クモは見た目が不快で毒を持っているのではと、思われがちですが、実はほとんどのクモが無毒。特に、ここで紹介するアシダカグモは虫を食べてくれる益虫です。それでも不快に感じてしまう人のために、アシダカグモの性質や出没回避策、遭遇した場合の対処法などについて、アース製薬の研究部・有吉立さんにお話を伺いました。
アシダカグモってどんなクモ?
アシダカグモは、大きさ10~30mmで全体的に灰褐色。徘徊性(網を張らずに獲物を捕らえる)のクモの中では日本最大級といわれています。長い足を広げた状態で5cm以上、大きなものでは10cm以上になることも少なくないそうです。
世界的に見ると、生息地域は熱帯・亜熱帯・温帯。つまり温かい地域で活動する性質があります。
「日本では、福島県以南の本州・四国・九州地方が該当。この他の地域でも、まれに局地的に見かけることがあります」と有吉さん。
季節を問わず一年を通じて出没し、寿命は3年以上と長く、飼育下では9年半生存した記録もあるそうです。
室内に生息し、人の住む家の中でテリトリーを持つ傾向があり、部屋ごとに別々の個体が活動します。クロゴキブリやハエ類を捕食する益虫ですが、見た目が不快と感じる人が多く、あまり好まれる存在とはいえません。
夜行性のため、日中は物陰に潜んでおり、夜になると活動し、餌(ゴキブリなど)を探します。
アシダカグモの出没条件とは?
ここで、アシダカグモが出没しやすい条件について解説します。
立地・周辺環境について
アシダカグモの餌はゴキブリやハエ。つまり、ゴキブリがいるところにアシダカグモが現れやすいのです。
ゴキブリは住宅以外にビルの中の厨房や湯沸室に現れます。このことから、飲食店が多い地域や、飲食店が入っている集合住宅などではゴキブリが出没する可能性が高い=アシダカグモが出没する可能性が高いと考えられるそうです。
戸建てとマンション、どっちが遭遇しやすい?
「調査したことがないため一概には言えないものの、戸建ての方が比較的多く出没すると考えられます。なぜなら、アシダカグモが入りやすい場所が多いからです」と有吉さん。
アシダカグモの侵入経路として、キッチンやトイレの換気扇、屋根裏、通気口、外壁にできた隙間などが挙げられ、マンションよりも戸建ての方が入りやすいと考えられるとのこと。ただ、マンションでも低層階や、庭付きの1階など、戸建てと近い条件であれば侵入する可能性は大いにあるそうです。
室内への侵入防止策と遭遇したときの退治法
侵入防止策の一つとして、アシダカグモの餌となるゴキブリやハエ類などを駆除することがおすすめ。この場合、ゴキブリやハエ類を退治する殺虫剤などを使うといいでしょう。また、アシダカグモの侵入経路になりそうな場所に防虫ネットをかけることも侵入防止につながります。
実際にアシダカグモに遭遇した場合、殺すかどうかの判断は、見つけた人の感じ方次第です。有吉さんは「アシダカグモ自体は無毒で人に襲い掛かってこない益虫のため、殺さずに済ませたいところ。それでも駆除する場合は殺虫剤を使ったり、虫を寄せ付けない薬剤(きひ剤)を使うといいですね。駆除しない場合はほうきなどで外に誘導してあげるといいでしょう」と話します。
まとめ
アシダカグモはゴキブリやハエなどを食べてくれる益虫なので、見た目に抵抗がなければ、出没しても殺さずにいた方がおすすめではあります。
それでも不快だから無理…と言う場合には、アシダカグモの餌となるゴキブリやハエなどが出ない環境を作りましょう。結果的にクモを寄せ付けない家にすることができます。しっかりと防虫対策をして、暮らしやすい家づくりをしていけるといいですね。
【取材協力】
アース製薬 研究部 有吉立さん
害虫について研究し、商品開発に貢献。害虫の飼育員としての経験を活かし、2018年には「きらいになれない害虫図鑑」を出版。また、アース製薬ではクモ対策に効果的な商品として、屋内にいるクモをワンプッシュで速攻退治できる「おすだけクモアーススプレー屋内用」、スプレー式の「虫コロリアース」や「虫コロリアーススーパージェット」、殺虫成分不使用で凍らせて退治する「凍らすジェット冷凍殺虫」をラインナップしている。