年々気温が上昇傾向にある日本の夏は、エアコンの冷房機能が欠かせない季節になってきています。一方、複数の部屋でエアコンを稼動させることは、金銭的にも省エネの面からも、もったいないと感じる人も多いでしょう。
対処法としては、隣の部屋からエアコンの冷気を流すという方法があります。扇風機を使用して2部屋同時に涼しくすることで、エアコンが稼動していない部屋でも快適にする方法を解説します。
エアコンと扇風機の併用は効果的
「エアコンを使用するのだから、扇風機はいらないのではないか?」と考える人もいるでしょう。しかし、冷房使用時に扇風機を併用することには多くのメリットがあります。
まず、扇風機の風に当たることで体感温度が下がります。エアコンの冷房機能は優れているものの、直接体に風を当てることを目的としていません。エアコンはあくまでも部屋全体の温度を快適に保つための機器です。その点、扇風機はすぐに涼しさを感じられます。
エアコンの設定温度を上げられるのもメリットです。扇風機の併用により、体感温度はエアコン単体での使用よりも下がります。すると、エアコンの設定温度を少し上げたとしても、十分な冷却効果を感じられます。
扇風機の風で部屋の空気を循環させることもできます。エアコンの使用時は冷気が部屋の下に溜まり、暖気が上に溜まりやすくなります。扇風機を使用すれば、冷気をより広い範囲に送ることが可能です。
扇風機で体感温度が下がる
扇風機に当たると体感温度が下がるのは、2つ理由があります。一つは、人体の周りを取り囲む熱を風で吹き飛ばしているからです。
風が吹くと、体温によって暖かくなった空気が流され、新たに温度の低い空気が肌の周りにきます。このことによって、風に当たると涼しく感じられるのです。
もう一つは、気化熱による冷却効果です。これは、身体の表面にある水分が蒸発する際に、周囲の熱を奪うことによるものです。
たとえば、室内プールで泳いだあとに身体を拭かずに自然乾燥させようとすると、身体についた水が蒸発する際に多くの気化熱が生じるため、寒いと感じるほどに身体が冷えます。これと同じ理由で、扇風機の風を直接受けることで、かいた汗が蒸発して体感温度が下がります。
エアコンの設定温度を上げられ、省エネになる
環境省によればエアコンの設定温度は、1度上げるだけでも約13%の節電になるとされています。経済面でのメリットは大きく、省エネに貢献できることも事実です。
「扇風機の電気代がかかるのでは?」と疑問に思う人もいるかもしれません。しかし、エアコンと比較すると扇風機の電力消費量はかなり少ないため、扇風機の併用でエアコンの設定温度を上げるほうが節電になります。
部屋の空気を循環させる
「同じ部屋でも、場所によって温度が違う」という経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。これは、部屋の「温度ムラ」によるものです。空気には、冷たい空気は下に、暖かい空気は上に溜まりやすいという特徴があります。その結果、エアコンを稼動させていても、部屋の上部は暑く、下部は冷たいという状態になりやすいのです。
エアコンの性能は日進月歩で改良されており、温度ムラを軽減する仕様のものも増えてきています。ただ、エアコンは機器自体の大きさや形状から、部屋の上部に設置するケースがほとんどであり、設定温度と体感温度に違いを覚えることも少なくありません。「部屋の温度が設定温度まで下がっていない」と感じて、必要以上に冷やしすぎてしまうこともあります。
このような温度ムラを軽減するためには、前章でもふれたように部屋の中の空気を循環させることが重要です。扇風機は絶えず風を送り出すため、部屋の空気を効率よく循環させ、温度ムラの軽減に役立ちます。
2部屋の空気をいっぺんに循環させる
扇風機を使って2部屋の空気を循環させるためには「冷たい空気は部屋の下部に溜まる」という性質を利用します。扇風機はどこに置いてもいいというわけではありません。エアコンを背にするように扇風機を置くことで、下部に溜まった冷気が上部へと循環し、部屋全体が涼しくなります。
隣の部屋に冷気を届けるためには、まず、エアコンのある部屋と冷気を届けたい部屋の仕切りをすべて開放します。ドアであれば全開、襖であれば開けるだけでなく、外すとさらに高い冷却効果が期待できます。
次に、エアコンを背にして扇風機を置き、冷気を届けたい部屋に前面を向けます。この状態で扇風機を稼動させると、2部屋の空気が循環し、どちらの部屋も涼しくなります。扇風機の風量はそれほど強くなくても問題ありません。目的はあくまでも2部屋の空気を循環させることであり、風量を強くしたからといって効果が比例して大きくなるわけではありません。
サーキュレーターだとさらに効果的
扇風機は直接風に当たって涼をとる電化製品です。部屋の中の空気を循環させるなら、それを目的とするサーキュレーターという機器があります。
サーキュレーターは空気を循環させるための家電
サーキュレーターは、そもそも空気を循環させることを目的としています。そのため、扇風機よりも遠くまで、強くて直線的な風を送る仕様になっています。部屋が広いほど、扇風機では力量不足だと感じるケースも少なくありません。
特に、窓が大きく熱い外気を感じやすい部屋や、昔ながらの畳の間がいくつも続いている家屋では、空気を循環させる機能に優れているサーキュレーターのほうが、エアコンの効果を補助するのに適しています。
人に風を当てるのには不向き
扇風機とサーキュレーターは形状が似ているため「サーキュレーターを扇風機として使えないか?」と考える人もいるでしょう。結論とすれば使えないわけではありません。しかし、直接風に当たる使い方では扇風機のほうが優れています。扇風機の風は、人が当たって心地よいと感じるように設計されているためです。
一方、サーキュレーターは直線的な風であり、扇風機ならではの柔らかな風は期待できません。
まとめ
エアコンは扇風機やサーキュレーターと併用することで効率的に部屋を冷やせます。効果的な使い方をすれば、2部屋同時に冷却することも可能です。2部屋でエアコンを稼動させたり、設定温度を必要以上に下げたりするよりも、省エネでもあります。賢く使って、暑い夏を乗り切りましょう。