【フラット35】2021年7月の金利はどうなる? 長期金利は引き続き下がる傾向

住宅購入の判断に大いに関係する住宅ローン。不動産や金融についてその業界の人に匹敵する知見をもつ、公認会計士ブロガー千日太郎さんが、連載形式で住宅を買う側・住宅ローンを借りる利用者側の視点で情報発信。2021年7月の住宅ローン金利について世界情勢や国内金融市場にインパクトを与えそうな事柄を踏まえ、解説いただきます。

こんにちはブロガーの千日太郎です。2021年に入ってから間もなくは経済正常化への期待から長期金利が上昇してきましたが、その後は世界的な感染拡大の長期化によって期待は後退し、徐々に下がり始めています。

【フラット35】金利推移(機構団信加入の場合)
【フラット35】金利推移(機構団信加入の場合)

この状況で2021年7月の【フラット35】金利はどうなるのか、その動向を予想します。

長期金利は引き続き下がる傾向

2021年1月3日から2021年6月9日までの日米長期金利の動向をグラフにしました。

日本とアメリカの長期金利推移
日本とアメリカの長期金利推移

データ参考:インベスティングドットコム 日本版

米国長期金利(青い折れ線グラフ)は2021年バイデン政権のスタートとともに経済正常化への期待からウナギ上りに上昇しましたが、4月あたりで止まり、再び下がり始めています。これは米FRBのパウエル議長が一貫して「新型コロナウイルスの感染流行が終息した後にインフレが制御不能になるリスクは懸念していない」とのメッセージを発信し続けており、コロナ禍の先行きはなお不確実という認識が投資家の共通認識になりつつあるためです。

明るい材料としては、ワクチン接種が広まってきていることですが、直近で公表された経済統計指数は市場の想定を下回っており、経済正常化にはまだ遠いというパウエル議長の声明を裏付けるものとなっています。

6月に入ってからもその傾向は変わらず、引き続き米FRBによる金融緩和政策は長期化するとの見方から安全資産としての債券買いが進み、債券価格が上昇し利回りが下がっています。この動きは日本の長期金利にも波及しています。米国と比べて日本の金利はベースが低いためさらにクローズアップしてみました。

日本の長期金利の推移
日本の長期金利の推移

2021年に入ってから上昇しているのは米国の長期金利と同じですが、米国よりも早く2月末あたりから大きく下がり、直近では0.1%と0.05%の間の狭いレンジで横ばいに推移しています。

なお4月あたりまでは、経済正常化への期待も大きかったことから、日銀の動向に対して投資家が過敏に反応していたためまだ比較的大きな振れ幅がありましたが、5月に入ってからは目に見えて振れ幅が小さくなっています。

これは一足先にワクチン接種が行き渡り始めた米国の金利上昇がストップし、経済正常化への期待が遠のいたことで、安全資産としての日本国債を一定割合保有する流れが強くなっているためです。直近6月に入ってからは、さらにその傾向は強くなっており、さらに大きく下がり始めました。

ただし6月に入ってからの急激な金利低下(債券価格の上昇)は基本的に取引材料不足のなかで米長期金利の低下が波及した一時的なものであり、目立って債券価格が上がれば、売りも入るでしょうから、再び元の水準で推移していくものと見ています。

今後の長期金利の動向と【フラット35】の2021年7月金利動向の関係

日本の長期金利がこのまま低下傾向で推移していくとすれば、2021年7月の【フラット35】の金利は2020年6月より若干下がる可能性があります。

【フラット35】(買取型)の資金調達の仕組み(※下記に詳細を解説しています)からすると、住宅金融支援機構が毎月発行する機構債の表面利率が発表されるタイミングで長期金利が下がっていると、機構債の表面利率が下がるため、【フラット35】の融資金利も下がるのです。

過去の長期金利の推移と【フラット35】の金利推移

過去4ヶ月の長期金利と【フラット35】買取型の金利推移を振り返ってみましょう。青い棒グラフ(左の軸)が【フラット35】買取型で、オレンジの折れ線(右の軸)が長期金利です。

長期金利と【フラット35】金利の推移(筆者作成)
長期金利と【フラット35】金利の推移(筆者作成)

長期金利(オレンジの折れ線)の縦軸は0.05%刻みとし、【フラット35】買取型の金利(青い棒グラフ)の縦軸も0.05%刻みでレンジを合わせています。2021年3月からの長期金利の変動幅と【フラット35】の変動幅はほぼ合致しています。

そして2021年4月からは、長期金利はなだらかな低下傾向入っており、これと同じ下げ幅で【フラット35】買取型の金利も下がってきました。前半に述べたように金融緩和政策が長期化する市場観測を背景に長期金利が下がっていけば、それと同程度の下げ幅で【フラット35】の金利も下がっていくことになります。

まとめ~取引材料不足の市場動向は不安定

現在のところ世界的に経済正常化への期待が後退し、米国を含め各国中央銀行による金融緩和政策は長引くとの観測が優勢になっています。それを反映して債券価格が上がり長期金利が下がる傾向が固まってきているように思います。

日本ではこれからオリンピックが開催される予定であり、賛否が割れていますが、既に市場の金利に折り込み済みであり、今のところそれほど影響があるとは思われていません。

しかし、金融市場の動向はセオリー通りに推移するとは限りませんし、今のように取引材料が不足しているときには、些細なきっかけで高騰する可能性があります。これは個人レベルでどのように働きかけてもコントロールできない要素ですし、合理的な精度で予想することもかないません。

できることはリスクの分散です。すなわち複数の金利タイプ、金融機関で審査を通しておくことです。特に2月から4月の金利上昇局面において【フラット35】の金利上昇は抑えられたので、【フラット35】を利用することが保険になる可能性があります。そして、シミュレーションを行うときには現時点の金利だけでなく、保守的に金利が上がったケースで返済継続ができるかを確認しておいてください。

※【フラット35】(買取型)の資金調達の仕組み

フラット35の仕組み
【フラット35】(買取型)の仕組み

住宅ローンの【フラット35】(買取型)は、上図のように住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家たちは機構債を安全資産という考えで購入しますので、その表面利率は10年国債の利回り(長期金利)に連動する傾向があるのです。

※本記事は、執筆者の最新情勢を踏まえた知識や経験に基づいた解説を中心に、分かりやすい情報を提供するよう努めておりますが、内容について、弊社が保証するものではございません。

~こんな記事も読まれています~