三和土は「たたき」と読み、昔の日本の住宅で用いられてきた土間の素材の一つです。現在では三和土が土間の仕上げ材として使われることは減ってきましたが、コンクリートやモルタルの土間もたたきと呼ばれることがあります。この記事ではたたきの素材の種類やメリット・デメリットについて解説します。
本来の土間・三和土
仕上げ材として使われる本来の三和土は赤土や砂利などの基材に、消石灰やにがりを混ぜて練り、塗り固めた素材です。昔の日本家屋では、土間に土を使っており、その土をきれいに仕上げるために使われるようになったといわれています。
現代の日本建築では、仕上げ材としての三和土が使われることは多くありません。三和土は土を仕上げ材として使うため、経年劣化ででこぼこしやすく、費用面ではほかの建材の方が安く抑えられることが主な原因です。そのため三和土の工事ができる職人も徐々に少なくなってきました。
土間ではコンクリートやモルタル、タイルなどの床材がよく採用されています。しかし、三和土には土の独特な風合いがあり、伝統的な工事方法にこだわりたい場合は、三和土を採用することも選択肢に入れたいところです。
現代のたたきの種類
現代では三和土が使われることは少なく、ほかの素材で玄関土間を仕上げるケースがほとんどです。これらで仕上げた場合も「たたき」と呼ばれています。ここでは現代のたたきの種類について解説します。
コンクリート
コンクリートは、セメントと砂、砂利を混ぜたものです。仕上げ材の中でも耐久性が高く、手入れも最小限で済ませられます。コンクリートは他の素材と比べると、主張が少なく、シンプルな仕上がりになります。
モルタル
モルタルはセメントと砂を混ぜ合わせたものです。コンクリート素材はほぼ同じですが、砂利が入っていない点が異なります。強度はコンクリートより劣りますが、施工性はモルタルの方が優秀です。
土間の素材の中でも安価なため、多くの住宅で採用されています。見た目の印象はコンクリートとあまり変わりませんが、よりなめらかな仕上がりになります。
玉砂利洗い出し
玉砂利洗い出しは、小さく丸い砂利とモルタルを混ぜて塗った仕上げ方です。豆くらいの大きさの玉砂利を浮き出させるため、塗った後にスポンジなどで表面を水洗いして仕上げます。和風な家に採用されることが多いですが、いくつかの色があるため、洋風のデザインにもマッチします。
タイル
タイルは素材のバリエーションが多く、色やデザインが豊富です。そのため、空間に合わせたデザインを選択できます。また、貼り方を変えることで、同じデザインでも見せ方を工夫できます。柄や大きさ、価格がさまざまなので、選択の自由度が高い点がメリットです。
天然石
天然石は、御影石や大理石などがあります。これらの素材は石ごとに色合いが異なるため、同じ素材でも配色や配置で見え方が変わります。住宅の床材として使われる頻度は高くはないため、他の家にはない印象を与えられるでしょう。和風・洋風雰囲気を選ばず、採用できます。
色柄や仕上げ方でも見え方が異なるため、こだわりを反映させやすくなっています。ただし、石によってはシミができたり、酸で傷んだりする可能性があるため、素材ごとの特徴を把握することが大切です。
たたきの素材それぞれのメリット・デメリット
たたきの素材は見た目以外にも特徴がいくつかあり、それらの特性に合わせて選ぶ必要があります。ここではたたきの素材のメリットとデメリットについて解説します。
コンクリート・モルタル
コンクリートやモルタルを使用するメリットは、建材の中でも安価であること、手入れの手軽さ、仕上がりがシンプルであることです。
コスト面では一番安く抑えられる方法のため、価格を重視する場合に選択肢になります。また、凹凸がない状態に仕上がるため、掃除も手間がかかりません。仕上がりがシンプルで、全体的にデザインをスッキリさせたい場合や、ほかに引き立たせたい家具やインテリアがある場合にもおすすめです。
デメリットとしては、ひび割れのしやすさがあげられます。素材の性質上乾燥によって収縮し、ひび割れが発生する可能性があります。
また、デザインが簡素なため、場合によっては安っぽく見られる可能性がある点に注意が必要です。デザイン上、意図的にシンプルな空間を演出するなど、工夫する必要があります。
玉砂利洗い出し
玉砂利洗い出しのメリットは、コストとデザイン性を両立している点です。玉砂利はモルタルベースに玉砂利を加えているため、安い玉砂利を使えばコストがモルタルと大きくは変わらず、玉砂利の色を変えることで、個性が出せます。たとえば、和風の住宅であれば、黒色の砂利と玉砂利を合わせることで、周囲の雰囲気を壊さずに仕上げられます。
また、砂利の凹凸があるため、雨の日や寒い日でも滑りにくい点もメリットです。特に、高齢の家族がいる場合は安心感があります。
玉砂利洗い出しは玉砂利を混ぜたモルタルを塗ってから、水で洗い出して仕上げます。玉砂利はモルタルにくっついているだけで接着されているわけではありません。そのため、経年劣化によって、剥がれる可能性があります。また、凹凸があるため、掃除をするとき掃除のしにくさを感じることもあるでしょう。
タイル
タイルは、デザイン性が高いため、個性を演出できる点がメリットです。素材や色、柄のバリエーションが多く、細かい要望にも対応できます。
タイルと目地の間は凹凸ができますが、撥水性のタイルを選べば汚れが付着しにくく掃除もしやすいでしょう。また、大きいサイズのタイルを選ぶと、高級感のある仕上がりになります。
デメリットとしては素材や色によって、汚れやすさや滑りやすさの問題が発生する点です。素材によっては表面がツルツルのため、滑りやすくなります。雨の日などは滑って転ぶと、硬い素材のためケガをする可能性もあります。
また、タイルの中には汚れが目立ちやすい色や素材もあるため、施工前に汚れやすさは確認しておきましょう。
天然石
天然石は色合いや柄にいくつかの選択肢があり、汚れの目立ちにくい素材もある点がメリットです。大理石や御影石などは汚れが目立ちにくく、高級感がある仕上がりになります。ほかにはない高級な仕上がりを求める場合に特におすすめです。
天然石のデメリットは、扱いのデリケートさです。自然素材のため、酸やアルカリに弱い素材もあるため、素材に合わせたメンテナンスをする必要があります。
仕上げ方をツルツルにし、凹凸をなくすとタイルと同様、雨で滑りやすくなることもあるため、注意しましょう。
まとめ
玄関土間は、使う素材によって、大きく印象が変わります。家に訪ねてきた人が最初に目にする部分であり、予算だけではなく、家全体のイメージや機能性を踏まえた素材選びが大切です。上記の点を参考に、自分好みの玄関土間を演出してみてはいかがでしょう。