蚊が出没しやすいスポットとは? 刺されやすいのはこんな人

刺された時のかゆみや、うっとうしい羽音でおなじみの蚊。身近で小さな蚊ですが、実は、マラリアやデング熱などの感染症を媒介し、世界中で非常に多くの人を死に至らしめている生物というから驚きです。そこで今回は、蚊が出没しやすい条件やその改善法、刺されないための秘訣について、アース製薬研究部の有吉立さんへの取材をもとに解説します。

蚊の出没スポット

蚊が出没しやすい条件を考えるには、蚊の種類とその習性を押さえておく必要があります。日本で人を刺す蚊としてポピュラーなのはアカイエカとヒトスジシマカです。この2種は、吸血活動が活発な時間や生息場所が異なっています。

吸血源を求めて家の中へ侵入するアカイエカ

就寝時に、プーンという羽音とともに出てくるのは、大抵の場合が夜行活動性のアカイエカです。名前に「イエカ」とある通り、家の中にいることが多い蚊です。行動は探索型といわれ、吸血源となる動物を探して移動します。人の後についてくることもあり、知らない間に、一緒にエレベーターに乗り込んだり、車の中に連れて入ったりするので注意が必要です。

人にくっついて家の中に侵入するアカイエカ

やぶや草むらで待ち伏せするヒトスジシマカ

白黒の縞模様が特徴的なヒトスジシマカは昼間行動性で、吸血が特に活発になるのが朝と夕方の時間帯。藪や草むらに潜み、吸血源がやってくるのを待ち構える習性があるため、やぶ蚊の代表種ともいわれています。このヒトスジシマカに遭遇するのは主に屋外ですが、建物の2、3階に移動する能力があり、室内で見かけるケースは少なくありません。

身近な草むらなどに潜むヒトスジシマカ

冬場も活動⁉ オフィス街や地下鉄にも出没するチカイエカ

この2種より数は少ないのですが、アカイエカと見た目がそっくりなチカイエカもいます。冬場に休眠しないので、冬に見かけたら、チカイエカの可能性は高いといえるでしょう。都市化が進んだところでよく見かける種類で、オフィスや地下鉄にも出没します。

このように、蚊の種類によって、出没しやすい時間帯や場所に傾向はあるものの、明確な住み分けがあるわけではありません。日本では、どこにどの蚊がいても不思議ではありません。
また、蚊は、血を吸うのは産卵するメスだけで、普段は花の蜜などを吸って生活しています。自然豊かな田舎を好むように思われがちですが、今や都会にも植物はたくさんあり、出没しやすい条件は揃っているといえます。蚊は、常に身近に存在していると考えてよさそうです。

高層マンション、蚊がやって来るのは何階まで? それ以上なら大丈夫?

マンション高層階も油断は禁物! エレベーターに“乗り込む”可能性が!

蚊の種類にもよりますが、ビルやマンションの3階くらいが上ってくる高さの限界といわれています。ただし、海外では地上1,000mで大群を見かけたという情報があったり、エレベーターに乗る人にくっついているケースもあったりするので、4階以上に蚊はいないとは言い切れません。一般的に考えて、上層階ほど、蚊の出没が少ないとはいえます。

戸建住宅&マンション1階の庭、蚊が発生しやすい環境と改善策

蚊は、水のあるところに卵を産み付け、水の中で幼虫、さなぎへと成長します。

アカイエカは、どぶや防火用水、下水を好みます。ヒトスジシマカは、わずかなたまり水でも生育できる蚊で、空き缶、空き瓶、竹の切り株、墓地の花立などでも羽化します。チカイエカは、ビルの地下水槽や浄化槽、地下鉄の坑道などで、一年を通して繁殖しています。

蚊の発生を防ぐには、家の周りにある水のたまる場所をなくすことが大切です。戸建住宅やマンション1階の庭では、不要な空き缶や、放置しているバケツなどを片付け、溝などはこまめにそうじをしましょう。見落としがちなのが、植木鉢の受け皿です。

ヒトスジシマカは、ほんの少しの水でも繁殖できるので、ボウフラが生息している可能性があります。卵から成虫になるのに10日ほどかかるので、1週間に1度、受け皿の水を捨てることで、予防できるでしょう。戸建住宅やマンションの1階の庭だけでなく、ベランダで植物を育てている場合も、時々チェックするのがおすすめです。

水のたまった鉢皿やジョーロが蚊の繁殖場所になる可能性があるので、こまめに水を捨てること

蚊に刺されないための秘けつ~こんな人が刺されやすい?~

蚊は、動物が呼吸によって出す二酸化炭素や汗、皮膚のにおい、体温などを察知して吸血源を探します。顔の近くによく寄ってくるのはそのためです。

少し意外ですが、足元は汗腺が多く、狙われやすいともいわれています。体温が高い妊婦、赤ちゃん、子どもや、汗っかきの人などもターゲットになりやすいといえるでしょう。「お酒を飲んだ人がよく刺される」などと聞いたことがあるかもしれませんが、お酒を飲んだ後は呼吸があらくなっていたり、体温が高くなっていたりするためと考えられます。

黒色を好む性質もあります。具体的には、明るい色と、暗い色の対比を感知し、暗い色の方に寄っていきます。例えば、白と黒のボーダー柄、白いシャツにネイビーのボトムといった色の対比がはっきりしているコーディネイトは、暗い色の部分がターゲットになりがちです。特に昼間は、白っぽい色で全身を統一するのがおすすめです。

肌の露出が増える夏や外出時は、虫よけ剤を活用しましょう。蚊に効くのは、「医薬品」や「防除用医薬部外品」の表示があり、効能や適用害虫に「蚊」と記載された商品です。一般的な虫よけ剤の有効成分「ディート」は、蚊が人を感知できなくなる忌避剤で、蚊を殺すわけではありません。塗っていない部分は刺されてしまうので、指先や指と指の間まで、まんべんなく塗り広げることが大切です。

体温が高めの子どもは蚊に刺されやすい。外出時は虫よけスプレーなどを活用して!

まとめ

蚊は、自然豊かな場所だけでなく、都会、住宅街などどこででも発生しています。特に気温が上がる夏は、活動や繁殖が活発化するので注意が必要です。戸建住宅はもちろん、マンションでは1階の庭や低層階のベランダなどでも、発生源がないか確認し、早めに対策しておきましょう。

【取材協力】
アース製薬研究所生物研究課
課長 有吉立さん
東京の美術専門学校を卒業後、家具店店員、陶芸教室講師などを経て入社し、害虫の飼育員になったという、珍しい経歴の持ち主。
有吉さんが働く研究所があるのは、兵庫県赤穂市。瀬戸内海に面した風光明媚な場所に建つ近代的な施設で、ゴキブリだけでも18種100万匹を飼育。ほかにも、蚊とハエで10万匹、ダニ1億匹など、約100種の害虫を飼育し、研究しています。
著書に幻冬舎刊「きらいになれない害虫図鑑」があります。

 

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