就職や進学などで引っ越した場合に必要な手続きである現住所の異動。現住所を移動させなければ、さまざまなデメリットがあるだけでなく法的な罰則も科せられる可能性があります。今回は、現住所についてその意味や住民票と異なる場合の問題点・書き方などを解説します。
現住所の意味とは
現住所とは、生活の本拠地となる場所の住所のことをいい、言葉の通り「現在住んでいる住所」のことです。住所などの居住について公に証明する「住民票」に記載されている住所は、基本的に現住所となります。
現住所の更新は国民の義務
住民票に記載されている住所は自動的に変更されるわけではなく、変更するには手続きをする必要があります。引っ越しなどの際は、慌ただしさでつい変更手続きを忘れてしまうこともあるでしょう。しかし、現住所の更新は国民の義務として法律に次のように定められているのです。
住民基本台帳法 第二十二条
転入(新たに市町村の区域内に住所を定めることをいい、出生による場合を除く。以下この条及び第三十条の四十六において同じ。)をした者は、転入をした日から十四日以内に、次に掲げる事項(いずれの市町村においても住民基本台帳に記録されたことがない者にあつては、第一号から第五号まで 第七号に掲げる事項)を市町村長に届け出なければならない。
引用:住民基本台帳法 | e-Gov法令検索
新しく別の市町村に引っ越しをした場合は、転入日から14日以内に住民票の変更手続きをしなければなりません。もし、正当な理由なくこの手続きを行わなかった場合は違法となり罰則が科せられるのです。
住民基本台帳法 第五十二条
2 正当な理由がなくて第二十二条から第二十四条まで、第二十五条又は第三十条の四十六から第三十条の四十八までの規定による届出をしない者は、五万円以下の過料に処する。
引用:住民基本台帳法 | e-Gov法令検索
手続きをしない場合は5万円以下の過料が科せられる可能性があります。14日もあるからと油断していると、引っ越しの慌ただしさから手続きの時間が取れないこともありますので、住所が変わった場合は、速やかに変更手続きをしましょう。
新型コロナウイルスの影響での届出遅れは罰則なし
基本的に14日を超えての申請には罰則がありますが、新型コロナウイルスの影響により住民票の変更届が遅れた場合については、次のように定められています。
2 届出期間を経過した者の取扱い
法第 22 条、第 23 条、第 25 条又は第 30 条の 46 から第 30 条の 48 までの規定による届出については、これらの届出の事由が生じた日から 14 日以内に行わなければならず、正当な理由がなく当該期間を経過した者は、法第 52 条第2項の規定により、過料に処することとされているが、今般のコロナウイルス感染症の感染拡大の影響に伴う諸情勢等に鑑み、当分の間、当該期間を経過した者については、「正当な理由」があったとみなして、「住民基本台帳事務処理要領」第5-9-(1)の通知を要しないものとすること。
引用: 総務省
これにより、新型コロナウイルスの影響で届出が遅れたしまった場合は「正当な理由」とみなされ、過料が科せられないのです。
住民票の移動が必要ないケースもある
すべての場合で住民票を移動させる必要はなく、次の場合は移動の必要はないと言われています。
・引っ越し先での生活が一時的であり、元の住所に帰る見込みがあること
・定期的に実家に帰るなどで生活拠点が変わらない
学生などで定期的に実家に帰る場合や社会人の単身赴任などでもとの住所に戻る予定がある場合は、住民票を移す必要はないでしょう。
ただし、自分が住民票の移動が必要なのかはケースにより異なるので、わからない場合は役所に確認することをおすすめします。以下のサイトでも住民票の移動について詳しく確認できるので参考にすると良いでしょう。
参考:総務省 住民基本台帳等
住民票の現住所が違う場合の問題点
引っ越しなどで現住所が変わると、住民票だけでなくマイナンバーや運転免許証など現住所を記載している書類についても住所の変更手続きが必要となります。
「住民票と住所が違っても問題ないのでは」と考え、手続きが面倒になってしまうことや、つい手続きを忘れてしまうということもあるでしょう。しかし、住民票の住所と現住所が異なるとさまざまな問題点があるので注意が必要です。
住民票と現住所が違う場合の問題点としては次のようなことが挙げられます。
・選挙に参加できない
・運転免許証の更新や確定申告ができない
・重要書類や本人確認郵便の受け取りができない
・公共サービスを受けられない
・通勤手当や在宅手当を受け取れない
選挙に参加できない
選挙権は住民票に記載されている住所で適用されます。選挙で投票するためには、まず選挙人名簿に登録されることが必要です。
この選挙人名簿への登録には住民基本台帳に3ヶ月以上登録されていることが条件になります。そのため、現住所と住民票の住所が異なると現住所で行われる選挙には参加できなくなるのです。
運転免許証の更新や確定申告ができない
運転免許証の更新は、住民票に記載されている地域でしか手続きができない仕組みとなっています。また、確定申告も住民票に記載の地域の税務署で行わなければいけません。
住民票に引っ越し前の住所が記載されている場合は、引っ越し前の地域の免許センターや税務署まで行って手続きしなければならないのです。
重要書類や本人確認郵便の受け取りができない
運転免許証の更新通知や納税通知書などの重要書類は、住民票の住所に発送されます。
また、本人確認が必要な郵便を受け取るためには、運転免許証やマイナンバー・パスポートなどの公的書類が必要です。
それらの公的書類が現住所と異なるため、本人確認ができず受け取れない可能性が出てきてしまうでしょう。
公共サービスを受けられない
印鑑証明書や所得証明書などの各種証明書の発行や福祉サービス、図書館などの公共施設の利用などは、基本的に管轄エリアの住民を対象としています。住民票の住所が管轄エリア外であると、有料になってしまう場合やサービス自体を受けられない可能性もあるので注意が必要です。
通勤手当や在宅手当を受け取れない
職場から通勤手当や在宅手当が支給される場合、その申請に住民票の写しが必要となる場合があります。住民票と現住所の住所が異なると、申請しても認められなくなるため住民票を変更しましょう。
また、住民税を給与から天引きされている場合も、住所が異なるとトラブルに発展する可能性があるので注意が必要です。
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住民票の住民登録地と本籍地は違っていても問題ない
現住所と混同しやすいのが「本籍地」ではないでしょうか。本籍地とは、自分の生年月日や続柄などを記録している「戸籍」を置いている場所のことです。
本籍地は、あくまで戸籍を置いてある住所であり、住民票に記載されている住所と必ずしも同じである必要はありません。本籍地をどこにするのかは特別な決まりはなく、日本国内のどこを本籍地にしてもよいことになっているのです。
両親の本籍地をそのまま引き継いだ場合や、結婚したときの住所だけでなく、有名なテーマパークや皇居を本籍にしている人もいるなど、申請する場所は自由です。
現住所についてよくある疑問・質問
現住所についてよくある疑問・質問として「書き方」があります。手続きの各種申請書や履歴書など住所を記入するタイミングは日常的にあります。自分の住所なのでとくに気にせずに記入する方も多いのではないでしょうか。
しかし、住所の書き方には細かな決まりがあるのです。特に履歴書や公的な書類では正しい記入が必要となるので注意しましょう。
現住所の書き方
現住所を記入するうえで押さえておきたいポイントと、それを踏まえた書き方は次の通りです。
・都道府県名から書く
・番地の書き方は住民票の記載通りに記入する
・数字は算用数字を利用する
・アパートやマンションの棟や号棟を略さない
<書き方例>
東京都〇〇町3丁目4番地5号〇〇マンションB棟201号室
現住所を記入するときに、とくに間違えやすいのが番地の書き方です。「〇〇町3-4-5」のようにハイフンでの記入は厳密にいうと間違いとなります。
番地の記載はハイフンで記入するのではなく住民票の記載通りに記入する必要があります。そのため上記の例では「〇〇町3丁目4番地5号」と記載するのが正しいのです。漢数字で書くとハイフンと漢数字の一の区別がつきにくいといった問題がありますので、番地などの数字は漢数字ではなく、算用数字を用いるようにしましょう。
また、アパートなどに住んでいる場合もハイフンで略すのではなくマンション名・棟・号まで正しく記載するようにしましょう。「B-201」ではなく「B棟201号室」と記入するのが正しい書き方です。
フリガナの書き方
現住所の記入の際にはフリガナまで記入しなければならない場合もあります。基本的に、フリガナは番地の前までを記入し、マンション名などは漢字が含まれる場合や読みにくい場合のみ記入するのです。
フリガナの書き方は次の通りです。
<書き方例>
トウキョウト 〇〇マチ ○○マンション
「東京都〇〇町3丁目4番地5号」であればフリガナは○○町まで必要です。町以下の丁目や番地にまでフリガナを記入すると、読みづらいため、フリガナは必要ありません。
また、フリガナの表記は、ふりがなと平仮名表記であれば平仮名、フリガナとカタカナ表記であればカタカナで記入するのが原則です。
まとめ
現住所は現在住んでいる生活の拠点となる住所のことであり、住民票に記載されている住所が現住所と同じになります。現住所と住民票の住所が異なることで生活するうえでの不便も多いだけでなく、法的な罰則も科せられる恐れもあるので注意が必要です。
引っ越しの慌ただしさでつい手続きを忘れがちですが、住所が変わったときは住民票の変更手続きを速やかに行うようにしましょう。
(最終更新日:2024.04.19)