットタワーがあると喜ぶのもこの習性のためです。國近さんは「このような猫の好みや習性を、いたずら対策に利用しましょう」と話します。
いたずら猫の被害を防ぐ方法
猫を寄せつけない方法は数多くありますが、「この方法が最適!」というものはないそうです。
「猫には学習能力があるので対策に慣れて、すり抜けてしまうことも考えられます」と國近さん。対策のコツについて「どうしてもここに入ってもらっては困るという場所をピンポイントに定めて取り組むことです。いたずらをしてくる猫にどの方法が合っているのかを根気よく試し、心の余裕をもって対策していきましょう」と呼びかけます。
ゴミの処理を確実に行う
味が濃くおいしそうな匂いのする人間の食べ物は、猫にも魅力的な餌です。そのため、外に出された生ゴミをあさることがあります。
「ゴミ箱を屋内に置く、フタが開かないようにする、臭いが漏れないようにゴミ袋を重ねるなど、猫がゴミ箱をあさらせない工夫が猫のいたずら対策につながります」(國近さん)
水をまく
猫には濡れている場所を嫌う習性もあります。それを利用して、花壇などの周囲に水をまいておけば猫を遠ざけることができるそうです。
猫が嫌う臭いをつける
猫は強く臭うものや柑橘系の香りを嫌う傾向があります。酢・木酢液・レモン汁などのいずれかを薄めた液をスポンジや布に含ませ、猫の通り道や入ってほしくない場所に置いておきましょう。茶がら・コーヒーのかす・カレー粉・とうがらし・にんにくなどを置いておくのも効果的といわれています。「花壇であればまいておくのもおすすめ」とのこと。
通り道にネットを置く
テリトリーと思われる通り道に、園芸用ネットを置いておくのも効果的なのだそう。
「猫は足の裏がとても敏感で、ネットを踏むような感触を嫌がります。ネットはホームセンターで売っているもので十分です。使いやすいサイズにカットして使うとよいでしょう」(國近さん)
市販の猫よけ対策グッズを使う
ホームセンターで販売されている「猫よけグッズ」を試してみるのも一つの手です。
「ただしよく見かける犬猫用忌避剤は、猫だけではなく人間にとっても不快な臭いのものもあるので、選ぶ際には注意が必要」と國近さん。ほかにも、猫が「通り道」を通る瞬間に音を鳴らして驚かせる遠隔操作のブザーや、センサーで猫を感知して水をまいたり超音波を出したりするグッズもあるそうです。
猫のトイレを作っておく
さらに國近さんは「猫が来ること自体は許せるのであれば、発砲スチロールなどの箱に砂を入れてトイレを作ってみては?」と提案。
「決まった場所で用を足せるようにすることで、花壇や畑などを荒らさせないという方法です。もちろん個体差はありますが、根気よく試してみましょう」(國近さん)
猫を追い払うときの注意点
対策を打つ際は、猫のいたずらの大半は習性によるものだということを理解して臨みましょう。虐待にあたるような暴力的な行為は絶対にやめてください。
「法律で禁じられていて罰せられます。また、親猫が子どもを連れていた場合、捕まえて捨てるのも犯罪となります。猫のいたずらに頭を抱える気持ちもわかりますが、“命あるもの”ということを大前提に、心にゆとりをもって取り組んでください」(國近さん)
いたずら猫を増やさないことも大切
猫がいたずらをする背景には、人間による無責任な飼い方も一因として挙げられるそうです。安全で責任ある飼育を行い、不幸な猫を増やさないことが、いたずら猫を減らすことにもつながります。國近さんは「猫を飼う場合は室内飼育を基本とし猫が外に出たときに備えてマイクロチップや迷子札の装着を行うのがおすすめ。不妊措置をしておくといいでしょう」と話します。
そして、かわいそうだからという理由で、野良猫への無責任な餌やりも控えましょう。
「猫の繁殖を促してしまうだけでなく、残飯が放置されることで不衛生になり、近所同士のトラブルに発展する可能性もあります」(國近さん)
「地域猫」として育てる
野良猫を「地域猫」として、その場所で生活できるように地域で管理するという選択肢もあります。國近さんは「必ず避妊・去勢手術を行い、時間を決めて給餌をし、トイレの設置や餌場の掃除を行うことで、猫による被害も緩和されるでしょう」と話します。
地域猫として育てる場合、必ず近隣の理解を得たうえで、県の動物愛護センター・保健所・管理センターなどに相談しましょう。行政が間に入ることでスムーズに対応できます。また、避妊・去勢手術の経費は助成金が出ることもあります。
まとめ
いたずら猫を寄せつけないようにするには、猫の習性を利用して、入ってほしくない場所に個体に合った対策を施すことがポイントです。加えて、やってくる猫が飼い猫か野良猫なのかを地域で確認し合い、野良猫に避妊・去勢手術を行い、餌のやり方やフンの始末などに関するルールを決めて地域猫として管理することができれば、猫によるいたずら被害や新たに産まれてくる野良猫の数が減少し、より根本的な解決につながるでしょう。
【取材協力】
公益財団法人 岡山県動物愛護財団
事務局長 國近寛康さん
昭和54年から岡山県職員(獣医師)として動物関連施設に勤務。岡山県動物愛護センターの設立(平成17年)にも携わり、平成28年からは岡山県動物愛護財団の事務局長を務める。
岡山県動物愛護財団では犬猫の譲渡に関わる活動をはじめ、動物愛護イベント、しつけ方教室、不妊措置の推進活動、ボランティアスタッフとボランティア登録犬の育成などを行っている。また、センター敷地内には動物遊具・ドッグラン・展示室を備え、誰でも訪れて動物愛護について楽しく学ぶことができる。 http://ww9.tiki.ne.jp/~okadouaizai/index.html