インテリアの中で占める面積が大きい床板の素材を変えるだけで、空間の印象を劇的に変えることができます。今回は、床板の中でも、木のぬくもりや温かみを感じられることから人気の無垢フローリングをピックアップ。無垢フローリングの魅力からメリット・デメリットまで、詳しく紹介します。
無垢フローリングとは
かつて日本の家屋では無垢材の床板や畳が使用されていました。マンションなどの集合住宅が増加したことを受けて、無垢材の床板と比較して安価で品質が安定した合板(複合)フローリングが登場します。
合板(複合)フローリングとは薄く切った木材を複数貼り合わせて、表面には木目を印刷したシートや木材を薄くスライスしたものを貼り付けたもののことを指します。一方、無垢フローリングとは、本物の木材を加工して作ったフローリングのことを指します。複数の木材を組み合わせることなく一枚の木材で作られているのが特徴です。
無垢フローリングは、使用する木材の種類によってその表情が大きく変化します。見た目だけなく、足触り・質感も異なるため、インテリアの方向性や好みによって選ぶのがよいでしょう。
無垢フローリングに使用される主な木材の種類として以下のものが挙げられます。
【無垢フローリングに使用される主な木材】
・ウォールナット
重厚な雰囲気で床材だけでなく家具にも用いられることが多い木材。ウォールナットのフローリングとウォールナットの家具の相性は抜群です。
・チーク
チークは木肌の変化を楽しめるのが特徴です。耐久性が強いことから船の甲板に使用されることも。
・ヒノキ
ヒノキは独特の香りと控えめな雰囲気が特徴の木材です。防虫効果が期待でき、着物や米の収納箱に用いられることもあります。
・メープル
白っぽい色が特徴のメープルは、ナチュラルな雰囲気のお部屋によく似合います。
・杉
杉は無垢材の中でもリーズナブルなものの1つです。節があるものとないものがあり、節があるものはさらに安い価格で販売されています。
導入前に知っておきたい無垢材のメリット・デメリット
無垢材は外観だけでなく触感や香りなど、五感で楽しむことができる床材です。その反面、さまざまなデメリットもありますので、導入前にしっかりと特徴を押さえておきましょう。
無垢材のメリット
無垢材のメリット以下の通りです。
(1)快適な足触り
人工的に作られていない無垢フローリングはさらさらと気持ちのよい触感と、ほどよい温かみがあり、自然素材ならではの良さを楽しむことができます。
(2)美しい木目
無垢フローリングの最大の魅力といえば、美しい木目から織りなされる高い意匠性です。木目が印刷されている合板フローリングとは一線を画した美しさで、生活を彩ってくれます。
(3)経年劣化もまた美しい
無垢材は時が経つにつれ、その表情を変えます。チークは使えば使うほど飴色が強くなり、ヒノキも日光が当たる場所は色が濃く変化します。経年による移り変わりを楽しめるのも無垢材の魅力です。シートを貼った合板(複合)フローリングではそうした経年劣化を楽しみ、愛おしむことは難しいはずです。
(4)補修ができる
傷が気になる場合、合板(複合)フローリングなどは取り替えることになることがほとんど。塗装などの種類にもよりますが、無垢材は補修が可能な場合が多いので、長く住むにマイホームにはぴったりです。
無垢材のデメリット
無垢材は魅力的で、日々の暮らしを豊かにしてくれるフローリング材ではありますが、デメリットも少なからず存在します。例えば、以下のような特徴があることには特に注意したいところです。
(1)傷が付きやすい
樹種の種類によっては木がやわらかく傷が付きやすいため、自宅での使い方によって選定するようにしましょう。
(2)膨張・収縮してフローリングに隙間やソリが生じることがある
無垢材は調湿効果がある点がメリットの1つですが、調湿作用によって膨張と収縮を繰り返し、最終的に板と板の間に隙間があいたり、反ってしまったりといった状態になることも。メーカーにもより乾燥の状況が異なるため、建築士や工務店としっかり相談してから決定しましょう。
(3)コストがかかる
無垢フローリングは合板(複合)フローリングよりもコストが高い傾向です。ウォールナットやチーク、ヒノキなどの高級材で状態がよいもの、幅が広いものなどを選択した場合は、合板(複合)フローリングの4倍以上~の価格になることも。
新築で無垢材フローリングを導入する場合のコストは1平方メートル当たり1万円前後~です。そのときの材料の仕入れなどの状況により大きく異なるほか、高級樹種を選んだ場合はこの数倍になることもあります。
後悔する前に知っておきたい無垢材導入の注意点
無垢フローリングを導入する前に知っておくべき注意点も確認しておきましょう。代表的な注意点が以下に挙げたものです。
【無垢フローリングの注意点】
・水濡れによってシミができる可能性がある
・日当たりによっては、変色の差が生じる(日当たりが良い場所とそうでない場所の色が変わる)
・家具の跡が付きやすいため、椅子の脚カバーが必要なことも。キャスター付きワゴンやピアノの直置きは要注意
・エアコンやストーブ、ホットカーペットなど暖房器具を利用すると無垢材が収縮することも
無垢材はデリケートな素材なので、汚れや傷、収縮などに気を配りながら使用しなければなりません。無垢フローリングを導入して、末永くキレイな状態を維持するためには、さまざまな点に配慮する必要があることは念頭においておきましょう。
無垢材独特の肌触りや質感を楽しみたいけれど、扱いの大変さや傷の付きやすさがネックになっているという人におすすめなのが、挽き板のフローリングです。挽き板のフローリングとは、合板フローリングの表面に2ミリメートルほどの無垢の板が張り付けられたもののこと。
2ミリメートルの板を合板の上に貼り付けてあるので、肌触りや見た目は無垢材と比べて遜色はありません。特に見た目に関しては、無垢材と区別がつかないほどです。
その一方、無垢材のデメリットとされる収縮や膨張はほとんど生じないので、ソリや隙間に悩ませられることもありません。無垢材からデメリットを取り除いたのが、挽き板フローリングと言えるでしょう。挽き板フローリングの工賃込みの価格は、商品によって異なりますが無垢フローリングよりも高額になるケースもあります。費用の目安は1平方メートル当たり1万5,000円〜と言われていますが、施工面積やチョイスした商品によっても異なります。
経年劣化を楽しんだり、無垢材独特の外観を愛でたりしたいけれど、隙間やソリなどが気になる人は挽き板フローリングを選択肢に入れると良いですね。
まとめ
家を建てるとき、リノベ・リフォームを検討するときに憧れる人が多い無垢材。外観や足触りの良さで、生活の質は格段にアップすることでしょう。しかし、無垢材独特のデメリットや注意点があることもお忘れなく。無垢材を床材に選ぶ前に建築士などに生活スタイルなどを伝えたうえで、適した床材の選定をお願いしましょう。
【監修】
植松千明さん(建築家/一級建築士/植松千明建築事務所 代表/CASBEE評価員/福祉住環境コーディネーター2級)
http://chiakiuematsu.com/