首都圏のマンション市場が活況です。2021年上半期は前年の同期を大きく上回る1万3,277戸の新築マンションが分譲され、売れ行きも堅調です。今回は、2021年上半期の首都圏マンション市場の動向を解説します。
新築マンション2021年上半期供給は77.3%増の1万3,277戸 3年ぶりに増加
新築マンションの売れ行きが好調です。不動産経済研究所が発表した2021年上半期の「首都圏 新築分譲マンション市場動向によれば、首都圏新築マンションの供給戸数は、前年同期比77.3%増加の1万3,277戸。上半期の増加は2018年以来、実に3年ぶりです。
初月契約率(その月に分譲されたマンション販売戸数に対する契約戸数の割合)は、72.5%と好不調の目安とされる70%を2015年以来6年ぶりに上回りました。累積契約率は、85.4%で前年同期の76.1%と比べ大きく上昇しています。
供給エリアの内訳は、東京23区内が43.8%、東京都下が7.3%、神奈川県が26.9%、埼玉県が9.8%、千葉県が12.3%。前年同期の東京23区内のシェアは、51.3%なので7.5ポイントのシェアダウンとなっています。
1戸当たり平均価格は6,414万円で、1平方メートル当たりの単価は96.2万円。こちらは東京23区内の供給戸数の割合が下がったこともあり、9年ぶりの下落となっています。エリア別の平均価格は、東京23区内が8,041万円、東京都下が5,388万円、神奈川県が5,438万円、埼玉県が4,932万円、千葉県が4,535万円となっています。平均価格は、前年同期並みです。
初月契約率の高さが示すように、新築マンションの売れ行きは好調です。コロナ禍で自宅にいる時間が大きく増加し、日々の生活で住まいの重要性が高まりました。加えて、「グリーン住宅ポイント制度」の創設などの国の施策も住宅の取得を後押ししています。
コロナ禍を受けて住宅ローン控除も延長・拡充されました。消費税引き上げに合わせて住宅ローン控除の期間が当初の10年から13年に延長(11年目から13年目までの控除額は、年末住宅ローン残高×1%と税抜き住宅価格×2%÷3のどちらか少ない額)。当初、新築マンションは2020年11月末までに契約し、2021年12月末までに引き渡しを受ける必要がありましたが、コロナ禍の影響が考慮され2021年11月末までに契約し、2022年12月末までに引き渡しを受ければ良いことになりました(分譲住宅などの場合)。住宅ローン控除期間が長ければ、費用負担も抑えられます。また、合計所得金額1,000万円以下の人を対象に、住宅ローン控除の床面積要件が50平方メートル以上から40平方メートル以上に緩和されました(契約期限あり)。
2020年に首都圏の新築マンションを契約した人(世帯主)の平均年齢がここ数年低下しているという調査データもあり、こうした施策は若い世代の購入を促し、マンション市場にプラスになっていると思われます。
通勤利便性×生活利便性+値ごろ感のある沿線のマンション販売が好調
20代から30代のカップル・ファミリー層が支持しているのが、生活利便性と通勤利便性があってしかも価格面で手の届きやすさを兼ね備えた駅周辺のマンション。つくばエクスプレス線の柏の葉キャンパス駅やJR京葉線の南船橋駅・海浜幕張駅などを最寄り駅とするマンションなどが挙げられます。
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ここからは、2021年上半期特に注目を集めた物件を2つ振り返ります。
いずれも全戸完売済みのため、気になった人は今後の中古物件の売り出し状況をチェックしましょう。
パークシティ柏の葉キャンパス サウスマークタワー
2000年代以降、約273ヘクタールという大規模なスケールで開発がスタートした「柏の葉キャンパスシティ」。民間企業と柏市、千葉県、東京大学、千葉大学など産官学が連携した街づくりが行われています。柏の葉キャンパス駅から山手線へも乗り換えできる秋葉原駅へは約30分でアクセス可能で、都心のオフィス街への通勤利便性も高い街です。
「パークシティ柏の葉キャンパス サウスマークタワー」は、柏の葉キャンパス駅徒歩約4分の開放的な場所に地上29階建て総戸数364戸で分譲された大規模タワーレジデンス。2020年6月に第1期の販売がスタートし、1年余りで完売しました。駅前には大型複合商業施設「ららぽーと柏の葉」などの商業施設や医療施設、教育施設も充実し、暮らしやすい住環境が魅力です。
免震構造を採用するなど防災性に優れ、敷地面積は9,000平方メートル超。ゆったりとしたオープンスペースを確保し、開放感が得られるよう住宅地が広がる南側に建物を配置しています。植栽を施した潤いある住環境を醸成し、駐車場は平置き式と自走式を組み合わせた241台。大規模マンションならではの共用施設もあり、ラウンジ、キッズルーム、パーティールーム、屋上テラスなどが利用できます。また、各階にごみステーションを設置、食配ステーション(食品宅配用の専用コーナー)も用意されています。
「パークシティ柏の葉キャンパス サウスマークタワー」の住戸プランは、70平方メートル台の3LDKプランが中心。南・東・西の3方向に向いていて1LDK~3LDK、専有面積44.92~91.80平方メートルのプランが用意されました。
2020年6月にモデルルームを見学して感じたのは、リビング天井高約2.6メートルを確保した心地よい空間づくり。モデルルームの75Gタイプ(専有面積75.34平方メートル 3LDK+2WIC+N)は、リビング・キッチン・洋室1・洋室2の天井高が約2.6メートルもあり、非常に開放感がありました。
パークホームズLaLa南船橋ステーションプレミア
JR京葉線南船橋駅徒歩約3分の全戸南西向き全231戸「パークホームズLaLa南船橋ステーションプレミア」も好調物件の一つに挙げられます。2020年7月の第1期販売から1年足らずで完売。70平方メートル超の3LDKが4,000万円台で買える値ごろ感と「東京」駅まで直通約25分でアクセスできる通勤利便性もあり、20代の購入層が2割を超えています(2021年3月取材時点)。
南船橋駅周辺には、「IKEA Tokyo-Bay」「ららぽーとTOKYO-BAY」などの大型商業施設があり、買い物に便利なロケーション。レストランやカフェなどのくつろぎのスポットも豊富にあります。
「パークホームズLaLa南船橋ステーションプレミア」の建設地は、JR京葉線南船橋駅から徒歩約3分の南西道路に面した開放的な場所。全戸南西向きで日当たりが良く、開放的な建築計画が特色です。敷地の背面にあるJR京葉線の高架下には、動く歩道が設置されていて、雨の日も傘を使わずに駅との往来ができます。
建物は光・緑・海・風など自然をモチーフにした外観デザイン。敷地内には、「コミュニティガーデン」や「シーズンアヴェニュー」といった植栽を施した緑地スペースを設けています。また、南側も約4.4~4.8メートルセットバック。日照を確保し、住戸の開放感も享受できます。
70平方メートル台のゆとりある3LDK中心で、バルコニーの奥行きは最大約2メートルの広さ。コーナーサッシやウオールドアを活用した開放的かつフレキシブルな間取りでファミリー層が暮らしやすいように工夫されています。
2つの好調物件に共通するのは、首都圏のマンション価格上昇が顕著な中でも共働き世帯で十分手が届く価格帯であり、通勤利便性と生活利便性が高いこと。こうした物件の売れ行きは今後も堅調に推移するのではないでしょうか。
2021年4~6月の中古マンション成約件数は前年同期比55.4%上昇、価格は13.2%上昇
中古マンションの売れ行きも堅調です。東日本不動産流通機構発表の首都圏(1都3県)における2021年4~6月期の不動産流通市場の動向によれば、成約件数は前年同期がコロナ禍で減少した反動もあり、前年比プラス55.4%の大幅増となりました。
4期連続で前年同期を上回り、1990年5月の機構発足以降、4~6月期としては過去最高の成約件数となる9,987件。成約平方メートル単価は、59.04万円となっており前年比 12.5%上昇。成約価格は3,897万円で、前年比13.2%上昇。ともに大きく伸びています。
価格上昇の要因と考えられるのが、売りに出されるマンションの減少です。同調査によると、2021年4~6月期の中古マンションの新規登録件数は3万9,591件で前年同期比マイナス12.1%と大きく減少。成約件数が大きく伸びている中で、在庫物件数も大きく減っています。2021年6月末時点の在庫件数は、3万3,641件で1年前と比べマイナス26.2%と大きく減少しています。
エリア限定で物件を探す人にとって、選択肢の豊富な中古マンションは魅力的です。しかし、新規の売り出しマンションが減り、在庫件数が少ない今の状況では、条件に合ったマンションが見つけにくい状況が続いています。中古マンション探しは、新築マンション以上に難しくなっていると言えるでしょう。
今からマンション探しを始める人には、中古マンションと新築マンションを並行して検討することをおすすめします。中古マンション市場と新築マンション市場は、互いに影響します。市場価格も変わりやすくなっているので、同一エリアで比較検討すると良いでしょう。
住宅ローンの金利が低い今は、マンション購入に適したタイミングと言われています。不動産経済研究所の予想では、2021年下半期の首都圏新築マンションの供給戸数は1万9,000戸と前年同期(1万9,739戸)より少なくなるものの、年間供給は約3.2万戸と前年よりも17.5%の増加見込み。まずは、モデルルーム見学から始めてみてはいかがでしょうか。