フタをあけたら…害虫に注意したい食品と発生を防ぐ方法とは?

保存していた食品に虫が湧いていた…
考えるだけでもゾッとしますが、屋内でも誤った食品の保存をすると、虫が発生する危険性があります。

今回は、食品に発生する害虫の主な種類や、害虫の発生を防ぐ方法についてご説明します。

食品害虫の種類と害

住宅に侵入し、人の衣食住に被害をもたらす害虫のうち、特に食品に害をなす虫を「食品害虫」といいます。

食品害虫による被害は食品工場や貯蔵倉庫などで多く見られますが、一般家庭も例外ではなく、物置やシンク下の収納などに保存していた食品に、いつの間にか虫が湧いていた というケースは少なくありません。

実際、2007年に開設された「食品害虫サイト」の訪問者を対象としたアンケートによると、サイトを訪問した目的について「家庭」と回答した人は全体の4割を占めており、家庭内で食品害虫のトラブルに見舞われている人が一定数いることがうかがえます。

家庭の食品に発生しやすい害虫は、大きく4つのタイプに分類されます。

(1)屋外で発生し、成虫だけが餌を求めて住宅に侵入するタイプ

開け放した窓や玄関などから侵入し、台所や貯蔵庫などで食品を食い荒らします。

(2)屋外で発生し、室内でも繁殖できるタイプ

一度侵入を許すと住宅内で増加し、被害が拡大するおそれがあります。

(3)屋内で発生し、食品に害をなすタイプ

繁殖力の強い虫が多いため、放っておくと大量発生する可能性があります。

(4)食べ物に付着し、屋内に持ち込まれるタイプ

マメゾウムシなどがこのタイプで、幼虫が入った豆類などをそのまま収穫し、保存すると内部で繁殖を繰り返します。

 

このように、一口に食品害虫といっても、侵入経路や繁殖方法には大きな違いがあります。

もし3や4のタイプの食品害虫が家庭内で湧いた場合、窓や玄関などを閉めるだけでは被害を予防できないため、自分の家に湧いた虫の種類や特徴を把握し、正しい知識を持つことが大切です。

食品害虫が湧くとどうなる?

食品に害虫が群がっている様子は不快極まりないものですが、それ以上に問題なのは、害虫が病原菌を保菌していた場合です。害虫を介して病原菌や腐敗菌が食品に付着した場合、食品を食べた人が病気になったり、食中毒になったりするおそれがあります。

また、虫自体に害はなくても、その虫に寄生する別の虫が人体に害をもたらす場合もあります。

いずれにせよ、害虫を放置しておくとさまざまなリスクがありますので、食品をストックする場合は防虫対策を徹底することが大切です。

この食材と害虫に注意!!

食品害虫にはさまざまな種類があり、それぞれ特徴や好む食材に違いがあります。

ここでは、家庭内に湧きやすい主な害虫と、気をつけたい食材をまとめました。

なお、ここでご紹介する害虫と食材はほんの一例です。

実際には、ほかにもいろいろな食材に、さまざまな虫が湧くおそれがありますので注意しましょう。

全ての貯蔵食品に注意「コナダニ」

コナダニは、ダニ目コナダニ亜目に分類されるダニの一種です。

体長は0.3~0.5mm程度と小さく、干物や調味料、パン粉、みそ、菓子など、常温で保存されている食品を好んで食する性質を持っています。

気温20~30度、湿度60~80%程度のじめじめした環境で繁殖する傾向にあり、空気がよどんで湿気のある物置や貯蔵庫に食品をストックしておくと、コナダニが湧きやすくなります。

コナダニそのものは特に人体に害を与えるわけではありませんが、コナダニを捕食するツメダニの発生を誘発するおそれがあります。

ツメダニはアレルギーを引き起こす要因となりますので、コナダニを見つけたら早急に駆除する必要があります。

米類への混入「コクゾウ類」

コクゾウ類は、オサゾウムシ科に属する害虫の一種です。

世界各地で複数の種類が発見されていますが、日本では体長約2.3~3.5mmのコクゾウムシと、それよりやや小さいココクゾウムシがよく見受けられます。

コクゾウ類は「穀象虫」という名前からもわかる通り、米などの穀類に発生しやすく、米粒に穴を開けて卵を産み付ける習性があります。精米された米よりも、栄養豊富な玄米のほうが繁殖しやすいため、玄米を貯蔵庫に保管していたら、いつの間にかコクゾウムシが湧いていた …というケースが多いようです。

コクゾウムシは人を刺したり、病原菌の媒介者になったりする心配はなく、ただ穀類を食害するだけですが、繁殖力が強いので、お米をストックする場合は害虫対策が必須です。

その名の通り「カツオブシムシ類」

コウチュウ目カツオブシムシ科に属するカツオブシムシ類は、名前の通り、かつお節などの乾燥食品に湧く食品害虫です。かつお節だけでなく、フカヒレや煮干し、干し肉など、乾燥させた動物性食品を好んで食します。

幼虫・成虫ともに食害をもたらしますが、特に幼虫はかじる力が強く、食品の包装に穴を開けて侵入する場合があります。そのため、パッケージのまま保管しておくと、カツオブシムシ類の幼虫の食害に遭うおそれがあります。

成虫よりも成熟した幼虫のほうが体長が大きく、ハラジロカツオブシムシの幼虫は体長約15mmまで成長することもあります。

薬味、香辛料にも「シバンムシ類」

コウチュウ目シバンムシ科に属する昆虫です。

日本には150種類以上が生息しているといわれており、幼虫・成虫ともに乾燥した粉類や乾麺のほか、薬味や調味料などを食害します。基本的に暖かい日に発生する傾向にありますが、暖房が途切れない部屋では冬期間でも発生するおそれがあります。

なお、シバンムシの幼虫には、シバンムシアリガタバチと呼ばれる小さいハチの仲間が産卵・寄生します。シバンムシアリガタバチは約1ヶ月で成虫になり、偶発的に人を刺し、炎症やかゆみなどの症状を引き起こす危険性があります。

豆類に湧く「マメゾウムシ類」

マメゾウムシ類は、コウチュウ目マメゾウムシ科に属する昆虫です。

名前の通り、アズキ、インゲンマメ、ソラマメ、エンドウといったマメ科植物の種子に寄生する特性があります。

マメゾウムシ類の卵は豆の中に産み付けられ、かえった幼虫は豆を食べて成長。やがて羽化した成虫は豆に穴を開けて外に出ますが、幼虫の間は豆の中から出てこないため、成虫になるまで被害に気づかないケースも多いようです。

人体には無害ですが、保管している豆を食い荒らされてしまう可能性がありますので、各種豆類をストックする場合は対策を行う必要があります。

害虫の発生を防ぐには?

食品害虫の発生を防ぐための効果的な対策を4つご紹介します。

1. 食品を冷蔵庫で保管する

食品害虫の多くは、高温多湿の環境下で繁殖しやすいため、低温低湿の冷蔵庫内で保管すると防虫対策になります。冷蔵庫は密閉性が高く、しっかり扉を閉じていれば虫が侵入する心配がないので、家庭内で最も安全な保管場所といえます。

2. 密閉容器で保管する

常温で食品を保管したい場合は、密閉容器に入れて貯蔵しておくのがおすすめです。

包装の口を閉じただけでは虫に食い破られてしまうおそれがありますので、ガラス瓶やプラ容器などに入れてしっかりフタを閉じましょう。

3. 防虫グッズを使用する

ホームセンターやドラッグストア、ネット通販などでは、食品害虫を寄せ付けない防虫グッズが市販されています。

防虫グッズの種類はさまざまで、米びつに入れて使うタイプのものもあれば、食器棚に敷いて使用するシートタイプの防虫グッズもあります。

また、食品害虫の多くはじめじめした環境を好むので、シンク下や貯蔵庫などに除湿剤を設置しておくのもおすすめです。

4. 外から食材を持ち込むときは中身を確認する

外から住居内に食材を持ち込むときは、一度中身を確認し、虫や卵がないかどうか確認してみましょう。豆類などは房の中に卵を産み付けるので、いくつか房を開けて卵や幼虫がいないかチェックしておくと安心です。

まとめ

食品に害をもたらす虫は至る所に存在しているため、油断すると貯蔵している食品が被害を受ける可能性があります。

害虫は繁殖力が強く、気づかない間に大量発生してしまうおそれがありますので、冷蔵庫で保存する、密閉容器に入れる、防虫グッズを使うなどして、防虫対策に努めましょう。

【監修者】
白井良和さん

害虫防除技術研究所代表、有限会社モストップ取締役。医学博士。
1994年、京都大学農学部農林生物学科(昆虫学研究室在籍)卒業。
1996年、京都大学大学院農学研究科農林生物学専攻博士前期課程(昆虫学研究室在籍)修了。 1996年、殺虫剤メーカー研究部研究員(ゴキブリベイト剤の開発)。
2001年、富山医科薬科大学大学院医学系研究科博士後期課程(感染予防医学教室在籍)修了。
博士論文は「蚊の吸血誘引に関する総合的研究」。
2001年3月、害虫防除技術研究所設立。
2002-2004年、東京都の害虫駆除会社にて、ネズミ、ゴキブリ、蚊、ハチ、ダニ、樹木害虫などの害虫駆除業務を行う。 2003年12月、蚊駆除業務を柱に有限会社モストップを創業。
現在では、ECサイトで害虫対策商品販売、蚊忌避剤や蚊捕獲器の効果確認試験ほか害虫試験、書籍の出版、テレビ・ラジオ等のメディア協力、YouTube動画配信、Web記事の監修等を行っている。

~こんな記事も読まれています~