2021年3月末から始まっているグリーン住宅ポイント。1戸当たり最大では100万ポイント(100万円相当)が付与される、これまでにないお得な制度ですが、家電品などのさまざまな商品に交換できると同時に、追加工事に充当することも可能です。追加工事とは、どんな制度、どんなメリットがあるのでしょうか。
新築住宅なら1戸当たり最大では100万ポイントに
グリーン住宅ポイント制度は、2019年の消費税引き上げ、20年からのコロナ禍による住宅需要の減退を抑制して、景気を刺激するために実施されています。図表1にあるように、新築住宅の建築や購入だけではなく、既存(中古)住宅購入、リフォーム工事や賃貸住宅の建築も対象になっています。
新築住宅の場合、長期優良住宅など高い省エネ性能を有する住宅であれば、1戸当たり40万ポイントで、3世代同居仕様などの一定条件を満たす特例の場合には1戸当たり100万ポイントになります。
これまでも何度か同様のポイント制度が実施されてきましたが、最大100万ポイントは例がなく、しかも中古住宅、リフォーム、賃貸住宅とポイントの対象も広く、さまざまな人にとってメリットの大きな制度といっていいでしょう。
追加工事は申請などの手間ヒマがかからない
ただし2021年10月末までに建築請負契約や売買契約を締結して、ポイントの申請を行うことが条件であり、もうさほど時間は残されていません。新築住宅でも分譲住宅ならすぐにも契約が可能ですが、注文住宅だと何度も打ち合わせて詳細設計を決めてからでないと契約できないので、あまり余裕はありません。注文住宅を考えている人は、早めに行動したほうがいいでしょう。
とはいえ、契約が決まれば、申請などの手間ヒマはさほどかかりません。ポイントをどう活用するのかは、各種の商品に交換する方法と、契約した業者が提供する追加工事に充当する方法とがあります。商品交換の場合には、本人が申請して、本人がポイントを受け取るか、契約した業者に申請を代行してもらい、ポイントは本人が受け取る方法があります。一方、追加工事に関しては、契約した業者にポイント発行の代理申請をしてもらい、ポイントは工事業者が直接受け取ることになります。
つまり、追加工事の場合には、ユーザーはどんな工事を行うのかを指定するだけで済み、その他の手続きに関しては業者に任せ切りにでき、全く手間ヒマがかからないわけです。
在宅勤務が可能なワークスペースを設置する工事など
では、追加工事ではどんな工事が可能なのでしょうか。詳細は図表3にある通りですが、大きくはコロナ禍に対応した新たな日常に資する工事、防災に関する追加工事に分類できます。
新たな日常に資する工事としては、屋内に在宅勤務が可能なワークスペースを設置する、そのためのWi-Fiの設置などの工事などが挙げられます。また、仕事に集中できるように、防音設備を設置する、コロナ禍対策のために換気設備を設置する、ドアを非接触で開閉できようにするなど、ウイルス拡散対策などを行うこともできます。
また、キッチンに自動的に洗浄するレンジフードを設置するなど、家事負担を軽減するための工事も新たな日常に資する工事に含まれます。
防災工事に関しては、このところ地震や豪雨、台風などの被害が続出しているため、それを防ぐための工事が対象になります。
具体的には、地震や台風などで停電になっても一定の電力を確保できる太陽発電設備や蓄電池の設置などが挙げられます。また、突風による屋根瓦や窓ガラスなどの飛散を防止する設備などもOKです。
追加工事として太陽光発電設備を設置する人が多い
実際に皆さんはどんな追加工事を行っているのでしょうか。制度がスタートして1ヶ月の段階での集計ですが、図表4にあるように、最も多いのは停電・断水対策で、次いで家事負担軽減に資する工事、空気環境向上工事が続いています。
トップに挙がった停電・断水対策の中身を見ると、太陽光発電設置が大多数を占め、次いで家庭用燃料電池(エネファーム)設置、蓄電池設置などが続いています。また、家事負担軽減に資する工事では、キッチン周りの設備の設置がトップで、それを家事負担の軽減に資する収納の設置、トイレ周りの設備の設置などが追っています。停電・断水対策では、太陽光発電設備が断トツですが、家事負担軽減に資する工事ではそんなに大きな差がなく、キッチン、トイレ、収納などに分散する傾向が見られます。
さらに、空気環境向上工事では、換気設備等の設置の比重が大きく、空気浄化作用のある製品の設置が続いています。
独自に工事を依頼するよりも安くつく可能性が高い
こうした追加工事、実は前回の次世代住宅ポイント制度では認められていませんでした。商品交換にしか利用できなかったため、住宅業界では使い勝手が悪いという声がもっぱらでした。
というのも、家電品などの交換商品のポイント設定はメーカーなどの希望価格で決められており、量販店などで探せば、それより安く入手することが可能。ですから、消費者にとってはさほど魅力的に映らず、結果的に次世代住宅ポイントは予算を余らせたまま終了しました。
これに対して、追加工事は住宅メーカーや分譲する不動産会社などが大量に受注、部材などを大量に発注して設置できるので、コストダウンが図れるメリットがあります。単独で工事を依頼するより、安く頼める可能性があるのです。業界、業者にとっては売り上げの拡大につながり、消費者にとっても手間いらずで、安く発注できるメリットがあり、ウイン・ウインの関係になります。
消費者からすれば、多くの業者を回って調べる必要がなく、申請などの手間ヒマもかかりませんから、建築請負契約や売買契約の段階で、実際にどんな工事が可能なのか聞いて、上手に活用するのがいいのではないでしょうか。