「軒先」と「軒下」の違い知っていますか? 「軒」を含む言葉の意味

屋根は、家の外観に大きな影響を及ぼします。そして、屋根の先端である「軒先」は最も人の目線に近い位置にあり、自然と視線を集めるポイントでしょう。軒先の見え方で、屋根の印象が決まるので、軒先は外観の重要な要素になると言えるのです。この記事では、軒先の役割について解説するとともに、軒先で行うビジネスについてもご紹介します。

 

軒先の意味とは

まず、軒先という言葉に加え、「軒」を含むさまざまな言葉の概要、種類をご紹介します。

軒と軒先の違い

軒があることにより、日差しを遮りつつ、外壁や窓を雨から守ることができる

軒(読み方:のき)とは、「デジタル大辞泉」の解説によると「屋根の下端で、建物の壁面より外に突出している部分」という意味です。

軒があることにより、夏の熱い日差しを遮り、外壁や窓を雨から守ることができます。しかし、軒が出過ぎていると屋根の種類、施工方法によっては強風で飛ばされる危険性があるので注意が必要です。風上側の軒付近では建物を乗り越えて風が吹くため接近する風よりも風速が上がり、その強風によって屋根が上向きに引っ張られます。金属屋根などの軽い素材を使用している場合は、施工上の注意が必要です。

一方、軒先(読み方:のきさき)とは「デジタル大辞泉」の解説によると、「軒の突き出た先の部分」「家の前の軒に近い場所」という2つの意味があり、建築上では屋根の一番低い先端の部分のことです。屋根のなかでは人の目線に最も近い位置にあるので、軒先のデザインで屋根の印象が変わります。

 

軒樋の役割

屋根の縁の茶色い部分が軒樋


軒樋(読み方:のきどい)は雨樋の一部で、屋根からの雨垂れを防ぐために軒先に取り付ける部材です。屋根に降った雨水が雨垂れとなって落ちるとき、雨樋がないと直接地面に落ちて跳ね返り、建物の外壁を濡らしたり汚したりする可能性があります。

そのため軒樋を取り付けるのですが、軒樋は滞りなく排水されるように勾配を付けます。軒先は水平を強調させたい箇所なので、軒樋をどうおさめるかが重要なポイントです。

軒樋を見せたくないとき、軒樋を屋根のなかに組み込む「内樋」という方法があります。軒樋が見えないのでデザイン的にスッキリします。内樋を計画する場合は、屋根の面積に見合った容量(深さや幅)の軒樋を選択し、排水能力(短時間で排水できるくらいの勾配)が確保できる造りにすることが大切です。

注意点としては、雨漏りやオーバーフローといったトラブルにより、軒の裏側を汚したり、建物本体を傷めたりするといった問題が発生することもあるので、納め方は慎重に検討しましょう。内樋が壊れて漏水した場合に、漏れた雨水をすばやく外に誘導するルートを確保しておくことをおすすめします。

また、雨樋を設置しない場合は、軒先の出を深くするか、地面に雨受けの溝を用意するといった対策が必要です。

 

軒樋の種類

軒樋の形は、半円型、角型、特殊型の3種類に分けられます。半円型は、形状が単純なので安価です。角形は、半円型に比べて多くの水を流せるため、降水量の多い地域におすすめです。特殊型は、雪かきをする際に雨樋を傷付けないように特殊な形になっているもので、東北地方や北海道などで使用されます。複雑な形状をしているため、価格は高くなります。

半円型の軒樋
角型の軒樋
特殊型の軒樋

素材にも豊富な種類があります。塩化ビニル製は、雨や太陽光に弱く、変色や劣化してしまいますが、安価で軽く、組み立てやすい点がメリットです。非塩化ビニル系合成樹脂製は、塩化ビニル製より耐久性が高いものの、その分値段も高くなります。

ガルバリウム鋼板製は、錆びにくく耐久性がありますが、他の金属製と比べると安価になります。銅製は神社に使用されることが多く、耐久性も高いですが高価です。アルミニウム製は、雨水による錆がなく、太陽熱による膨張が少ないのが特徴。ステンレス製は、錆びないうえに耐久力があります。

金属素材は、熱による膨張収縮で季節によって動くため、継ぎ手がある場合はそこが破断して漏水が起こる可能性がある点には注意が必要です。

 

軒下とは


軒下(読み方:のきした)とは、「デジタル大辞泉」の解説によると、「軒の下のところ。屋根の下」という意味です。軒天井(読み方:のきてんじょう)とも呼ばれます。以下で詳しく見ていきましょう。

 

軒下の役割

軒下には以下のような役割があります。

・建物内部に雨が侵入するのを防ぐ
・日差しによる外壁の劣化を防ぐ
・屋根裏の換気(軒下の天井部分、軒天井には換気口が設置されている)
・デザイン性の向上

まず、軒下があることで、雨が屋根を伝って建物内部に浸水することを防げます。また、雨や日差しが外壁部分に当たることで劣化を早めてしまうことがありますが、軒下があることで保護が可能です。


さらに、軒の裏側に仕上げの板材を張った面である「軒天井」には換気口が設置されており、この換気口があることで屋根裏部分の換気をするという役目も果たしています。
加えて、軒下があることで建物のデザイン性が向上することもあります。

 

軒先と軒下の違い

軒下は軒の空側を上としたときの軒の下側

軒先と軒下の違いは、屋根のどの位置を指すかです。軒先は屋根の一番低いところで、地面と平行になっている場所を指し、軒下は軒の空側を上としたときの軒の下側となります。それぞれ、デザイン的にも機能的にも役割が違います。

また、軒がない住宅は、デザイン的に家をスッキリ見せることができるメリットがあります。しかし、デメリットもあります。屋根と壁の間の部分は屋根の施工や外壁施工、シーリング材の施工など、異業種の工程が錯綜するため、誤施工、不完全施工が起きやすくなります。そうなると、防水面で不安を抱えることになりかねません。

 

軒先を活用したビジネス・副業がある!?

自分の土地で使っていない僅かなスペースを駐車場としてシェアしたり、定期的に貸したりすることも

軒先ビジネスとは、使用していない空きスペースを持っており有効活用したい人と、そのスペースを使いたい人が契約を交わしてビジネスに利用するというもので、専用のマッチングサイトも出てきています。自分の土地で使っていない僅かなスペースを駐車場としてシェアしたり、定期的に貸したりすることにより、収入を得ることが可能です。

時間帯限定、期間限定で貸し出せるので、「この時間帯だけ貸せる」という人も利用できます。手数料がかかりますが、不労所得を得ることができるためおすすめです。使っていない軒先があるという方は、各サイトでサポート体制を確認し、始めてみてはいかがでしょうか。

 

参考
軒先株式会社
創業手帳:軒先株式会社 西浦明子氏インタビュー

 

まとめ

軒先という言葉は「軒の先端」「家の戸口の前」という2つの意味を持っています。デザイン面と機能面のどちらに対しても、重要な役割を担っているのです。軒下の役割としては、台風やゲリラ豪雨の際に雨漏りするリスクを減らすことが挙げられます。また、最近では軒先ビジネスというものがあり、軒先の空きスペースを有効活用できますので、使っていないスペースがあれば、試してみてはいかがでしょうか。

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