長かった梅雨が明け、本格的な夏が到来しました。外にずっと出ているのが厳しい猛暑がすでに続いていますが、このような気候になると気になるのが電気代です。クーラーをつけないと部屋が蒸し風呂状態になってしまうので、朝から夜までずっとクーラーをつけてしまいますが、毎月電気代を確認するとショックを受けてしまいます。今年の夏は猛暑といわれていますが、家計への影響はどうなるのでしょうか?
なぜ電気代は上がるのか?
6月の下旬、大手電力会社が8月の電気料金の値上げを発表しました。電気代は輸入した燃料価格に応じて算出しますが、春先から原油や石炭の価格が上昇していたことが今回の値上げにつながったと考えられます。
電気代に敏感なら「今年の春にも値上げしていなかった?」と思うかもしれません。その認識はあっています。今年の4月、5月にも電気代は引き上げられました。春先には各家庭で毎月1,000円近く電気代が増えるという報道もたびたび目にしました。
電気代が上昇する理由は前述の燃料価格の上昇だけが原因ではありません。「再エネ賦課金」の存在があるのです。再エネ賦課金の正式名称は「再生可能エネルギー発電促進賦課金」と言います。
簡単に言うと再生エネルギー普及のために国民が負担するお金のことです。太陽光エネルギーなどの再生可能エネルギーを普及させるため、電力会社は再生可能エネルギーで発電した電気を一定価格で一定期間買い取るという義務を課されており、その義務を果たすべく電力会社が負担する金額のうちの一部を、国民が電気使用量の一部として負担することになっているのです。
電気料金はいくつかの項目から構成されています。契約アンペア数によって決まっている基本料金、使った電気量に応じて決定される使用料、そして再エネ賦課金などそのほかの料金が合計されて算出されます。つまり、電気を節約したとしても、支払う電気代が高くなる可能性もあるのです。
特に今年の夏は電力が厳しい
電気代を少しでも抑えるべく節電することは家計としてとても重要ですが、実は国としても今年の夏は特に節電への意識を高めたいところです。今年の夏は電力需給がここ数年で最も厳しい状況になると言われているからです。資源エネルギー庁によれば、今年の夏(8月)は北海道から九州までの全国7エリアで最大需要発生時の予備率が3.8%しかありません。これは2017年度以降で最も厳しい見通しです。
この予備率とは正確には「供給予備率」と言います。電力需要のピークに対して供給力にどの程度の余裕があるかを示す指標です。電力を安定供給するためには最低でも3%以上の予備率が必要とされていますから、前述の3.8%がいかにぎりぎりのラインであるかがわかるでしょう。
電力供給力が落ちている理由は、主に火力発電所の供給力が落ちていることにあります。2020年度の夏に稼働していた火力発電所のうち、2021年の夏に供給力として見込めないものが大手電力会社に限っても約830万kWもあるのです。これは老朽化した火力発電所の休廃止や採算悪化による稼働率低下などが原因なのですが、一方で東日本大震災以降、原子力発電所経由での発電比率も低下しており、日本のエネルギー問題は抜本的な部分から見直しが迫られています。
コロナ禍がさらに悪影響に
電気代の上昇は家計に大きな影響を与えます。特に今年の夏はその影響が大きくなるでしょう。なぜなら、今年の夏が猛暑であること。そして、新型コロナウイルスの感染再拡大、4回目の緊急事態宣言発出によって、在宅勤務をする人が増えるからです。
電力中央研究所社会経済研究所が発表したディスカッションペーパーによると、関東1都8県に居住する約1.2万世帯のスマートメーターデータを活用し、気象などの影響を補正したところ、年間電力需要はコロナ前の水準と比べて世帯当たり約4%増加していたということです。
コロナ禍で見られた顕著な変化は日中の電力利用量が増えたことや、平日6時台の利用量が減ったこと、夏期の利用量が増えたという3点になります。すべて在宅勤務が影響していると考えられます。在宅勤務によって通勤の必要がなくなることで起床時間が後ろ倒れする一方で、気温が高い日中に家にいる時間が増えたということが上記の変化を生み出したのでしょう。
家計防衛の方法はあるの?
猛暑、電力不足、コロナ禍を背景とした在宅勤務。これまできた3つの要因を考えれば、今年の夏にかかる電力代は私たちの家計に大きな影響を与えそうです。それでは、私たちはどのようにして家計防衛すればよいのでしょうか?
節約をするためにこの猛暑の中でクーラーをつけずに我慢するのは非常に危険です。それでは普通にクーラーを使いながらできる節約と言えば、なるべく稼働させるクーラーの数を減らすことでしょう。総務省が発表している家計調査によれば、当然ながら単身世帯より2人以上世帯の方が電気代は高くなりますが、2人以上の世帯において1人当たりの電気代として換算すると、世帯人数が増えるほど1人当たりの電気代は低くなります。
そこで、在宅勤務をするうえでも、周りの音が気にならないような設備を整えて、なるべく1つの部屋で家族全員が過ごせるような仕組みを作ることも重要かもしれません。
家計調査の月別のデータを見てみると、夏よりも冬の電気代が大きくなる傾向にあります。この夏に電気代を抑えながらムリなく過ごす仕組みを作り上げれば、この冬の家計防衛に役立つかもしれません。
家計を守るべく節約することは重要ですが、無理をして体を壊しては本末転倒です。無理をせず、使うべきときはしっかりと使い、そのうえで工夫をして節約をするという優先順位を守りましょう。