マンション暮らしで意外と困るのが洗濯物の干し方。今回は、洗濯用洗剤の人気メーカー『ライオン株式会社』で20年にわたり製品開発・調査に携わっている、お洗濯マイスター・大貫 和泉さんに、マンションのベランダ干しに関するお悩み解決法について伺いました。
長いものが干しづらい場合は、ハンガーや角ハンガーを活用
最近の分譲マンションのベランダは、手すりと同じくらいの高さに設置された物干しが増えています。安全性の確保やプライバシーの保護、外観保持など、物干しの位置が低い理由には納得できますが、ワンピースなどの丈の長い衣類やシーツなどを干しづらいのが悩みのタネ。ベランダは緊急時の避難経路にもなっているため、長いもの専用に物干し台を買い足すのも気が引けます。
そこで大貫さんがすすめるのが、ハンガー、角ハンガーを使った干し方です。
・複数のハンガーを使う
ワンピースなどの丈の長い衣料は、複数のハンガーを等間隔に固定し、“一反木綿”のように広げて干します。
・角ハンガーを使う
バスタオルは、左右のピンチに交互に洗濯物を止め、蛇腹状に干します。
シーツなどは、横長に蛇腹状に干します。
洗濯物を早く乾燥させたい場合は、角ハンガーの外側に長い衣類、内側に向かって短い衣類を干す、「アーチ干し」が有効です。
手すり壁のせいで下のほうが乾きにくい場合は、アイテム別に干し方を工夫
さらに、「手すり壁のせいで日が当たりにくかったり、風通しが悪くなったりして、洗濯物の下のほうの乾きが遅くなる場合には、ハンガーとハンガーの間をこぶし一つ分開けて、空間を作ることが大切」と大貫さん。アイテム別の乾きやすい干し方も教えてくれました。
・ワイシャツ、ポロシャツ
襟を立て、前ボタンは全部止めるのではなく、風で飛ばされない程度に止めます。
・パンツやスカートなど
筒干しにして風の通り道を作ります。紫外線による色あせが気になる場合は裏返して干します。
・フード付きパーカー
フードや袖は垂らさないようにして干します。ファスナー付きの場合は、風で飛ばされない程度に開けておきましょう。
・シーツやバスタオル
複数のハンガーや角ハンガーを竿に掛け、その上に広げて干します。竿に直接干す場合は、裾をずらしておきます。
ベランダが狭くて洗濯物を干しづらいときは?
賃貸マンションやコーポなどでは、ベランダが狭かったり、室外機が邪魔になったりして、洗濯物を一度にたくさん干せないことがあります。また、狭いスペースに洗濯物を干すため、密集してしまって乾きにくいケースもあります。大貫さんがすすめる3つの対策を紹介します。
・「角ハンガー+蛇腹干し」を利用してスペースを有効に
「この場合も、角ハンガーを使った“蛇腹干し”がおすすめ」と大貫さん。「バスタオルを角ハンガーの両端に蛇腹干しに吊り下げ、真ん中の空いたスペースにほかの洗濯物、例えば靴下や下着などを干すようにすると、狭いベランダを有効に活用できます」と続けます。
・早く乾かす“ひと手間”を
「タオルを洗濯するときに柔軟剤を使用します。例えばフェイスタオルの場合、脱水直後の水分量が、柔軟剤を使用しないときに比べて5%減、、バスタオルなら8%減という実験結果があります(※)」と大貫さん。さらにバスタオルは、干す前に数回振りさばくことでパイルが立ち上がり、乾きが早くなるそうです。
※タオルの種類や選択条件によって脱水直後の相対水分量は変化します。
・部屋干しを併用する
ベランダ(室外)にバスタオルなどのタオル類、綿の肌着やシャツといった乾きにくいものを干し、室内に化学繊維の下着やTシャツなど乾きやすい衣類を干します。
「ただし、冬の寒い日で暖房を使用している場合は、ベランダよりも室内のほうが乾きやすいので、この逆のパターンで洗濯物を干すようにしましょう」。
ベランダに洗濯物を干せない高層マンションでは部屋干し臭対策を!
高層マンションは、外観保持や洗濯物の飛来・落下による事故防止の観点から、管理規約により洗濯物をベランダに干すことが禁止されているところが多くあります。その場合、衣類乾燥機や浴室乾燥機を活用している家庭がほとんどですが、乾燥機は洗濯物をまとめて乾かすため、ものによっては部分的に乾いていなかったり、半乾きになったりすることもあるようです。
大貫さんは「半乾きになっても部屋干し臭のような嫌なニオイが発生しないように、対策をとりましょう」と呼びかけます。
・洗濯前に余計な菌を増殖させない
汗や皮脂が付着した衣類を、湿度の高い洗濯槽の中にためておくのはNG。雑菌が増えてしまう可能性があります。通気性のよい洗濯カゴなどに入れておきましょう。
ニオイの素となる雑菌やカビは、洗濯槽のなかでも増えてしまいます。洗濯後にフタを開けておくようにするだけでも、菌やカビの発生の予防につながります。定期的に専用クリーナーで汚れを落とすこともお忘れなく。
・汚れをしっかり落とす
襟周りなどの気になる汚れは液体洗剤を直塗りして洗濯機へ。下着や靴下は裏返して、肌に直接触れる内側を表にすると汚れが落ちます。ただし子どもの靴下のように泥や黒ずみなどの目立つ汚れが表側にある場合は、そのまま洗いましょう。
洗濯機の容量Maxまで洗濯物を詰め込まないようにします。理想は容量の7~8割程度。詰め込み過ぎると、洗濯槽内で衣類が撹拌されにくく、汚れ落ちが悪くなります。
まとめ
制約の多いマンションのベランダですが、ちょっとした工夫やひと手間で、効率よく洗濯物を乾かすことができそうです。明日から早速、チャレンジしてみてください。
【取材先】
ライオン株式会社
お洗濯マイスター/大貫 和泉(おおぬき いずみ)
消費生活アドバイザー、繊維製品品質管理し、健康予防管理専門士
洗濯用洗剤などの製品開発・調査に約20年従事。2児の母としての経験と研究活動を融合し、主婦・母親・女性目線で日々のお洗濯に役立つ情報発信を行っている。