家の床と壁の間にある「巾木」とは? 読み方・役割・種類をくわしく紹介!

家を建てようとするとき「壁紙はこれにしよう」「床材はこれだな」といろいろ調べて想像を膨らませるでしょう。しかし、「巾木」について調べる人はあまりいないかもしれません。

巾木とは、床と壁の境界部分に設置する部材のことです。見たことはあっても、巾木が家の内装のなかでどれほど重要な役割を担っているのか、知っている人は少ないでしょう。そこで、今回は巾木について、特徴や役割、種類を詳しくご紹介します。

 

巾木とは

床と壁の境目に位置する巾木

巾木(読み方:はばき)とは、フローリングやカーペット仕上げの床と壁の境目部分に設けるもので、汚れや傷からの保護や、床と壁の間に隙間ができないようにするための部材です。デザイン的な要素もあり、壁材や床材、建具の色味や素材と合わせて選びます。

一般的には、浴室を除いた全ての部屋に巾木が付けられています。ただし、和室には巾木という部材がありません。巾木の代わりに、畳寄せという部材を使用しているからです。

 

巾木の役割と必要性

デザインと保護、両方の役割を持つ

巾木とは、住宅においてなくてはならない部材と言えます。巾木には四つの役割があり、どれも住宅の使いやすさや見た目にかかわるものだからです。巾木は、壁材と床材の間にできる隙間を隠したり、傷や汚れから壁を保護したり、壁紙の剥がれを防いだりするなどの保護の役割に加え、デザインとして部屋の印象を決めるという重要な役割も担っています。

巾木とは何かを知らずに家を建ててしまうと、使いにくくイメージ通りでない家に仕上がってしまう可能性もあるため、まずは巾木の役割を詳しく見ていきましょう。

 

壁と床の隙間を隠す

壁材や床材は使用する素材によっては伸縮し、施工時には壁と床の間をきれいに仕上げていても、時間の経過によって隙間ができてしまうものです。また、壁下地の石膏ボードは施工しやすくするために床から少し離して取り付けられます。それらの隙間を隠すために、巾木を取り付けるのです。

施工的な観点から見ると、壁紙を床材のギリギリまで一直線に貼れば良いのですが、それは至難の業。巾木は期間と予算に合わせた建築にも一役買っていると言えます。

伸縮しやすい材としては、壁紙と無垢のフローリングが挙げられます。無垢材は湿度の変化に伴い、収縮・膨張するものだからです。また、1枚の材の幅が広いほど収縮・膨張しやすいと言えます。

巾木を取り付ければ隙間は見えませんが、フローリングの収縮・膨張が気になるなら、複合フローリングがおすすめです。表面は無垢材を使用しているので、無垢材と変わらない質感に仕上げられます。

床材と巾木の間に隙間ができるというのはあまりないことですが、壁紙と巾木の間は隙間ができやすいです。巾木の納め方やコーキングできれいに見せることができるため、きれいに施工できるかどうか事前に確認しましょう。

 

汚れや傷から壁紙を守る

壁の床に近い部分は、水をこぼしたり、ものを落としたりしたときに汚れやすくなります。巾木があることによって、そのような汚れを防ぐことが可能です。巾木の素材によっては付いた汚れを落とすことができるので、必要性は高いと言えるでしょう。それでも巾木の汚れが気になる場合は、フローリングの色に合わせて汚れが目立たないような濃い色にすることをおすすめします。

巾木がない場合だと、上記で説明したように壁と床に隙間ができてしまいます。壁と床の隙間にはゴミが溜まりやすく、不衛生になってしまうでしょう。そのような事態を防ぐためにも巾木は必要です。

傷から守るという観点からも、巾木は重要です。壁の下地は石膏ボード(別名:プラスターボード)というものでできています。石膏ボードは耐水性に乏しいため、水を含むと強度が低下するだけでなく、形状を保持できなくなって崩れてしまいます。また、強い衝撃を受けるとへこんでしまうため、巾木で保護する必要があるのです。

 

壁紙の剥がれを防ぐ

壁紙は、結露や乾燥により伸縮します。伸縮することによって、壁紙が剥がれてしまうこともあり得ます。壁紙を貼ったあとにその上から巾木を取り付けることで、壁紙の剥がれを防ぐことが可能です。

ただし、巾木の後付けにはデメリットもあります。壁紙を張り替えるときに、巾木を上から取り付けているので、手間がかかる点です。この場合は、一度巾木を取るか、巾木の上でクロスを切断するかの2択となります。

また、巾木がない状態で壁に近い床に液体をこぼしてしまうと、床と壁の境目部分に水がかかってしまうことがあります。そうすると、そこから壁紙が剥がれはじめてしまうでしょう。

巾木を取り付けることにより、40~100ミリメートル程度の高さまでなら保護することができますので、液体をこぼしても壁紙への被害は少なくなります。

 

部屋のデザイン性を高める

巾木は素材や高さによって見え方が変わるため、部屋のイメージを作る1つの要素となります。壁紙と比べると見えている比率は低いですが、巾木の選択で部屋のデザインは大きく変わってきます。巾木を取り付けた後に変えるのは手間がかかりますので、慎重に選択しましょう。

住宅で使われるソフト巾木の高さは40・60・75・100ミリメートルが一般的です。巾木を目立たせたくない場合は、低めの巾木をおすすめします。

色や柄も重要で、壁と同系色にすれば目立たず、床と同系色にすれば、より落ち着いた雰囲気を作ることが可能です。反対に、床や壁と違う色を選択すれば、巾木を目立たせることができます。

住宅メーカーで家を設計する場合は、メーカーの方で使用する巾木をある程度決めていることが多いため、お客さんはそこから選択することになるでしょう。

注文住宅を設計する場合は、建材メーカーのカタログから選べるのでたくさんの選択肢があります。柄は高度な印刷技術により、単色のものから木目調までさまざまな種類があるのです。木目調のなかでも、淡い色や濃い色のものがあるので、部屋のイメージに合わせて選ぶことができます。

 

収まりによってもイメージが変わる

巾木は、収まりによっても部屋の見え方が変わってきます。巾木の収まりには種類があり、「出巾木(読み方:ではばき)」「入巾木(読み方:いりはばき)」「同面巾木(読み方:どうづらはばき)」があります。

出巾木とは一般的によく見るタイプで、壁面に対して飛び出ている巾木のことです。

入巾木とは、壁面に対して引っ込んでいる巾木のことを言います。同一面巾木とは、壁面に対して平らに取り付ける巾木のことです。

出巾木、入巾木、同一面巾木は施工方法が異なります。

出巾木は、壁下地の石膏ボードを貼ってからでも取り付けられます。

しかし、入巾木と同一面巾木は、1枚目の石膏ボードを取り付けたあとに巾木を取り付け、その後に、2枚目の石膏ボードを取り付けます。材料費もその分増えることは理解しておきましょう。

また、入巾木と同一面巾木は切った断面が見えますので、その処理も行います。断面には壁紙を巻きますが、取れやすいことがあるため注意が必要です。

これらの欠点を補いながら入巾木のきれいなデザインを見せる方法が、アルミ巾木を入巾木として収める方法です。アルミ巾木とは、材質がアルミニウムで作られている巾木のこと。この方法であれば、石膏ボードは1枚で済み、小口も見えませんのでおすすめです。

 

巾木の材質の種類

巾木にも材質や形など様々な種類が

巾木は材質によって、大きく2種類に分けられます。木製の巾木を「木巾木」と言い、塩化ビニル製の巾木を「ソフト巾木」と言います。それぞれ、柄や形の種類が豊富にあります。木巾木は、ソフト巾木に比べて厚みがあるのが特徴です。

ソフト巾木は建材メーカーから多く出されており、柄の種類が多いのが特徴。選ぶポイントとしては、部屋の用途や施工性、見た目が重要です。ここではそれぞれの特徴、メリット・デメリットを詳しくご紹介します。

 

木巾木

木巾木は、木製の巾木のことを言います。無垢材を使っている巾木もありますが、集成材を木目の塩ビシートで巻いた既製品が多いです。厚みがあり、施工時には接着剤で固定したあとに釘を打ちます。巾木の表面に溝があり、その溝の部分に釘を打つことにより、外から釘が見えないようにしてあります。

また、90度の角度が付いている出角部分には、専用のコーナーキャップを使用。角を丸く加工しているので、子どもがいてもけがをする危険性が少なく、安心です。

使用するメリットは、厚みがあることで部屋が格式高く見える点。また、木を使用しているので、木の手触りが好きな人におすすめです。無垢材の巾木の場合、塗装により傷や汚れを防ぐこともできるため、長期間使用することができます。

デメリットは、厚みがありますので埃がたまりやすい点です。常に清潔に保つには掃除が不可欠になります。また、DIYとして自分で施工する場合は、厚みがあるので加工するのが大変です。

木製巾木の上面をRに加工して、埃がたまりにくくした商品もあります。厚みは4ミリメートルと多少薄くなりますが、木本来の手触りを求めるならば、選択肢に入れるのも良いでしょう。

 

ソフト巾木

ソフト巾木は、塩化ビニル製の巾木のことを言います。木巾木と比べて柔らかく、厚みがあまりない点が特徴で、種類が豊富です。木目風や大理石風などの模様付きもあり、数多くのなかから選ぶことができます。

「木巾木のような木目がほしいけど、掃除は面倒だ」と考える人はソフト巾木を選択するのも良い選択です。

使用するメリットは、水・油・薬品に強い点です。汚れが付いても、洗剤で簡単に拭き取ることができます。そのため、トイレやキッチンなどの水回りにもおすすめです。また、施工性が高いのもメリットの1つ。

ソフト巾木には「R付き」というものがあり、床材を上から貼ることによって床と壁の隙間を隠すことができます。R部分は弾力があるので、床材の凹凸をある程度は吸収できるようになっています。

また、薄いので壁の角の施工でもきれいに仕上がるのもメリットです。DIYとして自分で施工する場合は、速乾性接着剤を使用するだけなので簡単にできます。

デメリットとしては、施工時に冷えてしまうと硬くなり、施工性が悪くなる点です。また、高温の環境で使用すると変形してしまいますので、暖房器具を使用する場所ではソフト巾木の取り付けは避けるべきでしょう。

 

ソフト巾木と木巾木の施工手順

ソフト巾木と木巾木の施工手順は異なります。ソフト巾木の場合は壁紙を貼ってから巾木を取り付けますが、木巾木の場合は巾木を取り付けたあとに壁紙を貼ります。

壁紙と巾木の境目部分はクロスをカットし、多くはコーキングでつなぎ目を処理します。自分で巾木を取り付けたい場合は、ソフト巾木が後付けで取り付けられるのでおすすめです。

また、ソフト巾木のなかにはシールのようになっているものがあります。裏面に粘着テープが付いているので接着剤も不要で、素人の方でも手軽に取り付けることが可能です。厚さは3mm程度で上面・底面にはRが付いており、隙間にゴミや水が入りにくい構造になっています。張り替えが容易にできるため、気分に応じて好きな巾木を取り付けることができるでしょう。

 

巾木がない場合

意匠的に意識して、巾木を付けない場合もあります。巾木を付けない場合は、床を先に仕上げなければいけません。その次に壁の仕上げに入りますが、壁紙を貼るときには接着剤を使います。

接着剤がつかないようにするため床に養生をしなければいけなくなり、手間が増えるのです。巾木を付ける場合、壁を仕上げたあとに床を仕上げられるので手間が省けます。

どうしても巾木が目立つのが嫌だと思っている人は、高さの低い巾木を選択するのも良い方法です。高さの低い巾木は、部屋をすっきり見せることができます。また、壁紙と同系色のものを選べば、より目立たなくなります。基本的に巾木は生活において必要性の高いものですので、お好みに合わせて選ぶことも視野に入れておきましょう。

 

壁と天井の隙間に取り付ける部材は「廻り縁」

廻り縁(読み方:まわりぶち)とは、壁と天井の境目部分に取り付けられる部材です。廻り縁の役割は3つあります。

天井と壁に求められる機能や性能には、多少の違いがあります。そのため、使用する材料も変わってきます。材料によっては施工上のおさまりが難しく、職人によってはきれいに施工できない場合もあります。そのような事態を避けるため、廻り縁を使用して境目部分が見えないようにするのです。

また、壁と天井では下地の構成が違うため、構造が変わってきます。そのため地震や強風で建物が揺れるときに、動きがそれぞれ違います。その結果、天井と壁の境目部分に亀裂やシワなどが発生してしまうのです。また、経年劣化や調湿作用により、材料の伸縮も起きてしまいます。その結果、境目部分に隙間が発生します。さまざまな原因によって起きる境目部分の問題を予防するためにも、廻り縁は必要なのです。

廻り縁は、部屋のデザインとしても重要です。種類も豊富で、材質は木製や塩化ビニル製、金属製のものがあります。形状もさまざまあるので、部屋の雰囲気に合わせて選ぶことが可能です。

 

まとめ

巾木とは、部屋のなかでも重要な役割を果たす部材です。巾木には床と壁の隙間を隠したり、汚れや傷がつかないようにしたり、壁紙が剥がれないようにする効果があります。

いくら気をつけても、壁材や床材は環境に応じて伸縮するものです。それに伴い、隙間ができたり、壁紙が剥がれたりしてしまうこともあるでしょう。長く住めば、汚れや傷も付いてしまいます。それらを予防するために、巾木が必要になるのです。

将来的に壁紙を張り替える費用を考えても、家を建てるときに部屋のイメージにぴったりの巾木を取り付けることをおすすめします。

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