家の周りや庭、家庭菜園の雑草を「手に負えない」「キリがない」「体力が続かない」…と、諦めている人も多いのではないでしょうか。そんな時は、除草剤の活用を考えてみては? 今回は、住友化学園芸 普及チームリーダーの牛迫 正秀さんへの取材をもとに、雑草の種類や放置したときの弊害、除草剤使用の基礎知識などを解説します。
身近な雑草、放置しておくとどんな弊害がある?
家の周りや庭に雑草が生えると、暮らす人にとってはさまざまなデメリットが生じます。
ガーデニングや家庭菜園への被害
庭でガーデニングや家庭菜園を楽しんでいる家庭では、雑草は病害虫の温床になることがあるので注意が必要です。家庭でよく見られる害虫の代表格は、「アブラムシ」、「コナジラミ」、「ハダニ」です。これらが雑草の中で繁殖し、せっかく育てた花や野菜、果実などに被害を与えることがあります。
また、雑草は、周辺の土の中の肥料分を消費しながらぐんぐん成長するため、育てたい植物の生育を阻害する恐れもあるといえます。
花粉症の原因になる
雑草が花粉症の原因になることがあります。家の周りによく見られる雑草の「ブタクサ」は、花粉症の原因として知られています。
美観、防犯に良くない
雑草を放置することは、美観や防犯の観点からも好ましくありません。園芸植物と違って、雑草が生えていると見た目が不格好になることが多く、単純に景観を損なってしまいます。また、ススキなど背の高くなる雑草は、伸びすぎると外部からの視界をさえぎってしまうため、防犯上も良くありません。
近所迷惑になる
雑草を生え放題にしておくと、種を作り、隣の土地にまで広がってしまう可能性があります。隣家や田畑などに迷惑をかけたり、ご近所トラブルに発展したりするケースもあるので、気を付けたいものです。
除去する前に“敵”を知る。庭に生えやすい雑草の種類と性質
庭などに生えやすい雑草は、季節によってさまざまです。春はマメ科の「カラスノエンドウ」やアブラナ科の「ナズナ」、シソ科の「ホトケノザ」などの生育が旺盛です。夏はキク科の「オオアレチノギク」など、秋はイネ科の「エノコログサ」などが見られます。
これらの雑草が、どのように増えていくのかを知っておくと雑草対策に役立ちます。
雑草の繁殖のしくみは、大きく分けて2タイプあります。花が咲き、種ができ1年サイクルで繁殖する「一年生雑草」(エノコログサ、ナガミヒナゲシなど)と、地中に茎を伸ばす地下茎や地表や地中上部に茎を伸ばすほふく茎などで越年しながら繁殖する「多年生雑草」(スギナ、ドクダミ、チガヤなど)に分かれます。
特に「多年生雑草」は、見える部分を刈り取ったり、手で抜いたりしても、地下に茎や根が少しでも残っていると程なくして再生するため非常に厄介です。退治する場合には根まで枯らす除草剤が必要になります。
ちなみに造成地(更地)は、雨水がしみ込むことにより土壌が酸性に傾きやすく、酸性の土でも生育可能なスギナがはびこりやすいといわれています。花壇ではスギナのほかコニシキソウ、スベリヒユ、カタバミなど、芝生では同じくカタバミの他、メヒシバ、カヤツリグサなども、繁殖力が強い厄介な草として知られています。
“適剤適所”の除草剤を選んで、効果的な駆除を
除草剤のタイプ(剤型や種類)と効果
一般的に、除草剤には形状別に「粒タイプ」と「液タイプ」があります。
「粒タイプ」は、雑草が発生する前、または発生初期に土に散布するもので、溶けて土の表面に除草剤の処理層を形成することにより、長期間雑草の発生を抑えます。「液タイプ」は、土に落ちると効果を失うものが多く、伸びた雑草の茎葉に直接かけて吸収させ、速やかに雑草を枯らすことが可能です。また最近は、「液タイプ」でも、茎葉から吸収するだけでなく、土壌に残って長い期間効果を発揮する商品も出てきています。
ほかに、芝生の中の雑草退治用の除草剤や、畑の畝の間で使える除草剤も家庭用として販売されています。
除草剤散布方法
除草剤の効果をしっかり発揮させるために、「粒タイプ」と「液タイプ」、それぞれの散布のポイントを押さえておきましょう。
「粒タイプ」散布のポイント
「粒タイプ」は、土壌に散布した後、除草成分が速やかに溶けて、土中に広がることが大切です。雨上がりなど、土が水分を含んでいるタイミングが最適といえるでしょう。また、雑草の根が地中深く伸びてしまうと、除草成分を十分に吸収させることができないので、雑草の丈が比較的低く根も浅いうちの散布がおすすめです。
発芽前に効く除草剤もあり、春と秋の2回散布しておくと、一年を通して雑草の発生を抑えることができます。
いずれも、処理したい場所に、適切な散布量を均一にまくようにしましょう。
「液タイプ」散布のポイント
シャワー剤などの「液タイプ」は、雑草に直接かけて茎や葉から吸収させる除草剤です。葉の枚数が多いほど成分をよく吸収するので、ある程度成長した雑草(30~20cm以下が目安)に対して、より効果を発揮します。雑草の葉や茎に直接、まんべんなく散布するといいでしょう。
まとめ
手軽に除草したいなら、除草剤の使用を検討してみましょう。ただし、雑草は、大切にしている庭木や草花、野菜と同じ植物であり、自動的に雑草だけを枯らすことができる除草剤はありません。状況や目的に合ったタイプを選び、効果が十分に発揮できるよう、適切に使用することが大切です。
【取材協力】
住友化学園芸 普及チームリーダー 牛迫 正秀(うしざこ・まさひで)さん
YouTube 住友化学園芸チャンネルの「ガーデンドクターTV」にて、薬剤・肥料などの仕組みや使い方のコツをわかりやすく解説。「牛(ぎゅう)ちゃん」の愛称で親しまれている。