育休中は収入が減ってしまいますが、その間の社会保険料は免除してもらうことができます。また、年収が減ると配偶者控除や配偶者特別控除を受けられるため、配偶者の所得税や住民税を減らすことが可能です。
これらは手続きや申請が必要ですが、申請等を忘れていた場合でもさかのぼって請求することができますので安心してください。この記事では、育休中の所得控除や社会保険料免除を申請する方法などを解説します。
育休中は配偶者控除や社会保険料の免除が受けられる
育休中は収入が減って家計が厳しくなることもありますが、配偶者控除や社会保険料の免除の申請をすることで、支払う税金や保険料の金額を減らすことが可能です。それでは、育休中の配偶者控除や社会保険料の免除について解説します。
配偶者控除の場合
育休中は従来よりも年収が減るため、育休中の給与額によっては、納税者が配偶者控除を受けることができます。
配偶者控除の条件は、「納税者の合計所得が1,000万円以下で、生計を一にしている配偶者の合計所得が103万以下」です。この条件を満たしていれば、13万円~38万円の配偶者控除を受けることができます。
また、年収が103万円を超えた場合でも、合計所得が201万6,000円未満であれば、配偶者特別控除を受けることができます。
育休中は会社からの給与ではなく、国から育児給付金を受け取る場合が多くなっていますが、この給付金は合計所得に含まれません。そのため、ほとんどの人が配偶者控除を受けることができます。
配偶者が配偶者控除を受けられる場合は、年末調整や確定申告で申請するようにしましょう。
育休中の税金や社会保険については、以下の記事も参考にしてください。
関連記事: 育休中は夫の扶養に入れる? 知っておきたい育休中の税金や社会保険のこと
社会保険料の場合
会社員の場合、育休中は健康保険料と厚生年金保険料が免除されます。免除の手続きは会社が行うため、会社員本人がすることは会社に育休を申請することのみです。
この育休中の社会保険料免除の申請は、産前産後休業前に行いますが、産前産後休業中や産休中にも手続きは可能です。
ただし、出産後は育児が忙しくなかなか手続きができないこともあります。できるだけ産休前に申請書を提出するようにしましょう。
申請を忘れてもさかのぼって請求可能
配偶者控除は申請や届け出が必要ですが、手続きを忘れてしまった場合でも、さかのぼって請求可能です。
それでは、育休中の配偶者控除と社会保険料免除の手続きについて、詳しく解説します。
配偶者控除の場合
会社員であれば、基本的には年末調整で所得税額の調整と確定が行われます。そのため、育休者の配偶者は年末調整時に、配偶者控除対象者がいることを所属企業に伝えておく必要があります。
一般的には年末調整書類を提出しますので、育休中の配偶者の年収を忘れずに記入するようにしましょう。配偶者の年収が控除の条件に当てはまっていれば、扶養控除や配偶者控除などの控除を反映した所得税額が決定されます。
もしも伝え漏れがあって配偶者控除が適用されなかった場合でも、5年以内に申告すれば、さかのぼって訂正可能です。
配偶者控除の申告を忘れると課税所得額が多くなるため、本来よりも多い所得税を納めることになります。さかのぼって訂正をした場合、請求内容が認められれば多く納税していた分が後日還付されます。
社会保険料の場合
社会保険料の免除手続きは、事業主が協会けんぽまたは健康保険組合と年金事務所に申告書を提出する仕組みです。そのため、よほどのことがない限り申告漏れとなることはありません。
まれに起こりがちなことは、育休延長の届出を忘れてしまうということです。こちらも届出の遅延に正当な理由があれば、さかのぼって免除を受けられます。
ただし、所得税の還付のように「5年以内に還付請求ができる」という正式な決まりはありません。そのため、育休延長を決めた場合はできるだけ早く会社に伝え、育休延長の手続きをするようにしましょう。
育休中の配偶者控除をさかのぼって請求する方法とは
育休中の配偶者控除は「5年以内であれば還付申告ができる」という国の決まりに従い、5年以内であればさかのぼって請求することが可能です。それでは、具体的に請求する方法について解説します。
配偶者控除の場合
配偶者控除を受けたい場合は、基本的には12月末に行われる年末調整で申告します。何らかの理由で年末調整に申告しなかった場合でも、翌年の2月~3月に確定申告をすることで配偶者控除を受けることが可能です。
確定申告の時期を過ぎてしまった場合は、「所得税及び復興特別所得税の更正の請求手続」を行うことで、納めすぎた税金を還付してもらうことが可能です。
手続きは、国税庁HPから「更正の請求書」をダウンロードし、必要事項を記入して該当の税務署に提出するだけです。
配偶者控除の手続きを忘れてしまった場合は、5年以内に更生の手続きを行いましょう。5年を過ぎると請求できなくなりますので、注意してください。
社会保険料の場合
先程も解説しましたが、会社員の場合は社会保険料に関する手続きは事業側が行います。そのため、申告漏れが起こることはほぼありえません。そこで、育休延長の届け出を忘れてしまったときの対処法を解説します。
もし、育休延長の届け出を忘れてしまった場合であっても、きちんとした理由があれば延長分の社会保険料が戻ってくる可能性があります。遅延理由書を添付し、育児休業等取得者申出書をなるべく早く出しましょう。
社会保険料の場合、育休中終了後にも届け出が必要になる可能性がある
社会保険料の免除を申請した場合、延長を含めて最初に届け出た通りの期間に育休が終了する場合は、何かを追加で申請する必要はありません。
ただし、当初の予定と違う時期に復帰をするときには、事業主が日本年金機構に所定の手続きをする必要があります。申告漏れが起こる可能性は低いですが、きちんと手続きができているか自身の社会保険料をチェックしてみてください。
また、育休復帰後は、時短勤務などで以前より給与が下がる場合があります。給与が下がったときには、それに合わせて社会保険料を引き下げるための申請を会社にお願いしましょう。
この申請は、被保険者の申し出が原則です。復帰後の給与が下がった場合でも、会社が自動的に手続きを行ってくれるわけではないので、自分で申し出て、給与額に見合った社会保険料を納めるようにしましょう。
まとめ
育休中の配偶者控除や配偶者特別控除は、5年以内であればさかのぼって請求することが可能です。「更正の請求」をすることで、納めすぎた税金を還付してもらうことができます。
ただし、社会保険料の免除の場合は、正当な理由がないとさかのぼって請求することができません。場合によっては、申請をしても認められないことがあるため注意が必要です。
育休中は子育てで忙しい時期ではありますが、配偶者控除や配偶者特別控除、社会保険料免除の申請は忘れずに行うようにしましょう。