コロナ禍の暮らしや住まい、食生活の変化から見えてきたもの|ARUHI×クックパッド鼎談

新型コロナウイルスの感染拡大により、外出自粛やそれにともなうおうち時間の増加など、私たちのライフスタイルは大きく変化しています。それを受け、ARUHIとクックパッドが共同でアンケート調査を実施。そのリサーチ結果を『料理と暮らし白書2021』としてまとめました。
リリースを記念して、「クックパッドニュース」「たのしいキッチンmag by cookpad」「ARUHIマガジン」の編集長による鼎談が実現。コロナ禍を経て、料理や暮らし、住まいについて生じた変化、そこから見えてきたものについて語り合いました。

>『料理と暮らし白書2021』の詳細・調査結果はこちら

コロナ禍で「食費」「水道・光熱費」の支出が増加。その理由とは?

鼎談はクックパッド本社で行われました。左から「クックパッドニュース」編集長 福井千尋さん、「たのしいキッチンmag by cookpad」編集長 渡部一紀さん、「ARUHIマガジン」編集長 風見悟

福井さん(以下、福井):今回の調査では、71.2%の人が「自宅で過ごす時間が増えた」ことが明らかになりました。そうした状況下、新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年3月以前と比べて最も増えた支出は何かというと「食費」(※)で、45.3%の人が「支出が増えた」と回答しています。

※編集部注:米代、外食費を含む「食費」

渡部さん(以下、渡部):外食は減ってるはずなのに食費が増えたのは、食材の購入費が増えたということでしょうか?

風見:外食は減っても、それに匹敵するような食事を家でとりたいと考えている人が多いのではないでしょうか。先日、2020年度のふるさと納税の納税額が過去最高を記録したと総務省が発表していましたし、巣ごもり需要でお取り寄せが増えたことも影響しているのかもしれませんね。

渡部:食材の購入って生産者支援の意味合いもありますよね。飲食店が営業自粛すると、卸す予定だった食材の供給先がなくなってしまいます。そうした食材が直販サイトやスーパーに並び、「家でちょっといい食材を楽しむ」流れが生まれたと思います。

福井:それは感じます。外出や外食が減った代わりに、ちょっといいビールやスイーツ、お肉といった食材を試した人は多いと思います。

風見:あとは私の実体験でいくと、食料品をストックするための支出もありますね。

福井:外出リスクを軽減するためにまとめ買いは有効である一方、「買い込んでみたものの食材を使い切れない」という人も多いようで、クックパッドニュースでは食材を使い切るための大量消費レシピや生鮮食品の保存方法、作り置きなどのテーマの記事がよく読まれる傾向にありました。

渡部:都心部ではデリバリーの消費が増えていますよね。外食より頻度が高く、食費の増加に繋がっているのかもしれません。

福井:「会社の飲み会が減ったからお金が節約できた」という声もあるのですが、飲み代は「食費」より「遊興費」に分類しているのかもしれませんね。

風見:食費に次いで支出が増えたという声が多い「水道・光熱費」についてですが、ARUHIマガジンでは光熱費に関する記事の閲覧数がとても伸びています。例えば「冷房を1日つけっぱなしにしたら、電気代はいくら?」「冷房より除湿の電気代が高いのは本当?」といった内容の記事がよく読まれていますね。巣ごもり生活による支出の増加を気にしている人は、「家の中で食費や光熱費をいかに抑えるか」という観点で行動していると感じました。

福井:支出が増えたことで「どう節約するか」という発想につながるのですね。例えば、家で過ごす時間が増えて料理頻度が上がれば、水道・光熱費はそのぶんだけかかります。また、コロナ禍の生活で「お風呂タイムの大切さに気づいた」という声がとても多く、リフレッシュのための消費支出も増えている印象です。

在宅勤務の増加にともない、リビングで仕事を続けることがストレスに?

福井:家で過ごす時間が増え、79.6%の人が住まい環境の改善を希望しています。具体的に改善したい空間を聞くと、長い時間を過ごす「リビング」が1位でした。

出典:『料理と暮らし白書2021』(P.22より)

風見:リビングを改善したいという人のコメントを見ていると「家族と過ごす中心の場なので心地良い空間にしたい」という意見と、「仕事場としてリビングを使っている現状を改善したい」という声に二分されました。本来は家族とのだんらんスペースであるリビングで仕事をすることにストレスを感じているようで、「一人の空間がほしいから間取りを改善したい」というニーズもありました。
私自身も間取りを見直したいと感じています。戸建てに暮らしているのですが、夫婦ともに在宅勤務が多いため、私は書斎、妻はリビングで仕事をしている状態。子ども部屋は2つありますが、妻のワークスペースも作りたいですし、もっと部屋数があればいいのにと思います。

福井:同感です。私の家はリフォーム済みの中古マンションで、リビングの傍らに横並びのワークスペースがあります。昨年は夫婦とも在宅勤務だったため、並んで仕事をしていましたが、「集中できない」と夫に言われてしまいました。そのため、在宅勤務時は子どもの遊び場でおもちゃに囲まれながら仕事をしています(笑)。

渡部:そうだったんですね(笑)。うちは中古マンションですが、フルリノベーションしたので「理想を実現した住まい」なんです。それでもコロナ禍以降、ワークスペースの課題は感じました。1LDKの間取りで個室はベッドルームだけなので、仕事をするのはリビングの一角に設けた横並びのカウンタースペース。2人とも在宅勤務の日にWeb会議が重なったときは、よくベッドの上からミーティングに参加していました。同じ悩みを抱える人は多いようで、浴室や玄関からミーティングに参加していたメンバーもいます(笑)。

福井:リビングくらいしか何かできる場所がないものの、突然部屋を増やすことはできないので、工夫が必要ですよね。そして、改善したい空間の2位は「キッチン」でした。

渡部:日本の平均的なマンションのキッチンは、1人で料理をすることを前提としたサイズなんです。コンロとシンクの間の調理スペースと通路幅の広さが重要になりますが、調理スペースが平均50~60cm、通路幅は80cm程度が一般的です。2人で並んでキッチンに立つことも、料理をしている人の後ろを通ることも難しい広さのため、そこを改善すると複数人で同時に料理がしやすくなるんですよね。また、オープンキッチンにしてダイニング側からもキッチンにアプローチできるようにすると、対面で一緒に料理できるようになります。

福井:なるほど。調理スペースや通路幅のサイズについて、特に意識したことがありませんでした。

「コロナ禍になる前は、友人や会社の同僚と一緒にキッチンで料理をすることが多かった」と話す渡部さん

渡部:調理スペースと通路幅を広めにとっている分譲マンションは多くないので、リフォームで改善する人もいますよ。私自身、自宅のリノベーションで特にこだわったのがキッチンです。通常、私の家くらいの面積であればキッチンの横幅は210cm程度です。240cmあれば大きなほうですが、うちでは横幅300cmのキッチンを導入しました。コンロとシンクの間の作業スペースは120cmと、通常の倍ほどあります。友人や会社の同僚と一緒に料理をするシーンも想定したサイズなのですが、ちょっとやり過ぎました(笑)。

福井:かなり大きい! すごいですね。改善したい空間の3位は「洗面所・浴室・トイレ」でした。この結果はコロナ禍ならではだなと感じていて、改善理由として「帰宅したらすぐに手洗いがしたいから、玄関の近くに手洗いスペースを設けるリフォームがしたい」というご意見が出ていました。また、「浴室の使用頻度が上がると汚れるから、掃除がしやすいようにリフォームしたい」という声もとても多かったです。

風見:衛生管理は今、誰もが気を配っていますからね。

今、住まいや居住地域に求める条件とは?

渡部:住まいを選ぶ際、住宅に求める条件として「日当たりの良さ」や「間取り」、「キッチンの使いやすさ」を重視する人が多いなか、コロナ禍を経て「防音性・遮音性」を求める人が大幅に増加していますね。

出典:『料理と暮らし白書2021』(P.25より)

風見:周りの声を気にしているんでしょうね。

福井:家の中でWeb会議をする声や、車の音など外の環境音が気になるという声が多く、「Web会議中に近所で遊んでいる子どもたちの声が入ってしまう」というコメントもありました。

風見:居住地域に求める条件としては、「日常の買い物の利便性」がトップでしたね。先ほどの食費が増えた話と紐づくのですが、「毎日必ずやることだから」という点を重視していると考えられます。また、「治安の良さ」も多くの人が条件として挙げていますが、住むエリアの滞在時間が長くなったことから、より安心感のある住まいを求めるようになっているようです。

福井:年代別の集計を見ても、治安の良さは各世代とも関心が高いですね。また、「公共施設・医療機関の充実度」を多くの人が条件として挙げていて、老後を意識して重視しているというコメントも目立ちました。

「職場への通いやすさ重視から、住みやすさを重視した街選びに移行しつつある」と予測する風見

風見:「日常の買い物の利便性」や「治安の良さ」、今後を見据えた「公共施設・医療機関の充実度」を重視しているということは、居住エリアがいかに「住みやすい街」なのかという基準を重視しているのだと思います。
また、一見相反するように感じますが、調査結果を見ると在宅勤務で都心に通う必要のなくなった人が自然豊かで気分転換のできる環境を求めている一方、都心へのアクセス環境も重視している傾向がうかがえます。「子どもが通学しやすい」「お出かけしやすい」といった理由からターミナル駅を利用しやすい街が選ばれるなど、仕事だけではなく、通学やお出かけの利便性が今後も重要になってくると思います。

出典:『料理と暮らし白書2021』(P.26より)

「時間の使い方」に関する価値観が変化

風見:コロナ禍を経て最も大きく変わった価値観については「時間の使い方」が最多でした。在宅勤務の実施にともない通勤時間がなくなったことがとても大きいと思いますが、「家で仕事ができる」と思うといつまでも仕事を続けてしまい、通勤していた頃よりも仕事時間が増えてしまうこともあるようです。
一方で、時間の使い方を意識するようになり、ダラダラと時間を消費しなくなったという人も多そうです。

「家で過ごす時間が増え、時間配分を考えながら行動できる人が増えた」と分析する福井さん

福井:私自身も、在宅勤務を始めた当初はいつまでも仕事を続けてしまいがちでしたが、コロナ禍を経て、時間の使い方に関するスキルが上がった気がします。
調査結果を見ても、現在の生活に満足しているか否かと、おうち時間を楽しむ工夫をしているか否かは相関関係にあることがわかります。現在の生活に満足している人の66.2%がおうち時間を楽しむ工夫をしているのに対して、現在の生活に満足していない人は57.2%がおうち時間を楽しむ工夫をしていないと回答していました。おうち時間を楽しむには、「時間の使い方」を考え、すきま時間を有効活用するスキルが自然と備わっていくはずです。時間を上手に使うことで、暮らしの質が上がり、毎日を楽しく過ごせるようになっていくのではないでしょうか。
自分の生活・暮らしを豊かにするために時間を使うこと。そのためのベースとなるのが「住まい」で、今後はより多目的な空間になっていきそうです。

コロナ禍により在宅勤務などの働き方が一般化し、多くの時間を家で過ごすようになりました。それにより、食費や水道・光熱費の増加など日常にさまざまな変化が生まれるとともに、住まいや居住地域に求める条件も変わりつつあります。『料理と暮らし白書2021』や今回の鼎談を参考に、ポストコロナ時代を見据えた暮らしについて考えてみてはいかがでしょうか。

>『クックパッドニュース』のインタビュー記事【新調したアイテム第1位は「調理家電」! みんなのコロナ禍の料理と暮らし実態調査】を読む

クックパッドニュース 編集長 福井千尋さん
料理初心者もベテラン層も楽しめる、サクッ!と読めて役に立つ料理Webマガジン『クックパッドニュース』編集長。「料理って、おもしろい。」をコンセプトに、編集部が発見した「思わず作りたくなるレシピ」や「やってみたくなる料理の裏ワザ」などの実用情報から料理のエンタメ情報まで、日々配信中。

たのしいキッチンmag by cookpad 編集長 渡部一紀さん
理想を叶えるキッチンと住宅、リノベーションのWebマガジン『たのしいキッチンmag by cookpad』編集長。「すべての家に、料理がたのしいキッチンを。」をコンセプトに、キッチンショールームレポートや最新のキッチン設備やグッズ情報まで、住宅のキッチンに関する情報を日々配信中。

ARUHIマガジン 編集長 風見悟
住宅ローン専門金融機関/国内最大手(※)のARUHIから生まれたWebメディア「ARUHIマガジン」編集長。新しい時代の街探し、ニューノーマルな家の買い方、住宅ローンの選び方など、知って得する情報や多彩な選択肢を日々配信中。
※累積融資実行件数及び金額(住宅ローン専門金融機関) 2021年6月 株式会社日本能率協会総合研究所調べ

 

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(最終更新日:2021.08.26)
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