「気候」で家づくりする時代に? 省エネ・低燃費住宅を検討するときは気候風土、立地を活かす

家の性能を高めて冷暖房に頼り過ぎない快適な暮らしを実現し、家庭からの二酸化炭素の排出を削減しようという発想で国が推進している省エネ住宅。光熱費を抑えられ、地球環境はもちろん家計にも優しい住宅です。今回は、省エネ効果をより高めるための家づくりについて、岡山県岡山市にある『近藤建設興業』の近藤直岐さんにお話を伺いました。

省エネ住宅とは?

省エネ住宅とは、家そのものの性能を高め、電気やガスなどのエネルギー消費量を少なくした家のこと。省エネ住宅を実現するには、壁や屋根の断熱材を強化した高断熱住宅にすることが基本ですが、建築地の気候や風土、立地などを考慮することで、その効果をより高めることができるそうです。

家の中には、照明や家電、調理器具、給湯設備など、数多くの設備機器が存在します。それらの中でも、多くのエネルギー消費量を占めているのが冷暖房設備。年間を通じて快適な暮らしをするうえで空調は必要不可欠ですが、設計段階からさまざまな工夫を凝らすことで、冷暖房機に頼り過ぎることなく冬暖かく、夏涼しい”、快適かつ低光熱費な家づくりが実現できると言います。

気候風土、立地を活かすとは?

日本は南北に長く、沖縄と北海道では気候が全く異なります。「それぞれの土地の気候風土を無視して、画一的な住宅を建ててしまっては家本来の性能を存分に発揮することはない」と近藤さん。「建築地の寒さや暑さ、日射量、立地を十分に考慮することはとても重要」と続けます。

部屋の向き、窓のサイズが、住まいの省エネ性能を高めるカギ

最大のポイントは建物配置

家づくりにおける最大のポイントは建物配置だと近藤さんは考えています。

「太陽の軌道を理解し、南に正対した配置とすることが最も重要」のとこと。次に窓。どの方向にどのようなサイズで、どんな性能の窓を取り付けるかによって、家の快適性は大きく左右されるそうです。

「最小限の暖房で冬を快適に過ごすためには、南に大きな窓を配置し、存分に太陽熱を取り入れることが基本です。同時に、明かりも十分に取り込めるので照明器具を使う時間も削減できます。夏場に備えて、南に取り付ける窓には遮蔽部材(日よけ)を使用することもポイントです。そうすることで、夏場の冷房使用を抑えることができるでしょう」。

冬を基準に家づくりを考える

四季によって日照時間や気温の差が大きい日本の場合、沖縄以外の場所では冬を基準にした家づくりをすることも年間のエネルギー消費量を減らすためには重要なのだそう。

「太陽は東から昇って、西に沈むというのが常識ですが、実際にそうなのは年間2日だけ。太陽の高度が低くなる冬場は南から昇って南に沈んでいます。特に冬至の時期には東西から南にそれぞれ30度の範囲内しか太陽は当たりません。そのことを念頭に置いて、家の向きや間取りを決めることがとても大切です」と近藤さん。

「太陽を味方に付けてその熱をうまく利用するためには、先にも述べたように、窓を南に取り付けることに加えて、南側を凹凸のない平たんな間取りにするのもポイントです。極端な凹凸があると、建物自体の影によって光が遮られてしまうからです」。

立地をいかした「創エネ」

さらに近藤さんは「日照時間が長い地域や、年間降雨量の少ない地域では、太陽光や地熱を利用してエネルギーを創出する“創エネ”も一案」と続けます。太陽光発電や蓄電池を設置し、家庭内消費するエネルギーを住宅自体から作り出し賄うという発想で、かなりの低光熱費が実現できるといいます。

もちろん、設備費用がかかるため、初期の建築コストは高くなりますが、将来発生する光熱費が削減されれば家計にゆとりが生まれる可能性があります。「創エネ」に関しては、地球温暖化対策の一環として国からの補助金を受けられるケースもあり、検討してみる価値がありそうです。

太陽光パネルを設置して“創電”も視野に

その土地の気候風土を熟知した住宅会社をパートナーに

これから先、標準住宅になりそうな「省エネ・低燃費住宅」。建築地の気候や立地、周辺環境などいろいろな要素をバランス良く考慮することが必要です。そのためには、その土地の気候風土を熟知した地元の工務店に依頼するなど、住宅会社選びも大切な要素になってくるといえるでしょう。

【取材協力】
株式会社近藤建設興業代表取締役 近藤直岐さん

岡山市北区に拠点を構える『株式会社近藤建設興業』。1971年(昭和46)の創業以来、変わらぬ社名を貫いているのは、時代に流されない、普遍的な住まいづくりへの信念の表れ。「風土を知り、自然に習い、知恵を活かして凛と住まう」をモットーに、数多くの注文住宅を手掛けている。

株式会社近藤建設興業
岡山県岡山市北区津島京町1-1-12
電話番号086-255-0221
ホームページ/近藤建設興業 | 風土を知り 自然に習い 凛と住まう。 

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