基本的に収入が多ければ多いほど税額が大きくなるのが所得税や住民税の仕組みです。年収2,000万円の人の場合、何も対策をしなければ支払う税金が非常に多くなります。
納税は国民の義務ですが、法に反しなければ節税対策をすることは認められています。そこで、年収2,000万円の人に有効な節税方法を紹介します。
年収2,000万円の人が支払う税金額
支払う税金として割合が大きいものは所得税と住民税です。課税所得2,000万円の人が支払う所得税と住民税を大まかに計算すると次のようになります。
課税所得税:2,000万円×0.4 -279万6,000円=520万4,000円
住民税:176万4,500円(10%の地域)
※中央区のシミュレーターから試算
以上により、課税所得金額が2,000万円の人は、所得税と住民税をあわせて約700万円もの税金を納めることが分かります。この額は課税所得金額の約3分の1にものぼります。
年収2,000万円の人のための節税方法
大小さまざまな節税対策があります。ここでは年収2,000万円の人向けの節税方法について解説します。
個人型確定拠出年金
個人型確定拠出年金はiDeCo(イデコ)という名前で知られていて、近年節税対策の一つとして注目を集めています。確定拠出年金とは、個人が拠出額を決めて運用する私的年金制度のことです。なぜ節税対策になるかというと、拠出額の全額が所得控除になるためです。
限度額は月に6万8,000円までですが、職種によっても限度額は異なります。もし仮に運用益が出たとしても非課税で再投資できるので、一般的な金融商品よりも納税額を抑えられるでしょう。
ふるさと納税
ふるさと納税は、税額控除を受けながら返礼品を受け取り可能です。控除上限内での寄付の場合、合計寄付額から2,000円引いた額の所得税還付、住民税控除が受けられます。
ふるさと納税で寄付を行えば自治体から返礼品が送られるため、実質2,000円で返礼品を受け取れます。なかには、2,000円以上の価値がある返礼品も多く、とてもお得です。
厳密には節税方法ではありませんが、所得税や住民税の控除ができる点では大きなメリットです。控除上限額は家族構成や収入によって異なります。
不動産投資
不動産投資は売買の差額や家賃収入などを得る投資方法になります。不労所得として収入を増やす目的で投資をする人もいますが、節税効果が高いことも大きなメリットといえるでしょう。
不動産投資の場合、収入から物件の減価償却費を差し引けます。築年数22年を超えた木造住宅の減価償却耐用年数はたった4年とかなり短くなっています。そのため、年間の減価償却費が大きくなり、その分を課税所得額から控除可能です。短期的に大きな節税効果を生むでしょう。
ただ、不動産投資は必ず収益がプラスになるとは限りません。空室が多く家賃収入が得られない、建物の補修で費用がかかるといったことがあるため、あくまで自己責任で行うようにしてください。
住宅ローン控除
住宅ローンを組んでいる場合、住宅ローン控除を利用して節税ができます。正式名称は住宅借入金等特別控除です。
控除額の上限や期間が決められているものの、控除額が大きいうえに、投資のように損をする可能性がないため、安全な節税方法だといえます。住宅ローン控除の概要や控除額については次章でくわしく解説します。
年収2,000万円の人にとっての住宅ローン控除とは
住宅ローンは利用者が多いため誰でも利用できると思われがちですが、実際にはそうではありません。住宅の大きさや年収制限など、住宅ローンを借りるためのさまざまな審査基準が存在します。
年収2,000万円の人は住宅ローン控除を受けられるのか、控除額はいくらなのかについてみていきましょう。
年収制限はクリアしている
住宅ローン控除は合計所得金額3,000万円までの人が受けられます。ここでの所得金額とは総所得金額のことであり、株などの投資による所得も含まれるため確認が必要です。住宅ローン控除について考える前に該当する資産がないか、一度見直してみましょう。
給与所得のみの人は、控除を受ける年の年収が税込3,195万円以下(2020年より前は3,220万円以下)であれば控除の対象です。よって、年収2,000万円であれば住宅ローン控除の対象になるでしょう。
年収制限のほかにも、住宅ローン控除を受けるには床面積の大きさや借入期間などの条件があります。また利用者自身が入居する建物ではなければ住宅ローン控除が認められません。別荘やセカンドハウスなどは対象外なので注意しましょう。
住宅ローン控除で受けられる控除額
住宅ローン控除では実際にどのぐらいの控除が受けられるのでしょうか。控除額の計算方法は次のとおりです。
住宅ローン控除額:住宅ローン残高×1.0%
住宅ローン控除適用期間:10年間
住宅ローン残高の最高額は最大4,000万円となり、控除額の上限は40万円です。10年にわたり控除を受けられるため、最大で400万円の節税です。ただし、ローン残高に対して1.0%の控除額となるので、返済を続けてローン残高が少なくなると控除額も減っていきます。
また、消費税10%のときに住宅を購入した人は適用される期間が3年伸びて、13年間にわたり住宅ローン控除を受けられます。
3年の延長分に関しては「住宅ローンの年末残高等×1.0%」「建物の取得価格×2.0%÷3」のどちらか少ないほうが適用されます。建物の取得価格については、一般住宅の場合は4,000万円まで、認定長期優良住宅などの場合は5,000万円までという制限があります。
年収2,000万円の人が節税するときの注意点
節税すれば支払う税額が少なくなりますが、なかにはリスクが伴うものもあります。手当たり次第に対策を講じるのではなく、自分に合った節税対策をすることが大切です。そこで、節税するときの注意点をご紹介します。
不動産投資では逆に損をする可能性もある
不動産投資は節税対策になると先述しましたが、場合によっては損をする可能性があります。注意したいのが、物件を売却するときです。物件を売却すると販売額が所得となり、税金が発生することがあります。
さらに、マンションやアパート投資では空室リスクもあります。収益が見込めないアパートやマンションでは、たとえ支払う税金を減らせても物件を管理するコストが影響しトータルの支出が大きくなってしまうリスクがあります。売却するときの所得税や収益について、投資を始める前にしっかりと確認することが大切です。
住宅ローン控除は中古住宅で上限が変わる
新築住宅では住宅ローン控除対象の上限が4,000万円ですが、購入の際に消費税のかからない中古住宅の場合は上限が2,000万円となります。
中古住宅を個人間で売買し消費税が課税されなかった場合、控除対象の上限は2,000万円、つまり控除額の上限が200万円となります。
まとめ
年収2,000万円の人は収入額こそ多いですが、その分支出する税金なども高額です。個人確定拠出年金やふるさと納税などを利用して節税対策をしましょう。
さらに、不動産投資や住宅ローン控除を活用するのも一つ手です。住宅ローン控除なら投資と比較するとリスクが低く、利用者も多い節税対策といえます。不動産投資をする際は、トータルの収支額についてよく検討することが重要です。
なお、不動産投資をはじめとした投資は必ず収益が得られるわけではなく、損失のほうが大きくなる可能性もあります。十分に情報を集め、自己責任のもと行ってください。