パートで短時間勤務をする人も、年収や勤務先企業などの条件を満たせば社会保険に加入できます。社会保険に加入すると保険料負担が生じますが、将来厚生年金を受給できる、手厚い医療保障を受けられる、といったメリットもあります。
この記事では、社会保険料が発生する条件やその支払額など、パートタイマーの社会保険についてくわしく解説します。
社会保険の仕組み
社会保険とは、一般的に「健康保険」「年金」「介護保険」「労働保険」のことをいいます。パートタイマーが社会保険に加入できるかどうかは、本人の収入や企業の規模などの条件によります。
それでは、4つの社会保険制度についてくわしく解説します。
健康保険
健康保険とは、病気やケガ、それによる休業や死亡、さらには出産などに備えるための制度です。全国民を対象とした保険であり、誰でも必要な医療サービスを少ない費用負担で受けることができます。
おもな健康保険は以下の3種類です。
・会社員や公務員が加入する「健康保険」
・自営業者などのための「国民健康保険」
・75歳以上の人のための「後期高齢者医療制度」
すべての法人事業や、常時従業員を5人以上雇用している個人事務所は、健康保険に加入しなければなりません。健康保険料は従業員と所属企業で折半します。
また、条件に該当した被保険者の親族(扶養親族)は、保険料を支払うことなく、被保険者と同じように健康保険を利用可能です。
年金
年金には、「国民年金」と「厚生年金」の2種類があります。国民年金とは、日本に居住している20歳から60歳未満のすべての人が加入するとされる年金です。
厚生年金とは、会社員や公務員が加入できる年金です。厚生年金加入者は、国民年金から支給される「老齢基礎年金」と、厚生年金から支給される「老齢厚生年金」の両方を受給できます。そのため、国民年金だけの人よりも、将来受け取れる年金額が多くなります。
国民年金の保険料は全額自己負担です。それに対して、厚生年金では、保険料の半分が所属企業側の負担のため、「保険料の負担は半分で、将来受け取れる年金額は多くなる」というメリットもあります。
介護保険
介護保険とは、介護が必要になった人を社会全体で支える仕組みです。
40歳以上になると介護保険の対象となり、健康保険料とともに介護保険料が徴収されます。
65歳以上の人は「第1号被保険者」、40歳から64歳までの人は「第2号被保険者」と定められており、それぞれ介護保険料の決まり方や納付方法が異なります。
また、第2号被保険者のなかでも、国民健康保険に加入しているのか、健康保険(協会けんぽ)や組合管掌健康保険なのかによって計算方法は異なりますが、介護保険料率は一律で1.80%となっています。
労働保険
労働保険とは、労災保険と雇用保険を総称した言葉です。労災保険は事業者側が全額負担ですが、雇用保険は雇用者事業者の両者が負担します。
労災保険はパートやアルバイト等を問わず、賃金を支払われている労働者すべてに適用されます。雇用保険は、パートなどの短時間労働者であっても、以下の条件を満たしたときに適用されます。
・1週間の所定労働時間が20時間以上であること、
・31日以上引き続き雇用されることが見込まれること
パートタイマーの社会保険料の加入条件とは
パートタイマーが社会保険に加入するためには、いくつかの条件があります。社会保険に加入すると社会保険料の支払いが発生するため、加入条件についてあらかじめ理解しておきましょう。
社会保険に加入できる条件とは
パートタイマーの場合、以下の条件を満たしたときに社会保険に加入できます。
1. 従業員数が常時501人以上
2. 週の所定労働時間が20時間以上
3. 賃金月額が約8.8万円以上(年収106万円以上)
4. 継続して1年を超える雇用の見込みあり
5. 学生でないこと(※夜間や定時制など、学生でも加入できる場合もある)
2022年10月からは、1の従業員数の部分が「従業員数101人~500人の企業」が追加され「従業員数101人以上の企業」に、勤務期間が「2ヶ月以上」に緩和されます。また、2024年10月からは、さらに従業員数が「常時51人以上の従業員」まで対象となる企業が広がる予定です。
パートでも年収130万円以上になると扶養から外れる
パートタイムで年収130万円を超えた場合は、配偶者の扶養から外れ、自分で社会保険に加入することになります。
年収が106万円を超えた場合は、いくつかの条件を満たした場合のみ社会保険に加入しますが、年収が130万円を超えたときはすべての人が社会保険に加入します。
パートタイムの人が社会保険に加入すると、今まで支払う必要がなかった社会保険料の負担が発生するため、手取り額が減ることがあります。年収130万円を超えた場合で、手取り額も増やしたい場合は、年収160~170万円ほどを目安にして働くとよいでしょう。
パートで働く人の社会保険料はいくらか
パートで働く人が社会保険に加入した場合、支払う社会保険料額はどれくらいになるのでしょうか。健康保険料、厚生年金、それぞれの料金について解説します。
健康保険(社会保険)
健康保険料は都道府県や支払う年月によって違うため、例として、東京の2021年3月分以降の場合で解説します。
健康保険料は月々の標準月額によって変わります。たとえば、月収12万6,000円の人で、介護保険第2号被保険者に該当する(40歳以上65歳未満)場合の健康保険料は以下のとおりです。
社会保険料は会社と従業員で折半して支払うため、従業員が負担する社会保険料は7,333円です。
厚生年金
厚生年金保険料は、標準月額報酬や標準賞与額に保険料率を掛けて計算をします。保険料率は、2017年9月分からは「18.3%」で固定されており、具体的な計算式は以下のとおりです。
・毎月の保険料額「標準報酬月額×保険料率」
・賞与の保険料率「標準賞与額×保険料率」
例として、月収12万6,000円の人の月々の厚生年金保険料は以下の表のようになっています。
こちらも、健康保険料と同じように会社と従業員で折半して支払うため、従業員負担分は11,529円となります。
パートで働く人が社会保険料を仕払うメリット
社会保険に加入すると、社会保険料を支払わなければなりませんが、メリットもあります。
まず、健康保険の被保険者となると、ケガをしたときの傷病手当や、妊娠時の出産手当金など、医療保障が充実します。また、厚生年金に加入できるため、将来もらえる年金額が増えます。
近年は老後2,000万円問題が注目されているように、老後に不安を抱える人も多くいるでしょう。社会保険に加入して厚生年金の被保険者となると、将来の年金額が多くなり、老後の備えとなります。
まとめ
パートで働く人は、年収130万円を超えると扶養から外れ、社会保険に加入しなければなりません。また、従業員が501名以上の会社など、一定の条件を満たす場合は、年収106万円が社会保険加入ラインとなります。
給与が増えれば増えるほど社会保険料も上がりますが、将来の年金が増え、充実した医療保障を受けられるなどのメリットもあります。
パート勤めの人は、年収を増やして社会保険に加入するかどうかをしっかりと検討するようにしましょう。