住民の約8割が「暮らしやすい」 足立区が今、注目の街になった理由

不動産経済研究所発表の「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2021年4月」によれば、2021年4月度の首都圏新築マンションの平均価格は7,764万円。都心の高額物件の供給が増えたことで、前年同月と比較して1,549万円もアップ。予算内で住宅を選ぶことが難しくなりつつあります。

このような状況下で筆者がおすすめしたいのが、値ごろ感のある足立区の住宅。2021年の公示地価における足立区の住宅地平均価格は31万4,100円/平方メートルで、東京23区平均の63万1,400円/平方メートルの半値以下と、東京23区内で最も低い地価水準です。また、足立区政に関する世論調査では、暮らしやすいと感じている人が約8割に。今回は、足立区の魅力とおすすめの街を紹介します。

「足立区に誇りを持てる」と感じる人が53.4パーセントに大幅にアップ

足立区は、東京23区の最北端に位置する行政区です。北区、荒川区、墨田区、葛飾区に隣接。東西は11.10キロメートル、南北は8.79キロメートルもあり、総面積は53.25平方キロメートルで大田区、世田谷区に次いで第3位。東京23区の約9パーセントにあたる広大な面積があります。

足立区の位置 出典:足立区ホームページ

また、「東京都の人口(推計)」の概要(令和3年4月1日現在)によれば、足立区の人口は、東京都で5番目に多い68万3,257人となっています。

この足立区ですが、実は「暮らしやすい」と感じている人の割合が近年高くなっています。令和2年8月に実施された「足立区政に関する世論調査」によれば、地域の暮らしやすさについて「暮らしやすい」「どちらかといえば暮らしやすい」と回答した人が合計82.4パーセント。一方で、「どちらかといえば暮らしにくい」が14.2パーセント、「暮らしにくい」が1.8パーセントで合計16.0パーセント。暮らしやすいと感じる人が大半を占めています。同調査によれば、定住意向も高く「ずっと住み続けたい」「当分は住み続けたい」と回答した人が78.4パーセントに上ります。

※出典:「足立区政に関する世論調査」暮らしやすさについて
※出典:「足立区政に関する世論調査」定住意向
※出典:「足立区政に関する世論調査」足立区について

また、足立区について「愛着を持っている」と答えた人が75.5パーセント(※)にも上り、「誇りをもっている」という人が53.4パーセント(※)に。2010年の調査では、「誇りをもっている」と答えた人は29.8パーセント(※)。この10年で大きく意識が変化しています。
※いずれも「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えた人の合算数値

新路線の開業で交通網が充実、新キャンパスの開設も

意識の変化には、様々な要因が挙げられます。足立区では、「美しい街は安全なまち」を合言葉に「ビューティフル・ウィンドウズ運動」を2008年から実施。防犯パトロールや地域防犯ボランティアの見回り活動などを地域住民と警察署などが連携して取り組んでいます。2020年の刑法犯認知件数は、戦後最小に。2001年の1万6,843件から3,693件までピーク時から8割近くまで減少しています。

地元の人に話を聞くと、住みやすくなったという意見が数多く上がります。例えば、交通網の整備。かつての足立区は、区の中心を走る鉄道が東武伊勢崎線のみでした。多くがバス便か自転車利用のエリアでしたが、この20年で大きく交通網が整備されました。

2005年につくばエクスプレス線が開業すると、「青井」、「六町」といった新駅が誕生。2008年には、「日暮里」と結ばれる新交通システム「日暮里・舎人ライナー」が尾久橋通り沿いに開業し、鉄道アクセスがスムーズな地域が一気に広がりました。また、東武伊勢崎線も2003年から東京メトロ半蔵門線、東急田園都市線の相互運行がスタートし、利便性が大きく高まりました。

日暮里・舎人ライナーと舎人公園の桜

現在、東武伊勢崎線「竹ノ塚」駅で「竹ノ塚駅付近連続立体交差化事業」が進行中。踏切で遮断された道路の往来がスムーズになり、街の利便性も高まりそうです。
また、2019年には、東京メトロ千代田線「北綾瀬」駅の直通運転がスタート。千代田線の本線からの10両の列車が直通で乗り入れられるように、ホームを延伸する工事が実施されたほか、環状七号線の北側にも出入口を増設し、道路をまたぐ連絡通路を設け歩道の混雑緩和も実現しています。東京都心エリアとの距離がもともと近かったこともあり、鉄道網の整備は足立区の交通利便性を一気にアップさせました。

さらに足立区の発展に寄与しているのが、大学などの教育関連施設の充実です。2006年に開設された東京藝術大学千住キャンパスをはじめ、2007年に東京未来大学が開学し、2010年には帝京科学大学、2012年には東京電機大学が新キャンパスを開設。「北千住」駅周辺エリアに多くのキャンパスが誕生しました。さらに、2021年4月には文教大学の「東京あだちキャンパス」が足立区花畑に開設。足立区の教育関連施設の充実ぶりは、東京都のなかでも目覚ましいものがあります。

東京電機大学の東京千住キャンパス

足立区では、1993年に開設されている放送大学を含む区内6大学と年間200近い大学連携事業を展開しています。そのなかには、小・中学生を対象とした電子工作教室やワークショップなどもあり、子どもたちの知的好奇心を育んでいます。また、区内の図書館数は15館あり、東京23区内では3番目の多さになっています。

生活インフラとしては、2021年度には、区内初となる大学病院「東京女子医科大学東医療センター」が日暮里・舎人ライナー「江北」駅近くに開設予定。医療体制の充実も図られることになります。

「交通の便が良い」「買い物が便利」の声多数、公園や景観も魅力の上位に

「目指すまちづくりの実現に向けた方針図」※出典:足立区基本計画

足立区の住拠点としての魅力として多くの人が挙げているのが、通勤や通学などの「交通の便」です。前述の「足立区政に関する世論調査」では、68.6パーセントの人が「通勤や通学などの交通の便が良い」(※)と答えています。

日暮里・舎人ライナーを除く足立区内の鉄道沿線は、「北千住」駅で交わります。「北千住」駅には、東京メトロ千代田線、東京メトロ日比谷線、つくばエクスプレス線、常磐線、東武伊勢崎線の5路線が乗入れを実施。「北千住」駅からは「上野」駅や「秋葉原」駅へ10分程度でアクセスでき、都心エリアへの通勤・通学に便利です。

北千住西口駅前のルミネ北千住と北千住マルイ

さらに評価されているのが、買い物のしやすさ。前述の「足立区政に関する世論調査」では、「普段の買い物が便利である」と回答している人が76.6パーセント(※)。買い物のしやすさを地域の魅力として挙げている人が多くなっています。
※「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えた人の合算数値

足立区内には、環状7号線や国道4号線、尾久橋通りなどの幹線道路沿いに商業施設が点在します。また、千住宿を起点に発展した歴史ある街であり、スーパーや商店など地域密着型のお店も豊富にあります。「北千住」駅には、「ルミネ北千住」や「北千住マルイ」などの大型商業施設が立地。大規模な再開発が行われた「西新井」駅には、大型商業施設「アリオ西新井」が2006年にオープンしています。

舎人公園
足立の花火

また、公園や自然が充実していることも足立区の魅力です。区立の公園面積は東京23区内第1位(平成29年4月1日現在)。街中を歩くと子どもを遊ばせられる公園がたくさんあることに気づきます。また、東京都建設局「公園調書」(令和2年4月1日現在)によると、舎人公園は都立公園としては東京23区内で水元公園(葛飾区)、葛西臨海公園(江戸川区)に次いで3番目、63万平方メートル超の広さを誇ります。

また、足立区には田んぼや畑のある都市農業公園や野球場やテニスコートもある東綾瀬公園など様々な公園があり、荒川や綾瀬川などの自然も身近にあります。例年、荒川で行われる「足立の花火」は、1万発以上の花火が打ち上げられ、季節の風物詩となっています(2021年は開催中止)。

商業利便性の高い「北千住」、景観の美しい「西新井」、通勤便利な「綾瀬」

ここからは足立区内の注目の街を3つ紹介します。

注目の街1:にぎわいが魅力の「北千住」
まず1つ目が「北千住」駅です。日光街道沿いの街として古くから発展した街で、駅周辺のにぎわいはよく知られるところ。JR東日本だけでも2019年度の1日平均乗客数は22万1,634人に上り、JR東日本エリア内の1日平均の乗車人員ランキングで10位となっています(JR東日本調べ)。

駅周辺には、千住本町商店街振興組合、北千住駅西口美観商店街振興組合、千住旭町商店街振興組合など複数の商店街があります。多彩な物販店や飲食店などがあり、買い物や食事に便利。ルミネ北千住や北千住マルイにも多くのお店が入っています。

北千住西口駅前の商店街

また、北千住マルイの入る千住ミルディスⅠ番館には、千住区民事務所と劇場やギャラリー、アトリエ、音楽室などからなる「THEATRE1010」が立地するなど、公益施設も整っています。

かつては、住宅選びの穴場とも言われた「北千住」ですが、交通利便性と生活利便性の高さから5年ほど前から注目度が上昇。新築マンションの価格水準も駅近なら坪単価300万円を上回る水準まで、大きく上昇しています。また、中古マンションも比較的高単価で取り引きされています。
現在、北千住周辺で値ごろ感があるのは、「北千住」駅にも歩いて行ける京成本線の「京成関屋」駅と「千住大橋」駅周辺。「日暮里」駅や「京成上野」駅へのアクセスが良好で、中古マンションなら3LDKタイプが4,000万円台で購入可能です。

注目の街2:新旧の街の姿を楽しめる「西新井」
2つ目の注目の街は、「西新井」です。「北千住」駅から準急利用で1駅の「西新井」駅は、かつての工場跡地が再開発によって公園や商業施設、病院、住宅が一体で整備されました。なかでも「西新井ヌーヴェル」と名づけられた約11.6ヘクタールの街区は、広々とした西新井さかえ公園をはじめ、西新井大師への参道となっているさくら参道など、美しい景観を形成。すでにマンション開発は完了していますが、賃貸物件も中古物件も人気です。街区内の大型商業施設「アリオ西新井」には、100店舗以上の店舗や映画館も入っています。

西新井ヌーヴェル内の小径

また、「西新井」駅から東武大師線で1駅の「西新井大師」駅には、厄災消除の祈願寺として創建された西新井大師(正式名は、五智山遍照院總持寺)があります。縁日には、露店商も出店し、地元の人でにぎわいます。周辺エリアは、特別景観指定地区に指定されており、歴史的な風情のある景観が保全されています。こうした、新旧の街の姿を楽しめるところが「西新井」駅で暮らすメリットでしょう。

西新井大師

「西新井」駅周辺では、3LDKタイプのマンションが3,000万円台から売出しがあります。また、足立区全般に言えることですが、戸建ての供給も多く、新築戸建てが3,000万円台でも検討可能です。「西新井」駅の東口には、遊びながら学べる、体験型複合施設「ギャラクシティ」があります。無料で遊べるこども未来創造館やプラネタリウム(有料)も。子育て層にはおすすめの街です。

東綾瀬公園

注目の街3:利便性と自然環境のバランスが良好な「綾瀬」
3つ目の注目の街は、「綾瀬」です。「綾瀬」駅は、「北千住」駅の隣駅。東京メトロ千代田線を使って「大手町」駅や「日比谷」駅まで短時間でアクセス可能。駅前には「イトーヨーカドー綾瀬店」など商業施設が充実しています。東綾瀬公園など駅周辺に公園が多いことも魅力で、公園内には東京武道館などのスポーツ施設もあります。

「綾瀬」駅の住宅事情は、交通利便性が高いこともあり、駅近い場所はこの2、3年でマンション価格が上昇しています。一方、千代田線の直通運転が始まった「北綾瀬」駅は、「綾瀬」駅よりは価格も抑えられ3LDKタイプが4,000万円台で購入可能です。通勤利便性と生活利便性、自然環境をバランスよく求める家族に「綾瀬」は暮らしやすい街です。

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足立区に暮らす際に気を付けたい、水害リスク

都心アクセスが良好で、価格もリーズナブルな足立区ですが、留意したい点は災害リスクです。その一つが水害リスク。足立区は、荒川、隅田川、綾瀬川、中川といった多くの河川が区内外を流れています。公開されている足立区洪水ハザードマップによれば、荒川が氾濫した場合、5メートル以上の最大浸水深の場所もあるので注意が必要です。

また、歴史ある街だけに老朽化した木造家屋が密集した地域があり、地震の際には倒壊リスクや火災のリスクが高い場所も多く残っています。区のアンケートでも、災害や気象に関する情報は関心の高い項目となっています。区では、足立区洪水ハザードマップや緊急避難建物の一覧を公開しているほか、TwitterやLINEなどで緊急時に随時情報を発信しています。住まいを選ぶ際には、道路状況や周囲の建物を確認して、災害リスクをよく確認することをおすすめします。

都市農業公園とチューリップ畑

とはいえ、自然環境が充実して生活利便性も高く、子育て環境も良好な足立区は、子どもが小さいファミリー層には魅力です。足立区では、妊娠中から子育て期まで切れ目ない支援を実施する「あだちスマイルママ&エンジェルプロジェクト(ASMAP)」を用意。妊娠届提出時のアンケートなどから、母子保健コーディネーターなどが個別のケアプランを作成、必要な制度やサービスの案内をしています。

都心近郊エリアの住宅価格が上昇するなかで、通勤利便性と生活利便性を両立する住まいをリーズナブルな価格で実現できる足立区。今後、注目度がさらに増すかもしれませんね。

(最終更新日:2024.04.19)
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