花のつぼみや花びらを食べて、せっかく育てた花を台無しにしてしまうナメクジ。寄生虫を媒介することもあるので、なんとか発生を防ぎたいですよね。そもそもナメクジは、どのように発生するのでしょうか。また、効果的に退治するにはどうしたらいいのか、アース製薬研究所の有吉立さんへの取材を基に解説します。
ナメクジがもたらす被害と注意点について
ナメクジは、おろし金のように多数の歯が並ぶ舌を使って、葉っぱやコケなどの植物を削り取るようにして食べます。庭の新芽やつぼみ、花びらなどを食い荒らされると、結構ショックですよね。大切に育てた野菜が食べられなくなってしまうこともあります。
被害は植物だけとは限りません。ナメクジは、自然界では虫の死骸や動物のふんなどを食べて、タンパク質も摂取していると考えられています。ペットの食べ残しや排せつ物に群がっていることもあり、大変不潔です。
見た目が気持ち悪いという声もあります。粘液を出しながら移動するため、通った後に白っぽく光る筋が残るのが苦手…と感じている人も多いでしょう。しかもこの粘液は、ムチンという水に溶けにくいタンパク質を含むため、流水程度では落ちにくく、そうじが大変です。ちなみに、ナメクジに刺激を与えると、この粘液を大量に出して、逃げる性質もあります。
また、あまり知られていませんが、ナメクジには、人が感染すると危険な寄生虫「広東住血線虫」の幼虫が潜んでいる可能性があります。病原菌を媒介するともいわれているので、小さい子どもなどが不用意に触らないよう注意が必要です。ヌルヌルした粘液が手などに付いてしまった場合は、ハンドソープなどを使ってしっかり洗いましょう。
ナメクジが出没する可能性が高い場所と出没の原因
春先に卵から生まれたナメクジは、梅雨時期には6センチメートルほどにまで成長し、人の目に付くようになります。活動が活発になるため、被害が目立ち始めるのはこの頃です。
ナメクジは、昼間は隠れていて、夜になると活動を始めます。隠れる場所は、植木鉢の下や石の下、排水溝、枯れ葉の中など多様です。湿度の高い所を好むので、庭のジメジメした場所にいると思っていいでしょう。
特に、植木鉢は、餌となる植物があり、湿っていることが多いので、ナメクジにとっては居心地満点といえそうです。植木鉢の裏や、葉っぱの陰など、隠れる場所にも困りません。戸建て住宅に限らず、マンションのベランダでガーデニングや家庭菜園を楽しんでいる場合も発生する可能性があります。壁を平気で登り、小さな隙間を通り抜けられるので、2階以上の階のベランダや、室内の観葉植物も油断は禁物です。
また、意外に知られていないのが、ナメクジの活動可能な温度。活動が活発なのは気温が20度前後ですが、0度以上なら動くことができるそうですから、年間を通して見掛ける可能性があると考えていいでしょう。
ナメクジの発生を防ぐには?
ナメクジは、カタツムリと同じ巻き貝の一種。殻は退化してしまって見えません。
仲間であるカタツムリ同様、乾燥が大の苦手なので、発生を防ぐには、ジメジメした場所をなくすことや、隠れ場所になりそうな物を片づけることがポイントとなります。庭の落ち葉を掃除したり、庭木のせん定をしたりして、すっきりさせておきましょう。植木鉢やプランターは、直置きしないで、台やレンガ、ブロックなどを使って高さを出すことで、風通しを良くしておくのもお薦めです。
薬剤を使うと、簡単に予防が可能です。侵入されたくない場所に、ナメクジを寄せ付けない薬剤を施しておくだけです。効果を1.5ヶ月キープできるタイプや、雨に強いものもあります。食品原料由来の薬剤を選べば、子どもやペットが遊ぶ庭や、家庭菜園にも安心して散布できるでしょう。
ナメクジ発見! 効果的な退治法は?
ナメクジが出没した時に、すぐに撃退したいなら、速効タイプの専用駆除スプレーがおすすめです。退治したい個体を直撃して、もん絶することなく動きをストップさせれば、ナメクジがはった跡が残りにくくなります。キッチンや家庭菜園には有効成分が食品原料生まれの駆除スプレーを常備しておくといいでしょう。
ナメクジだけでなく、ほかの不快害虫にも使える駆除剤もあります。かけるだけで、隠れた害虫を速攻退治できるシャワータイプ、まいて駆除し、侵入もブロックするパウダータイプ、害虫を誘引し、食べさせて駆除する顆粒タイプ…とさまざまな商品があるので、用途に合わせて選びましょう。
また、困ってはいるけど、殺虫成分をばらまきたくない…という人には、容器に入った毒えさタイプもあります。容器ごと家の周りに置くだけで、害虫をおびき寄せ、食べさせて駆除します。雨に強く、ペットや子どもが薬剤に直接触れる心配も少なくなるでしょう。
借入可能額や毎月の返済額をチェック!
まとめ
ナメクジを不快に思うかどうかは、個人差があるかもしれません。しかし、寄生虫や病原菌を媒介することもあるので、正しい知識を基に、注意を払いながら暮らすことは大切です。家庭で殺虫剤をまくことに抵抗がある人は、天然由来の駆除剤をチェックしてみましょう。
【取材協力】
アース製薬研究所生物研究課
課長 有吉立さん
東京の美術専門学校を卒業後、家具店店員、陶芸教室講師などを経て入社し、害虫の飼育員になったという、めずらしい経歴の持ち主。
有吉さんが働く研究所があるのは、兵庫県赤穂市。瀬戸内海に面した風光明媚な場所に建つ近代的な施設で、ゴキブリだけでも18種100万匹を飼育。ほかにも、蚊とハエで10万匹、ダニ1億匹など、約100種の害虫を飼育し、研究しています。
著書に幻冬舎刊『きらいになれない害虫図鑑」があります。