ハウスメーカーや工務店の広告でよく目にする高断熱住宅。光熱費も抑えられそうで魅力的な反面、建築費が高そうなイメージがありますよね。実際のところはどうなのでしょう? そこで今回は高断熱住宅のコスト面に着目。イニシャルコストやランニングコストについて、岡山県岡山市の『近藤建設興業』の近藤直岐さんにお話を伺いました。
高断熱住宅の実現に必要な設備とは?
高断熱住宅とは、壁や床、天井などに断熱材を使って高い断熱性を持たせた住宅のこと。室内の空気が外に出ていくのを防ぐこと(高気密)で“夏涼しく冬暖かい”、一年を通して快適な住宅の実現を目指したものです。
・断熱材
高断熱住宅に欠かせないのが断熱材です。断熱材はおおまかに、グラスウールやロックウールなどの繊維系と、硬質ウレタンフォームやポリスチレンフォームなどの発泡プラスチック系の2つに分類されます。「繊維系」は繊維の細かな隙間に空気を閉じ込めることで断熱効果を発揮。発泡プラスチック系は無数の気泡の中に空気を閉じ込めることで断熱効果が得られる構造になっています。それぞれ特徴やコストの違いはありますが、高断熱住宅の実現という点から見ると、断熱材そのものの性能よりも、施工する建築会社の知識や技術力によって大きく差が出るといえそうです。
・断熱窓
次に欠かせないのが断熱窓です。断熱サッシや高機能ガラスなどを用いることで、クーラーや暖房器具によって調節された快適な室温を保つ効果が期待できます。「ガラスが2重、3重構造になったものなどがありますが、建物の方角や窓の大きさ、日射熱の取得、遮蔽の種類によって使い分けることでより高い効果を得られます」と近藤さん。
ですが、日本では高断熱住宅に関しての明確な基準は設けられていないうえ、国の指標の数値だけでは必ずしも快適性は得られないため、近藤さんは冬に暖房していない状態で室温18度以下にならない家であることが高断熱住宅の条件と考えています。
建築費用はやっぱり高い?
「仮に、同じ場所に同じ間取りで高断熱住宅とそうでない住宅を新築した場合、どうしても高断熱住宅のほうが建築費用が高くなることは否めません」と近藤さん。コストアップの要因として、“断熱材のコストや施工手間費がアップすること” “サッシ価格の上昇”といったことが挙げられるそうです。
“生涯光熱費”に着目
コストアップと聞くと、「高断熱住宅はやはり高い。そんなに違うなら一般的な住宅で十分」と思う方も少なくないかもしれません。ここで着目したいのが入居後のランニングコスト、光熱費です。「外気温に左右されないのが特徴の高断熱住宅は、室内の温度ムラが少なく、必要以上に暖房の温度を上げる必要も、冷房温度を下げる必要もありません。つまり光熱費が格段に抑えられるということです。家は決して“建てたら終わり”ではありません。住み始めてからの光熱費(ランニングコスト)の差に目を向けることも必要不可欠です」と近藤さん。
長いスパンで経費を算出し、比較検討を
なぜなら、住宅ローンは長くても35年程度で終わりますが、冷暖房にかかる光熱費は生涯にわたって発生するものだからだそう。「もし仮に30歳で家を建てたとしましょう。その場合、日本人の平均寿命を参考にすると、およそ50〜60年住むこととなり、ローンの返済期間よりも圧倒的に長いのです。月々の光熱費を思い浮かべてみると、その間に発生する光熱費は相当な額になることは容易に想像できるはず」と近藤さんは続けます。「初期費用+生涯光熱費=建築費用」と捉えて長期的なスパンで計算すると、たとえイニシャルコストが高くなったとしても、月々の光熱費が抑えられる高断熱住宅を建てた方が賢明といえそうです。
まとめ
高断熱住宅を考える際、初期の建築費用だけに気を取られがちですが、将来的な光熱費の負担を考慮すると、必ずしも高いとはいえないようです。機械設備や内装などにかける予算を多少削ることになったとしても、断熱性能にコストをかける価値がありそうですね。
【取材協力】
株式会社近藤建設興業代表取締役 近藤直岐さん
岡山市北区に拠点を構える『株式会社近藤建設興業』。1971年(昭和46)の創業以来、変わらぬ社名を貫いているのは、時代に流されない、普遍的な住まいづくりへの信念の表れ。「風土を知り、自然に習い、知恵を活かして凛と住まう」をモットーに、数多くの注文住宅を手掛けている。
株式会社近藤建設興業
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