家で過ごす時間が増えて、家族の仲が深まると同時に一人の時間が減ってしまい、ときには疲れてしまうことも…。そんな今、注目を集めつつあるのが、家の中の小さな空間「ヌック」。大きなスペースがなくても一人になれる空間を確保できるヌックについて紹介します。
ヌックって何?
あまり耳慣れない「ヌック」という言葉にはどんな意味があるのでしょうか?
ヌックとは、スコットランドの言葉で「居心地がよくこぢんまりととした場所に作られる小さな部屋」のこと。英語だと「部屋の隅や隅の小さな部屋、人目に付かないところ」という意味です。
日本でのヌックもスコットランドや英語で用いられるヌックと同じく、こぢんまりとした小さな部屋を意味します。日本のヌックは2畳から3畳ほどのスペースがとられるケースが多く、2人程度がゆったり座れる広さの空間を指すことが多いようです。
「静かな場所で本を読みたい」と感じているパパやママ、一人部屋にはまだ早い幼い子ども、家族と少し距離を取りたいけれど完全に離れたくはない思春期の子どもなど、性別や年齢を問わず楽しめる空間、それがヌックです。
在宅時間が増えた今、静かな場所で一人時間を
内閣府の調査によると、新型コロナウイルス感染症の影響でほぼテレワーク、50%以上がテレワークになったとする就業者は全体の21.5%にものぼり、在宅時間が大幅に増えていることがわかりました。
子どもたちも外出自粛などの影響で在宅する時間が増えています。これまで朝と夜の数時間程度しか顔を合わさなかった家族が、一日中一緒にいることになったという家庭も多いのではないでしょうか。
大切な家族との時間が増えるのは嬉しい反面、ときには一人の時間がほしくなることも。そんなときに活躍するのがヌックです。家族とほどよい距離感を保ちながら、狭くて落ち着く場所でおこもりタイムを楽しめます。家族の生活音が聞こえるけれど、すべては目に入らない空間は、疲れがちな心を癒やしてくれるでしょう。
ヌックにおすすめのスペース3選
ヌックは大きな面積の確保が難しい日本の住宅との親和性は抜群。ヌックの広さは2畳から3畳であることが多いですが、1畳程度のスペースであっても工夫次第で楽しむことができます。ヌックにおすすめのスペースをピックアップしました。
階段下
新築やリノベーションを検討している場合、ヌックにおすすめなのはリビングなどの広い空間で、家族みんなが集まる場所に面したスペースです。
現在のリビングの使い方を振り返ってみてください。実際に使っているスペースはごく一部だったりするものです。使っていない場所の面積を合計すると、1畳分ぐらいの広さを確保できる場合がほとんどではないでしょうか。
たとえば、リビング階段を採用している家の場合、階段下をヌックにすることでデッドスペースを活用でき、リビングにいながらヌックにこもって一人の時間を楽しむことができます。日中は子どもたちの秘密基地に、夜はパパママのリラックスタイムにと、一日中活躍しますね。
ヌックの中だけ畳を敷いて和の空間にしたり、趣味を前面に出したインテリアにしたりと、居室とはまったく異なる楽しみ方も可能です。
リビング階段以外の階段下にヌックを作る場合は空調に注意しましょう。冷暖房設備を設置できないと、夏と冬は特に居心地が悪い空間になってしまいます。ともすれば物置になってしまうリスクがあるので注意が必要です。通風や明るさに配慮し、壁で囲いすぎないようにしましょう。
押し入れやクローゼットなどの収納
新築やリノベ住宅でなくても、押し入れやクローゼットなどの収納を活用すればヌックはつくれます。特に居室に付属している収納であれば、冷暖房を気にする必要もありません。思い切って断捨離をして、収納スペースをヌック化できそうな場合には、建築士や工務店に相談してみてください。
こんなに素敵! ヌックの実例
続いて、実際に活用されているヌックの実例を紹介します。
ほどよく隔離された感じが心地いいヌック
こちらの事例はリビングの一角にしつらえられたヌックです。広すぎず狭すぎない空間は、1人あるいは2人で充実した時間が過ごせそう。使い方は無限大です。
小上がりで窓の風景を楽しんだり寝転んだり
床よりも一段高い場所にヌックを設ける事例も少なくありません。こちらのヌックはリビング脇に設けられた小上がりのヌック。2畳ほどの小さなスペースですが大人が寝転ぶことができる空間が確保されています。
少しの段差とマットレス、リビングにくつろぎを
ヌックにマットレスを敷いて、ヌックでの居心地を追求している事例もあります。マットレスを敷けば、何時間でもヌックでゆっくりできそうですね。
まとめ
ヌックはおうち時間が増えて、ちょっとだけ疲れてしまったときの緩衝地帯。ゆっくりとお茶を飲んだり本を読んだり、子どもと遊んだりと使い方は無限大です。
新築・リノベーション住宅でなくても、工夫次第で階段下や収納、空きスペースに導入できます。とはいえ、スペースの有効活用は考えるのはなかなか難しいもの。ちょっとしたリフォームであっても、ぜひ建築士に相談してみてください。おうち時間をさらに楽しむべく、ヌックを取り入れてみてはいかがですか?
【監修】
植松千明さん(建築家/一級建築士/植松千明建築事務所 代表/CASBEE評価員/福祉住環境コーディネーター2級)
http://chiakiuematsu.com/