仕事で疲れて帰ってきて自宅でくつろごうと思ったら、隣から響くドスン、ドスンといううるさい物音。自宅で過ごす時間を邪魔されるのは本当に嫌なものですよね。マンションやアパートで、上階や隣の部屋から騒音があったときはどのように対処すればいいのでしょうか。今回は、管理会社への相談も含めて対処法を解説していきます。
騒音問題はやっかいな近隣トラブル
人が生活していると、どうしてもある程度の生活音が発生してしまうもの。それだけに騒音問題は発生するととても厄介な問題です。騒音と一口に言っても、大きく分けて空気音と固体音の2種類があります。
空気音(空気伝搬音)
空気音(空気伝播音)とは、空気を振動させて伝わる音のこと。赤ちゃんの泣き声や大きな話し声、テレビ・ステレオの音、外を走る車の音などが該当します。木造アパートなど壁がモルタルや合板といった薄くて軽い素材でできている建物で、騒音問題に発展しやすい音です。
固体音(固体伝搬音)
固体音(固体伝播音)とは、力や振動が床・壁・天井といった建物構造に入り、振動として固体内を伝わった結果、音の発生源から離れた別の住戸で聞こえる音のこと。床に物を落とした音、人がドスンと床に飛び降りる音、スピーカーの底から床に響く重低音、ドスドス歩いたときに下階に伝わる音などが挙げられます。
固体音は空気音と異なり音の伝わり方が複雑なため、木造アパートだけでなく鉄筋コンクリート造の建物などでも発生する分、厄介で深刻な騒音問題に発展しやすいといえるでしょう。
うるさい隣人への対処法 分譲マンション(区分所有)編
実際に隣人や上下階の住人がうるさくて我慢できない、というときにはどのように対処すればいいのでしょうか。まずは、分譲マンションにおける対処法を解説していきます。
管理会社へ相談
騒音が我慢できないときは、最初に管理会社へ相談してみましょう。管理会社は管理組合から委託を受け、日々の清掃・点検、管理費の回収といった業務のほか、住民からの苦情や意見への対応も行っています。騒音について申し入れがあれば、エントランスに注意喚起の張り紙を出すなど対応してもらえるかもしれません。
管理組合へ相談
管理会社に相談しても事態が好転しない場合、次に管理組合へ相談します。管理会社はあくまでも管理組合から委託を受けているだけなので、住民同士の仲裁までは権限がおよびません。分譲マンションは、区分所有法に基づく区分所有者である住民がマンション全体を共同運営するのが原則。マンション内で発生した問題は、住民で構成される管理組合を通して解決を図るのが基本なのです。
当事者同士で話し合い
いきなり騒音を出している隣人に接触するのはトラブルの元ですが、管理会社・管理組合を通じた対処によって機が熟したと判断できれば、当事者同士で話し合いをして解決を図りましょう。問題となる隣人に悪気がない場合、申し訳ないと感じてすぐに改善してくれる可能性もありますし、お互いに歩み寄った解決策を取り決められるかもしれません。
自治体へ相談
当事者同士での話し合いが不調に終わった場合、多くの市区町村には無料で相談できる公害苦情相談窓口が設けられています。公害苦情相談窓口は市区町村の環境課・生活環境課・公害対策課などに設置されており、電話やメールで問い合わせることも可能です。騒音被害の実情がわかる証拠を提示すると、自治体の基準や条例に基づいて問題の住民へ指導やアドバイスを行ってくれる可能性があります。
弁護士に相談
上記いずれの方法でも解決できない場合、弁護士に相談して法的手段での解決を図ることになります。具体的には弁護士会が運営している紛争解決センターでの仲裁申し立て、裁判所への民事調停申し立てといった手段を取ることで、第三者を通した話し合いによる解決を目指すのです。それでも不調に終わるようであれば、損害賠償請求訴訟や騒音の差止請求訴訟が想定されます。
弁護士は相談するだけでも費用がかかるため、自治体などが主催する無料の法律相談会や法テラス(日本司法支援センター)への無料相談から始めるのがおすすめです。
うるさい隣人への対処法 賃貸アパート・賃貸マンション編
続いては、賃貸アパート・賃貸マンションにおける騒音問題の対処法を解説していきます。
管理会社へ相談
賃貸アパート・賃貸マンションの場合も、まずは管理会社へ相談するのが基本。分譲マンションと同じくエントランスに注意喚起の張り紙を出す、住民向けに注意喚起文を投函するといった対応を行ってもらいます。基本的に入居者は管理会社を通してオーナーと相談・交渉するため、話し合いが不調の場合でも管理会社と交渉し続けることになります。管理会社を置かないオーナー自主管理物件であれば、オーナーへ直接相談すればOKです。
賃貸物件と分譲マンションの違いは、物件オーナーが「賃借人に建物を使用収益させる義務」を負う点です。使用収益させる義務とは、賃借人が住まいとして利用するという目的を達成できるようにする義務のこと。住民が我慢できないほどの騒音に悩まされる状態は使用収益させる義務に違反していると考えられることから、オーナーから騒音を発生している住人へ働きかけることになるのです。
うるさい隣人がすぐ退去するかというと…
賃貸物件の場合、騒音を出し続けて周辺住民に迷惑をかけている人に対し、オーナーは賃貸借契約を解除することが可能です。賃貸借契約書には禁止事項が設けられていて、騒音の原因となる大きな音の発生を禁じている場合も多く、契約違反ということで契約解除を言い渡すことはできます。
ただし、民法・借地借家法によって賃借人の立場は守られています。契約解除となれば賃借人は住む場所を失うことになるため、よほどの理由がない限り、賃貸人(オーナー)から契約を解除することはできないようになっているのです。
騒音のケースでも「うるさくて他の住民に迷惑をかけているから」という理由だけで、契約解除するのは難しいといわざるを得ません。警察や自治体からの再三の指導にもかかわらず解決されない、騒音が原因で他住民の契約が解除になるといった事態により、賃貸人・賃借人間で「信頼関係の破壊」があったと認められない限り、すぐには契約解除できない可能性があります。
「実力行使」は問題をこじらせるだけ
騒音がうるさいとつい感情的になってしまうこともあるでしょう。なかには、騒音がしたときに壁や天井を叩く、隣人の部屋前まで行ってインターフォンを連打するなど、「実力行使」に出てしまう人もいます。こうした実力行使はお互いを感情的にしてしまい、問題解決を遠くしてしまうリスクもあるため避けたいところです。実力行使が行き過ぎると、騒音に悩まされているはずの自分側が迷惑入居者になってしまいかねません。
最悪の場合、感情的になった住民による暴力事件や刑事事件にまで発展するケースもあります。実際、騒音トラブルが発端となった痛ましい事件も起きているのです。騒音に悩まされていても決して感情的にならず、まずは管理会社に相談するようにしましょう。
証拠収集をしておく
騒音問題の難しいところは、音の感じ方が人それぞれであるという点です。騒音があるという事実をしっかりと伝えるためにも、「いつ」「どの辺りから」「どんな音が」「どんな頻度で」聞こえてくるのかを記録しておく必要があります。記録した内容は、その後の手続きで重要な証拠となるでしょう。
記録の方法としては、騒音発生時にスマートフォンなどで録音するのがおすすめ。騒音計で音の大きさを測っておくとより信頼性の高い証拠になります。騒音計は自治体で無料貸出している場合もあるので、住んでいる自治体の情報を確認してみましょう。
まとめ
平穏に暮らしているなかで、誰も入居者間トラブルには巻き込まれたくないもの。それでも、ふとした原因から発生してしまうのが騒音トラブルです。騒音が気になるからといって感情的になれば、隣人とのさらなるトラブルを誘発しかねません。実際に騒音トラブルが起こってしまったときには、今回解説した内容を参考にして冷静な対処を心がけましょう。