医療従事者の人たちに対する新型コロナウイルスのワクチン接種が始まっています。65歳未満の一般の人が接種できるのは6月以降になりそうですが、ワクチン接種で副反応が起きたときや、PCR検査や感染したときの医療費は一体どうなるのでしょう。ワクチン接種の前に、新型コロナウイルス関連でかかる費用について確認しておきましょう。
(記載内容は2021年3月時点の情報に基づいています)
接種は無料、時期や会場は自分で確認して予約
新型コロナワクチンの接種は、医療従事者、65歳以上の高齢者、高齢者以外で基礎疾患がある人や高齢者施設の従事者、それ以外で16歳以上の人の順番となります。
接種前に市区町村から「接種券」と「新型コロナワクチン接種のお知らせ」が届いたら、自分でワクチンを受けられる医療機関や会場を探して電話やインターネットで予約します。接種の際には「接種券」とマイナンバーカードや運転免許証、健康保険証といった本人確認資料も必要です。
ファイザー社のワクチンは1回目の接種から3週間後に2回目の接種を受けますが、費用は2回とも全額公費(無料)です。
副反応が起きたら補償はあるの?
ワクチンを接種したことによって副反応が起きた場合の措置として、国の「予防接種健康被害救済制度」が設けられています。
新型コロナワクチンに限らず予防接種によって健康被害が生じて医療機関での治療が必要になった場合、かかった医療費の自己負担分や入院、通院に必要な諸経費が給付されます。
給付を受けるためには市区町村の窓口に所定の書類を提出後、市区町村から国に申請し、厚生労働省が有識者からなる「疾病・障害認定審査会」の意見を聴取します。その後副反応と認定されれば、市区町村を通して給付金が支給されます。体調が悪くなってから実際にお金を受け取るまでには少し時間がかかりそうです。
また、接種により一定の障害状態になってしまった場合、18歳未満の人は障害児養育年金、18歳以上の人は障害年金を受けられます。18歳未満は1級と2級、18歳以上の人は1級から3級と、等級と予防接種の種類により年金の額が変わります。また自宅介護を行う場合は介護加算があります。
さらに、死亡してしまった場合は葬祭料と死亡一時金が、生計を維持している人が死亡した場合には10年を限度とする遺族年金を受け取れます。
給付の種類と給付額は以下のとおりです。
表のなかのA類疾病とは主に集団予防、重篤な疾患の予防に重点を置いた本人に接種の努力義務がある予防接種です。具体的には、ジフテリア、百日せき、ポリオ、はしか、風しん、日本脳炎、破傷風、結核、Hib感染症、小児肺炎球菌、子宮頸がん予防、水痘、天然痘、B型肝炎があります。B類疾病は個人予防を目的としたインフルエンザや高齢者の肺炎球菌があります。
新型コロナウイルスについては、専門家による厚生科学審議会で、まん延予防上緊急の必要がある「臨時接種」と位置付けられ、A類疾病と同じ高水準な救済給付を受けることができます。
PCR検査やコロナにかかったときの治療費は?
PCR検査には大きく「行政検査」と「自費検査」の2種類があります。
「行政検査」は発熱や咳などの症状がある人や、感染者の濃厚接触者などが保健所や医療機関で自己負担額なしで受けられる検査です。これに対して「自費検査」は無症状であっても自費で受けられる検査です。
検査費用は「行政検査」では実質無料です。検査費用(18,000円)及び判断料(1,500円)が公的医療保険の対象となり、おおよそ7割は健康保険から、残り3割の自己負担分は公費から出されます。(これまでと同様、初・再診料などの費用の支払は生じます。)
また、新型コロナウイルス感染症は「指定感染症」に指定されたため、入院したときの治療費は全額公費負担(無料)です。事情によりホテル療養や自宅療養となる場合も宿泊費や食事について補助対象となり、実質費用はかかりません。
民間の医療保険は支給対象?
予防接種の副反応やPCR検査、かかったときの療養については自己負担なしで、一定の補償があることがわかりました。では、個人で加入している民間の保険は支給対象になるのでしょうか。
病気やケガで入院したときに保険金が受け取れる医療保険や生命保険の医療特約は、ホテル療養や、医師の診断書があれば自宅療養でも給付金を受け取れる保険会社が多いようです。
また、災害割増特約や災害特約が付いた生命保険や医療保険に加入している場合、感染を災害として、割り増しの保険金を支払ってくれる会社もあります。
まずは自分が加入している生命保険等の証券をすべて手元に集めて、新型コロナウイルスに感染したときにどのような保険金が出るか確認しておきましょう。わからなければ保険会社のコールセンターに問い合わせをしておくとよいでしょう。
医療費控除を受けられるケースは限定的
最後に確定申告で医療費控除を受けられる費用について確認しておきましょう。
(1)マスクやアルコール消毒液等の購入費用
感染対策で必要なマスクやアルコール消毒液、体温計等、感染予防のための費用については医療費控除の対象になりません。
(2)自己判断で受けたPCR検査の費用
医師の判断により受けたPCR検査はそもそも無料です。また、自己判断で受けた検査費用は医療費控除の対象にはなりません。
(3)オンライン診療の費用
新型コロナウイルス感染症対策の一環として、臨時的に完全初診患者のオンライン診療が認められています。オンライン診療や治療、そのために支払ったオンラインシステム料は医療費控除の対象となります。オンライン診療で処方された医薬品も医療費控除の対象となりますが、郵送料については対象外です。
まとめ
以上のように、新型コロナウイルス感染症に関しては、ワクチン、検査、治療とも、原則としては費用の負担はありません。
しかし、新型コロナウイルスに感染したことにより、自宅待機期間なども含めて長期間働けなくなったり、自分は感染していなくても近親者が感染することで在宅を余儀なくされたりすることもあるかもしれません。
まずは、新型コロナウイルス感染症にかかったときにかかるお金、かからないお金を理解し、かかったときに使える社会保障の制度や会社の健康保険の制度を知りましょう。そのうえで自分が加入している民間の医療保険や就業不能保険といった関連する保障内容を改めて確認しておきましょう。
そして、いざというときどのような給付金が受け取れるのか、あわてないように都道府県や市区町村、保険会社の連絡先や窓口を事前に確認しておくと安心です。
【参考】
厚生労働省「接種についてのお知らせ」
「予防接種健康被害救済制度」
「新型コロナウイルス感染症対策事業に関するQ&Aについて」
「新型コロナウイルス感染症に係るワクチンの接種事業について」