住民税は、国ではなく県や各市区町村に納める地方税です。税額は全国一律ではなく、自治体によって異なります。自分が支払っている地方税が高いのか安いのか、興味がある人もいるのではないでしょうか。今回は、住民税が高い市区町村をランキング形式で紹介します。住民税の仕組みも解説するので参考にしてください。
住民税とは
住民税とは、1月1日時点の住所地(住民票を登録している場所)に納める都道府県民税と市区町村民税のことです。個人に課税される個人住民税のほか、その土地に事業所を持つ法人に課税される法人住民税があります。
なお、この記事では個人住民税について解説します。
住民税の算出基準は前年1月から12月までの課税所得額です。6月頃に住民税決定通知書が届き、一括あるいは年4回に分けて納付します。
給与所得者は給与から天引きされて会社が納付するシステムになっているため、自分が納めている住民税の額を意識することは少ないかもしれません。
住民税の使いみち
わたしたちが納めた住民税は、その自治体の行政サービスの運用に使用されます。教育、福祉、消防、救急、環境整備など、日々の暮らしに関係するものに使用するため、住民が負担を分かち合うという考えに基づいています。つまり、地域社会で生活するための会費ともいえるものです。
集められた住民税の使いみちや金額などは決算報告として公開されています。各自治体のWebサイトや役所の情報コーナーで閲覧できますので、興味があれば確認してみてください。
住民税を支払う対象者とは
住民税の納税義務者は、該当する市区町村に住所がある個人です。別荘やセカンドハウスなど日常的に使用しない建物や、個人で使用する事務所などは対象外と思われがちですが、そうではありません。
滞在中はゴミ回収などのサービスを利用するため、同様に住民税が課されます。ただし、住所地と同額ではなく一部のみの負担です。
なお、基本的にはすべての住民が負担するものですが、前年の課税所得が一定金額以下の人などは、住民税が免除されます。
住民税の計算方法
住民税の内訳は所得割と均等割の2種類で、それぞれに目的や税率が異なります。住民税をより理解するために、所得割と均等割の違いについて解説します。
所得割
所得割は前年の所得金額により算出されるため、人によって支払う税額に差が生じます。住民税における課税標準額は、収入から保険料控除や配偶者控除などの所得控除を差し引いた額です。課税標準額に以下の標準税率を掛けたものが所得割額になります。
・都道府県民税:4%(政令指定都市は2%)
・市区町村民税:6%(政令指定都市は8%)
上記のとおり国が定めた標準税率があるものの、条例によって自治体が税率を変えることも認められているため、全国一律ではありません。
均等割
均等割は住民税の基本料金のようなもので、所得に関係なく一律の負担が定められています。ただし、所得が少ない人にも負担を強いるものではなく、条件にあてはまる場合には免除対象となります。
均等割も所得割と同じく自治体ごとに条例で決められるため、地域差があることに注意してください。ちなみに、以下の標準税率金額は2023年度まで適用される額です。
・都道府県民税:1,500円
・市区町村民税:3,500円
県によって住民税はほぼ変わらない
住民税を構成する所得割と均等割は、標準税率が定められているものの、条例によって各自治体で変更できることを説明しました。地域差があるとわかれば、なるべく住民税の安い自治体に住みたいと考える人もいるでしょう。
しかしながら、差があるといってもそれほど大きな金額ではありません。住民税が安くても物価が高く、かえって出費が増える可能性もあります。住民税のみを重視して住む場所を選ぶのは非効率かもしれません。
それでも実際にどのくらいの差があるのか気になるところです。次の段落では、住民税が高い自治体の具体的な内訳を紹介します。
市区町村別住民税ランキング
2021年5月現在、全国でもっとも住民税が高いのは「神奈川県横浜市」、次いで「兵庫県神戸市」「宮城県仙台市」となっています。なぜ標準よりも高いのか、それぞれの内訳を調べてみました。
高い住民税ランキング第一位「神奈川県横浜市」
神奈川県横浜市の住民税の内訳は次のとおりです。
横浜市は政令指定都市であるため、所得割の標準税率は県民税2%・市民税8%です。差額の0.025%は、神奈川県が水源環境の保全・再生のために導入した「水源環境保全税」によるものです。
均等割の県民税にも、同じく「水源環境保全税」の300円が上乗せされています。また、横浜市独自の「横浜みどり税」が均等割に900円上乗せされていることから、均等割額は標準よりも1,200円高くなっています。
高い住民税ランキング第二位「兵庫県神戸市」
兵庫県神戸市の住民税には、次のような税率が設けられています。
所得割は政令指定都市の標準税率ですが、均等割が標準と比べて1,200円高くなっています。市民税には「神戸モデル」の負担額400円が、県民税には「県民緑税」800円が加算されているためです。
「神戸モデル」とは神戸市独自の認知症対策で、認知症の早期受診を推進する診断助成制度と外出時の事故救済制度を組み合わせた取り組みです。「県民緑税」は、森林整備と都市緑化のために使われています。
高い住民税ランキング第二位「宮城県仙台市」
宮城県仙台市の住民税は次のとおりです。
仙台市では、神戸市と同じく所得割に標準税率との差はありません。ただし、県民税に「みやぎ環境税」が含まれているため、標準より1,200円アップとなっています。
「みやぎ環境税」とは2011年度から導入された超過課税です。これを財源にして、自然環境の保全、環境共生型社会構築のための人材育成、二酸化炭素排出量の削減など、環境問題に対応するさまざまな取り組みが行われています。
【市区町村別】一人あたりの住民税納税額ランキング
個人住民税のうち、所得割は課税所得税額に対して課税されます。ということは、平均所得税額のランキングが、一人あたりの住民税の納税額ランキングとほぼ同じとも考えられます。
そこで、内閣府の資料(2014年時点)を参考に一人あたりの平均課税所得額を調べたところ、次のような結果になりました。
一人あたりの平均課税所得額の上位はほとんど東京都が独占しています。東京都には官公庁や大手企業が集中していることから、高額所得者・高額納税者が多いのかもしれません。
東京23区の住民が区に支払う住民税を特別区民税と呼びます。
1位となった東京都港区の2020年における特別区税歳入総額はおよそ1,454億4,000万円で、そのうちの約53%が特別区民税によるものです。2位の千代田区は約646億2,600万円の27%、3位の渋谷区は約936億5,500万円の49.8%が、特別区民税からの歳入となっています。
まとめ
住民税は所得割と均等割で構成される地方税で、自治体によって条例で税率を決めることができます。大きな差はないものの、なかには標準税額よりも高い住民税が課せられる市区町村もあります。
2021年5月時点では、神奈川県横浜市、兵庫県神戸市、宮城県仙台市の順で住民税が高めであることがわかりました。
住民税が安いエリアに住みたいと考える人もいるかもしれませんが、住民税は日々の暮らしに関係する行政サービスの財源です。住民税が高い自治体は住みやすい街ともいえるでしょう。
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