木造住宅の施工不良が大きな課題に。建築主はどう注意すればよい?

地震大国の日本において、木造住宅の施工不良がいま大きな課題になっています。施工不良はどうして起きるのか、建築主の私たちはどう注意すればよいのか取材しました。

国土交通省によると、2016年4月に起きた熊本地震では、新耐震基準導入以降に建てられた木造建築物で倒壊したものについて、状況が把握できた77棟のうち73棟は「現行規定の仕様となっていない接合部による影響」が倒壊の原因だと判断されています。

「現行規定の仕様となっていない接合部」とは、金物(木材と木材を接合する際の金属部品)が建築基準法で求められる規定通りの施工ではなかったということです。建物全体からすると小さな部品である金物であっても、その施工が正しくなければ、現在の新築でも相応のリスクがあることを示しています。

個人向け不動産コンサルティング会社・さくら事務所では、2019年1月~2020年12月に顧客から依頼された木造住宅の新築工事現場チェックを集計し、その結果を発表しました。耐震性に最も影響する構造部分の検査を実施した182件のうち150件、つまり約82%の物件で施工不良が発覚していたとのことです。

具体例(1)釘が正しく打たれていない

釘(くぎ)が正しく打たれていないというのは、具体的に「釘を打つ間隔が広い」「打つ場所のズレ」「釘の不足」「めり込み」です。すべての施工不良のうち41.76%を占めています。写真は、打たれていなければならない場所に釘がないケースで、緑のテープを貼っている部分は、設計図面上では釘が打たれているべきところです。

「めり込み」とは、釘を強く打ち過ぎてしまっていることを指します。表面よりも釘が4ミリメートル深くめり込むと強度が半減するというデータもあります。

写真提供:さくら事務所

具体例(2)あるべき「金物」の付け忘れ

施工不良のうち37.91%を「金物の設置不足」が占めています。あるべき場所に金物が取り付けられていないというケースです。熊本地震で倒壊した木造住宅のほとんどの原因もこの金物に関するケースでした。構造部分に金物の不備があると当然ながら耐震性は弱まり、倒壊する危険性は高まります。

金物が付けられていない状態

写真提供:さくら事務所

金物がつけられた状態

写真提供:さくら事務所

契約前に施工会社のチェック体制を確認

まず、施工不良はどうして起きるのでしょうか。さくら事務所のホームインスペクター(住宅診断士)田村啓さんは業界の少子高齢化と人手不足を原因に挙げます。

「職人と現場監督は慢性的な人手不足です。東日本大震災以降はその状況が加速しました。ノウハウを持つベテランは引退する一方、若い職人がなかなか入ってこないので、高齢化が進んでいます。最近は新築戸建ての販売も絶好調なので、もともとあった人手不足もひどくなり、不具合が出やすい環境になっています」

田村さんは施工不良のようなヒューマンエラーは起きるものだという前提で考えるべきだと話します。その上で、住宅購入の際の契約時には、施主には施工会社のチェック体制を確認してほしいとアドバイスします。

「住宅工事自体はミスが起きることを前提に、さまざまな二重三重のチェックがなされています。職人が自分でチェックし、現場監督がチェックし、大きな会社だと現場監督の上長もチェックする。ただ、今は人手不足で着工棟数が多いという状況なので、正式契約する前に、現場監督がいったい何棟ぐらい受け持っているのか、チェック体制はどうなっているのかを確認してください」

打ち合わせでしっかりとした対応をしているかチェックを

打ち合わせの段階でも、施工会社の特徴が見えてくる場合があります。

「施主と施工会社はたくさんの打ち合わせを行いますが、そのたびごとに修正箇所を反映した新しい図面でなければなりません。しかし、古い図面が残っていたり、契約のときに図面が古いままだったりという会社は要注意です。それから、見積もりがどんぶり勘定だったり、着工前の図面の種類がものすごく少なかったりとか。そういう会社は一事が万事で、現場の緊張感不足が心配です」(田村さん)

自分で現場をチェックすることも可能だが注意も

耐震性に最も影響する構造部分、すなわち柱や梁に関する施工不良は、住宅が完成した後に確認することはできません。もちろん、ふだん住んでいて異変に気付くこともないでしょう。

それだけにしっかりした施工会社を選ぶのは当然ですが、建築中に自分で現場をときどき見に行くことも大切です。ただ、その際に注意しなければならないこともあります。

「施主が自分で現場を見に行くのは良いことです。ただ、監督さんは毎日付きっ切りで見ているわけではないので、施主が行くタイミング次第では、例えば、釘の打ちミスを施主が現場監督よりも先に見つけてしまうこともあり得ます。そのとき、目くじら立てて『どうなってるんだ!』とやってしまうと、そこからすれ違いが生じてしまう。相互不信になると結果的に良い仕事にはつながりません。施主が自分でチェックしに行くのであれば、監督さんに連絡を入れましょう。それで大きなコミュニケーションロスはだいぶ防げます。施主用にヘルメットや内履きの靴を準備している会社もあるし、そういうのも監督さんが管理しています」

職人も現場監督もプロ。まずはリスペクトを

施工不良がテーマだと、どうしても現場監督や職人を批判するような反応が出がちです。しかし、田村さんは「勘違いしてほしくない」と語ります。

「職人さんも現場監督さんも欠陥住宅を造ろうとしている人は一人もいません。職人も監督もプロであり、まずはリスペクトの気持ちを持っていただきたいです。ただ、ミスは環境要因で多発してしまうので、それに対するリスクヘッジは施主も含めて取っていく必要があります」

施工不良が多発しているのであれば、本来は施工会社の経営者がその課題をどうすべきか考えるべきでしょう。

〈取材協力〉
株式会社さくら事務所
https://www.sakurajimusyo.com/

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