不要不急の外出自粛や在宅勤務の拡大などの影響により、自宅で過ごす時間が増えたこの1年半。ARUHIとクックパッドが実施した共同調査『料理と暮らし白書2021』の結果をもとに、住まいに関する意識や行動はどのように変化したか、読み解いていきます。第3回のテーマは「新居の購入や住み替え事情」。コロナ禍は住宅購入などにどのような影響を与えているのか、紹介します。
コロナ禍をきっかけに、2割を超える人が住まいの見直しを実施・検討
コロナ禍をきっかけとして、新居の購入や住み替え(※1)、建て替えなどを実施・検討したか質問をしたところ、全体の22.5%(※2)の人が実施もしくは検討していると回答。5人に1人以上の人が住まいを見直していることが分かりました。
※1:持ち家を売却し、新居を購入
※2:「特に何もしていない」と答えた人を除いた割合
実施者のなかで最も多かったのが「賃貸から賃貸、実家などへの引っ越し」で11.4%、「現住まい(持ち家)のリフォーム・リノベーション」が10.8%、「住宅を購入した」が10.4%でした。
検討中の人に関しては「住宅購入を検討」が最多で25.7%、「賃貸から賃貸、実家などへの引っ越しを検討」が21.1%、「現住まい(持ち家)のリフォーム・リノベーションを検討」が20.5%となりました。
実施・検討中いずれも住宅購入やリフォーム、引っ越しを選択する人が多く、コロナ禍で変化した暮らしに寄り添う住まいを求め、ライフステージに合わせて住まいを見直していると考えられます。
【年齢別】50歳以上の男性と30代女性の実施・検討率が高め
年齢別に見ると、コロナ禍をきっかけに新居の購入や住み替え、建て替えなどを実施・検討している人はともに50代男性が最多。実施した人が15.6%、検討中の人が30.6%となっています。男性は60歳以上も実施した人が10.5%、検討中の人が25.7%と住まいの見直しに積極的な人が多いようです。50~60代は元々、老後の住まいについて考え始める時期であり、そこにコロナ禍の生活を経験したことが、住まいを見直す行動の後押しになったのではないでしょうか。
また、30代女性も実施・検討率が高く、コロナ禍をきっかけに新居の購入や住み替え、建て替えを実施した人が13.6%、検討中の人が27.9%という結果に。30代といえば、住宅ローンを借りて住宅を購入する場合、35年ローンを組んでもリタイア前に完済しやすい「住宅購入適齢期」。住宅の購入を検討している人が全世代で最も多いことも影響しているのかもしれません。
また、男女とも年齢が上がるほどにリフォーム・リノベーションを実施・検討している人の割合が増える点も特徴的。60歳以上では男性の12.9%、女性の9.7%が検討しています。60代は持ち家を購入して年月が経ち、リフォーム・リノベーション需要が増える年代。そのタイミングでコロナ禍による外出自粛などを受けて住まいの不具合に目が向き、リフォーム・リノベーションに踏み切る人や検討する人も多くいそうです。
ちなみに年収別に見てみると、年収が上がるほど新居の購入や住み替え、建て替えを実施・検討する人が増加する傾向に。特に、住宅購入やリフォーム・リノベーションを検討・実施する人が増えていました。
【都道府県別】関西以西の県を中心に住まいを見直す傾向が
都道府県別に見ると、新居の購入や住み替え、建て替えを実施した人が最も多いのは「宮崎県」で21.7%。次いで「鹿児島県」が17.9%、以下「和歌山県」が16.7%、「長崎県」が15.6%、「鳥取県」が15.4%と、関西以西の県に集中しました。
新居の購入や住み替え、建て替えを検討中の人で最多となったのは、実施の2位だった「鹿児島県」で32.1%。次いで「沖縄県」が30.3%、以下「石川県」が27.3%、「愛媛県」が24.2%、「鳥取県」が23.1%でした。
【在宅勤務状況別】住まいの見直しに最も積極的なのは「週2~4日」層
在宅勤務状況別に見ると、新居の購入や住み替え、建て替えなどを実施した人が最も多いのは「週2~4日在宅勤務」で17.8%。次いで「週5日以上在宅勤務」が9.9%、「週1日以下の在宅勤務」が9.8%でした。
新居の購入や住み替え、建て替えなどを検討中の人でも傾向は変わらず、「週2~4日在宅勤務」で29.7%、「週5日以上在宅勤務」が25.8%、「週1日以下の在宅勤務」が22.6%という結果でした。
「週2~4日在宅勤務」の人の具体的な内容を見ると、多い順に「住宅購入の検討(9.1%)」「リフォーム・リノベーションの検討(7.6%)」「賃貸から賃貸、実家などへの引っ越しを検討(6.7%)」「持ち家を売却し、新居の購入(住み替え)を検討(5.1%)」「賃貸から賃貸、実家などへの引っ越しを実施(4.9%)」「現住まい(持ち家)のリフォーム・リノベーションを実施(4.3%)」「住宅を購入した(4.0%)」という結果に。これらの項目はいずれも週2~4日在宅勤務の人が最多となっています。
在宅勤務と通勤が半々という生活は、在宅で仕事がしやすい環境と通勤の利便性のどちらも重要になります。その結果として、住まいの見直しを考える人が多いのではないでしょうか。
62.5%の人が「戸建て」を希望
新居の購入や住み替えを実施もしくは検討中の人にその物件種別を問うと、「新築戸建て(建売住宅)」が最も多く25.7%、「土地付き注文住宅」が14.5%、「注文住宅(建物のみ)」が11.3%、「中古戸建て」が11.0%と、合わせて62.5%の人が戸建てを希望。
対して「新築マンション」は15.9%、「中古マンション」は14.5%とマンション派の合計は30.4%にとどまり、戸建てを希望する人が多い傾向がうかがえます。おうち時間が増えていることに加え、在宅勤務をはじめ働き方が多様化し、自宅に仕事部屋やパーソナルスペースが必要と感じる人が増えていることも、マンションに比べて一般的に広さが確保しやすい戸建てのニーズが増えている一因かもしれません。
【年代別】30代男性は新築マンション、40代女性は中古マンションが人気
年代別に見ると、各年代とも「新築戸建て(建売住宅)」が人気を集めているなか、30代男性は「新築マンション」を選択した人が最多の24.0%、40代女性は「中古マンション」が最多で25.0%、60歳以上の女性に関しては「新築マンション」が42.9%を占めています。
また、50代男性は「新築マンション」が20.0%、「中古マンション」が26.7%と、合わせて46.7%の人がマンションを選択し、戸建て派にマンション派が迫る勢いに。マンションの場合、階段の昇降をせず家の中を移動でき、共用部分は管理会社が清掃やメンテナンスを代行してくれます。老後の暮らしまで見据えてマンションを希望する人が多いのではないかと考えられます。
【在宅勤務状況別】在宅勤務ありの人はマンション派?
購入、もしくは購入検討している物件を在宅勤務状況別に見ると、「新築戸建て(建売住宅)」は在宅勤務状況を問わず人気を集めています。
在宅勤務ありの人は「新築マンション」の購入・検討が、建売住宅の26.2%に次ぐ21.4%(在宅勤務なしの人は13.3%)、「中古マンション」が19.3%(在宅勤務なしの人は8.0%)と、在宅勤務ありの人の4割以上がマンション購入を実施・検討しています。
コロナ禍以降、共用部にコワーキングスペースを設けたマンションなど、在宅勤務を意識した物件が販売されるようになりました。在宅勤務のある勤務形態の人にとって、マンションは今後も魅力的な選択肢となりそうです。
一方、在宅勤務なしの人は「土地付き注文住宅」が19.3%(在宅勤務ありの人は9.1%)、「注文住宅(建物のみ)」と「中古戸建て」がともに14.0%(在宅勤務ありの人は9.1/8.0%)と、「新築戸建て(建売住宅)」の22.0%と合わせて7割近くを戸建て派が占めています。物件価格が高騰傾向にあるマンションと比べて戸建ては価格が安定していること、共用部がないため外部との接触を避けやすくコロナ対策をしやすいことなどもあり、多くの人に戸建てが選ばれているのではないでしょうか。
まとめ
今回の調査結果は、コロナ禍による戸建て需要を裏付けるとともに、年代や在宅勤務状況などにより求める住まいが変わってくることも明らかになりました。これから新居の購入や住み替えを考えている人は、これから自身や家族の生活環境がどのように変化するのか見極める力が求められているのかもしれません。
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