住宅の構造にもいくつかありますが、この内、鉄筋コンクリート住宅と木造住宅にはどのような違いがあるのでしょうか。
本記事では、鉄筋コンクリート住宅、木造住宅それぞれのメリット・デメリットやおすすめできる人をそれぞれ比較しながらご紹介します。これから住宅の新築や購入を考えている方はぜひ参考にしてみてはかがでしょうか。
鉄筋コンクリート住宅のメリット・デメリット
鉄筋コンクリートは、コンクリートのなかに鉄筋を入れて強度を固めた構造です。RC造と呼ばれることがありますが、これはReinforced Concrete(リインフォーストコンクリート)の略称です。
一般的に戸建て住宅やアパートは木造構造で建てられていることが多いです。鉄筋コンクリート造の住宅の数は多くありませんが、特に強度を求める方におすすめです。
鉄筋コンクリート住宅のメリット
鉄筋コンクリート住宅のメリットには、以下のような点が挙げられます。
・地震に強い
・火や熱に強い
・自由度が高い
鉄筋コンクリートは、引っ張る力に強い鉄筋と圧縮に強いコンクリートを組み合わせており、耐震性が高いです。近年では地震や台風に強い住宅を求める方も多くなっており、この点を大きなメリットと感じる方も多いでしょう。
また、耐火性や耐熱性が高い点もポイントです。
コンクリートは熱に強く、1,000℃を超える熱にさらされても強度が落ちず、崩壊もしにくいです。
特に住宅密集地では近隣で起きた火事の延焼で大きく燃え広がってしまう危険性がありますが、耐火性に優れた鉄筋コンクリート住宅であればすぐに焼け落ちる可能性が低いので、火災の際に比較的安全に外へ避難することができます。また、補償会社により異なりますが鉄筋コンクリート住宅は、一般的な木造住宅と比べて火災保険の保険料を抑えることができます。
さらに、木造住宅では柱から柱までの距離を取りづらい間取りでも、鉄筋コンクリート住宅であればほとんどのケースで実現可能です。たとえば、横二台分のビルドインガレージを作るケースや、広いオープンスペースを確保したいといったケースでは、鉄筋コンクリート住宅が向いているでしょう。
鉄筋コンクリート住宅のデメリット
一方、鉄筋コンクリート住宅のデメリットには以下のような点があります。
- ・コストがかかる
・重い
・結露やカビに悩まされやすい
鉄筋コンクリート住宅の最大のデメリットともいえるのがコストの高さです。部材が高いのに加え、工期が長くなりがちなこともあり、木造住宅と比べると1.5倍~2倍程度の建築費用がかかってしまうことが多くなっています。住み始めて数年後に増改築を検討するようなケースでも、コストが高くなってしまいやすいので注意が必要です。
また、鉄筋コンクリート住宅は家の重量が大きくなります。このため、住宅建築前の地盤調査で、軟弱な地盤と判断されると高額な地盤改良費がかかってしまいやすい点にも注意が必要です。地盤改良費は数十万円から、場合によっては百万円を超える費用がかかるケースがあります。
最後に、コンクリートの内部には水分が残っているといわれており、特に建築後数年間はカビや結露に悩まされやすくなっています。カビや結露を対処するために高性能な換気システムを導入することも可能ですが、そのぶん建築コストはさらに高くなってしまいます。
鉄筋コンクリート造住宅はどんな人におすすめ?
鉄筋コンクリート住宅は長く住むことを前提に、初期費用が多少高くなっても高性能な住宅に住みたい方におすすめです。
鉄筋コンクリート造住宅は長期的に見ればかえって費用を抑えられる可能性があります。耐震性や耐火性に優れているため長く住み続けられるため、途中で建て替えする費用が不要となるケースがあります。
木造住宅のメリット・デメリット
木造住宅は、構造部分に木材を採用した構造になっています。昔ながらの工法で建てられる在来工法を中心に、最近では北米で生まれた2×4(ツーバイフォー)工法などを用いて建築されます。
木造住宅のメリット
木造住宅のメリットには以下のようなものがあります。
- ・コストを抑えやすい
・多くの住宅会社で対応可能
・高い調質性
木造住宅は鉄筋コンクリート造と比べてコストを抑えやすい点がメリットです。近年では住宅性能の改良も進んでおり、木造住宅であっても快適な住環境を実現しやすい点もポイントでしょう。
また、鉄骨住宅や鉄筋コンクリート住宅は対応してくれる住宅会社が少ない一方、木造住宅は多くの住宅会社で対応可能です。2018年の住宅産業研究所のデータによると、日本の戸建て住宅は9割ほどが木造住宅となっています。
出典元:総務省統計局 「平成 30 年住宅・土地統計調査」
木造住宅は住宅会社ごとにさまざまな特徴があり、自分の好みにあった価格帯やデザインから住宅会社を選びやすいと言えるでしょう。
さらに、木材には調質効果があります。調質効果とは、室内の空気が乾燥すると、木材に蓄えていた湿気を放出したり、逆に湿気が多くなると空気中の湿気を木材が吸収したりする効果です。これにより年間を通して快適な環境を実現しやすく、またカビや結露が生じにくいメリットが得られます。
木造住宅のデメリット
一方、木造住宅のデメリットは以下のようなことが挙げられます。
- ・間取りが制限されやすい
・職人の腕に左右されやすい
・耐用年数が短い
木造住宅は鉄骨住宅や鉄筋コンクリート住宅と比べると強度が劣ることもあり、柱から柱までの距離を取りづらいといったデメリットがあります。たとえば、柱から柱まで7~8m確保して広いリビングを作ったり、横に2台分駐車するビルドインガレージを設置したりすることは難しいでしょう。
また、木造住宅は木材を現場に運び、職人がその場で組み上げて作るため、家の仕上がりが職人の腕に左右されやすい問題もあります。そのため、信用できる職人に担当して貰えるかどうかが重要なポイントです。
最後に、木造住宅は鉄筋コンクリート住宅と比べると耐用年数が短くなっています。たとえば、自己居住用の鉄筋コンクリート造の法定耐用年数は70年ですが、木造住宅の場合は33年です。
法定耐用年数は主に税金の計算のために定められたもので、必ずしも耐用年数通りに劣化するわけではありません。しかし、一般的には、鉄筋コンクリート住宅より木造住宅のほうが、経年劣化が早まると言えるでしょう。
出典元:国税庁『「減価償却費」の計算について』
木造住宅はどんな人におすすめ?
木造住宅は比較的費用を抑えて住宅を建てたい方におすすめです。
木造住宅は構造上、鉄筋コンクリート造住宅と比べて、耐震性や断熱性に劣るというデメリットがあります。
しかし、近年では木造住宅の高性能化が進んでおり、耐震性や断熱性を高めるための設備を導入すれば、これらのデメリットは解決可能です。
しかも、設備を導入しても、鉄筋コンクリート造住宅と比べれば費用は比較的安く抑えられるため、耐震性や断熱性が大きなデメリットとはなりにくいと言えるでしょう。
一方で、構造部分は、家を建てた後に変更することはできません。100年以上経っている木造住宅もありますが、一般的には鉄筋コンクリート造住宅と比べると、木造住宅のほうが劣化しやすい傾向があります。
比較表
鉄筋コンクリート住宅と木造住宅の特徴をいくつかのポイントで比較してみると、以下のようになります。
項目 |
鉄筋コンクリート造 |
木造住宅 |
建築費用 |
比較的高い |
比較的安い |
建築期間 |
長くなりやすい |
短くしやすい |
法定耐用年数 |
70年(自己居住用) |
33年(自己居住用) |
耐震性 |
比較的高い |
比較的低い |
断熱性 |
比較的高い |
比較的低い |
防音性 |
比較的高い |
比較的低い |
調湿性 |
無し |
有り |
耐用年数や耐震性、断熱性、防音性など、複数の項目で鉄筋コンクリート住宅のほうが、木造住宅より高いことがわかります。
一方で、大きな問題となるのがやはりコストの違いでしょう。先述したとおり、建てる建物の規模や設備にもよりますが、鉄筋コンクリート造住宅は木造住宅の1.5倍~2倍の費用がかかることがあります。
さらに、住み始めてからの修繕や増改築が必要となった場合、鉄筋コンクリート造住宅では費用が高くなりやすいです。こうした点から多くのほうが木造住宅を選んでいるのが実情でしょう。
とはいえ、耐用年数の点から見ると、鉄筋コンクリート造住宅は法定耐用年数が木造住宅の2倍程度となっています。法定耐用年数がそのまま、実際の経年劣化の程度を示すわけではありませんが、長期的に見れば、鉄筋コンクリート造住宅のほうが費用を安く抑えられる可能性もあります。
まとめ
今回は、鉄筋コンクリート住宅と木造住宅について、それぞれのメリット・デメリットとおすすめできる人についてご紹介しました。
日本においては、住宅会社の多くが木造住宅に対応しており、住宅新築段階で木造住宅を選ばれることが多くなっています。これは、鉄筋コンクリート住宅のコスト面が問題となっていることが多いでしょう。
耐用年数や耐震性、耐火性など鉄筋コンクリート造住宅のメリットと、コスト面の問題など比較したうえで鉄筋コンクリート住宅にするか、木造住宅にするか判断することをおすすめします。