アルヒでは、クックパッドと共同で、コロナ禍で生活にどのような変化が出ているのかを調査しました。その結果から住まいに関する変化を見ると、戸建て住宅を希望する人が増え、マンションでは中古マンションを希望する人が新築マンションを希望する人に迫る勢いです。なぜこのような変化が起こっているのでしょうか。
コロナ禍で住まいを見直す動きが本格化している
ARUHIとクックパッドは共同で調査を実施、その結果を『料理と暮らしの白書2021』として発表しました。その中から、住まいに関する調査結果を見ると、コロナ禍で住まい選びの在り方が大きく変わっていることがわかりました。
調査結果はこちら:コロナ禍で重視したい「住まい」の条件は? 『料理と暮らし白書2021』
まず、コロナ禍をきっかけに新居の購入・住み替え・建て替えなどを実施・検討した人は全回答者のうち、22.5%。そのうち、11.4%の人が「賃貸から賃貸、実家などへの引っ越し」をしており、「現住まい(持ち家)のリフォーム・リノベーション」を行った人が10.8%、そして「住宅を購入した」人が10.4%いました。
また、実施に至らないまでも、「住宅の購入を検討」している人が25.7%、「賃貸から賃貸、実家などへの引っ越しを検討」が21.1%、「現住まい(持ち家)のリフォーム・リノベーションを検討」が20.5%などとなっています。コロナ禍で住まいを見直す動きが一部の層で本格化していることがわかります。
戸建て住宅を希望する人が6割超に
具体的に、住まいの購入・住み替えを実施・検討している人に、物件の形態を聞いたところ、図表1のような結果でした。
「新築戸建て(建売住宅)」が25.7%のトップで、次いで「新築マンション」が15.9%、「中古マンション」が14.5%です。
1位の「新築戸建て(建売住宅)」のほか、「土地付き注文住宅」「注文住宅(建物のみ)」「中古戸建て」を購入・検討する人も多く、戸建て住宅の合計は62.5%に達しています。
戸建ては、一般的にマンションに比べて床面積が広い物件が多いため、在宅勤務が増え、在宅時間が長くなっている中でも、比較的ゆとりをもって生活できます。加えて、換気しやすく、万一家族に感染者が出ても、ゾーニングによって家族への感染を防ぎやすいなどのメリットがあります。コロナ禍で、戸建て住宅のそうしたメリットが改めて見直されていると言ってもいいかもしれません。
また、新築より価格が安いことや同じ予算なら、新築より中古のほうが広い住まいを手に入れることができることなどから、中古マンションや中古戸建てなどの中古住宅への関心も高いと言っていいでしょう。
先行き不透明のコロナ禍では価格の安さが重要
これは、リクルートの調査でも明らかです。『住宅購入・検討者調査(2020年)』によると、住宅の検討種別の割合を見ると、コロナ禍後の2020年調査では、「注文住宅」が50%のトップ、以下「新築マンション」「新築一戸建て」「中古マンション」「中古一戸建て」と続きます。これをコロナ禍前の2019年の調査と比較すると、「注文住宅」は7ポイント、「新築マンション」は2ポイントのダウンですが、「中古一戸建て」は5ポイント、「中古マンション」は3ポイントのアップとなっています。
何と言っても、中古住宅は新築住宅に比べて価格の安さが大きな魅力。コロナ禍で収入がなかなか増えず、先行きの見通しも立ちにくい現状です。それだけに、マイホームを検討するにしても、予算をできるだけ抑えたいという気持ちが強くなり、それが中古住宅への関心の高まりにつながっているのかもしれません。
中古マンションなら新築の6割程度で手に入る
そこで、実際のところ中古住宅はどれくらい安いのか、マンションと戸建住宅の価格を見てみましょう。
図表2は、首都圏の新築マンションの発売価格の平均と、中古マンションの成約価格の平均の推移をまとめたものです。新築マンションは2017年度から2020年度まで6,000万円前後で推移しています。
月別に見ると平均7,000万円を超える月もあり、東京23区だけに限ると平均で1億円を超える月すらあるほど高騰しています。
中古マンションも新築同様に価格が上がってはいるのですが、平均成約価格は2020年度でも3,668万円と、新築の5,994万円の61.2%にとどまっています。2014年度の54.8%に比べるとその差はやや縮まっていますが、新築に比べると格段に安く手に入ることは間違いありません。
これだけの価格差があるのですから、中古住宅なら同じ予算で広めの住まいを手に入れやすくなります。新築だと専有面積60平方メートルの住宅しか手に入らないエリアであっても、中古なら70平方メートル、80平方メートルが可能なりますから、その分ワークスペースを確保するなど、コロナ禍に対応した住まいを確保しやすくなりそうです。
中古戸建ては新築より土地面積が30平方メートル近く広い
戸建て住宅については、マンションほどの価格差はありません。図表3にあるように、首都圏で2020年度に分譲された新築戸建て住宅の平均価格は3,575万円。対して、中古戸建て住宅の成約価格の平均は3,199万円です(図表3)。
ただ、この東日本不動産流通機構の統計には、大手不動産会社や大手住宅メーカーなどが手掛ける、比較的規模の大きな物件は含まれていません。規模の大きな物件だと、新築マンション並みに5,000万円台、6,000万円台の物件も多く、それらと比べると中古戸建て住宅はやはりかなり安くなります。
しかも、中古戸建て住宅は新築に比べて土地面積が広いのが大きなメリットです。図表4にあるように、2020年度の新築戸建て住宅の土地面積の平均が121.14平方メートルであるのに対して、中古戸建ての平均は149.63平方メートルです。
新築より30平方メートル近く広いわけで、これだけの広さがあれば、庭いじりを楽しんだり、外出がままならない環境であっても、庭でキャンプ気分を満喫したり、バーベキューを楽しんだりしやすくなるのではないでしょうか。
中古戸建ては住宅面積も新築より広くなっている
土地面積だけではなく、建物面積にも違いがあります。2020年度の成約物件の平均を見ると、新築戸建て住宅が97.90平方メートルに対して、中古戸建て住宅は105.51平方メートルです。中古のほうが7.61平方メートル広く、これは1畳を1.62平方メートルとすれば、4.7畳ほどに相当します。この広さがあれば、ワークスペースを確保することができますし、コロナ禍には書斎や趣味の部屋などにあてることができるでしょう。
まれなケースかもしれませんが、中古戸建ては土地面積が広いので、物件によっては建築基準法に基づいて増築できるケースがあるかもしれません。
コロナ禍で在宅ワークの増加に対応して、郊外や地方に住まいを求める人が増える傾向もあるようです。今住んでいる場所より郊外や地方へ移住するのなら、安くて広い住まいが手に入りやすい中古戸建てがうってつけといっていいでしょう。
ただ、郊外や地方は資産価値の上昇をあまり期待できないので、コロナ禍後に再び都心や都心近くへ引っ越したくなったとしても、買い替えは難しくなるかもしれません。郊外や地方の戸建てを取得して移住する場合、資産価値にこだわらない、あるいはその地に永住するといった気持ちで取得するようにしたいところです。