家探しを始めるときに、通勤の利便性や子どもの通学を考え、鉄道の沿線を軸に街を探す人は多いです。1872年に新橋-横浜間の約29キロメートルで日本初の鉄道が開業しておよそ150年が経過。首都圏だけでも相当数の鉄道沿線があり、長い歴史のあるものから比較的新しい沿線も。誕生した街も様々です。
なかでも「つくばエクスプレス線」は、2005年開業した比較的新しい鉄道路線で住宅価格も値ごろ感があり、若いファミリー中心に人気があります。今回は、つくばエクスプレス線沿線の街について紹介します。
秋葉原-つくば間を最速45分で結ぶ
2005年に開業した「つくばエクスプレス線」は、「秋葉原」駅を起点に「つくば」駅までの約58.3キロメートルの区間を20の駅で結ぶ比較的新しい路線です。先進的な技術を導入した快適・安全に移動するさまざまな取り組みが行われています。
まず、鉄道は完全立体交差によって、踏切ゼロを実現。安全面などにも十分配慮されており、すべての駅に転落防止用のホームドアが設置されているほか、改札もゆとりのある広さが確保されています。スムーズに移動できるよう大型タイプのエレベーターが用意されるなど、沿線の駅はどれもバリアフリー対応で障がい者や高齢者も使いやすいつくりです。
また、列車運行に伴う振動や騒音を抑制するため、継ぎ目のないロングレール(200メートル以上のレール)を敷設し、最長のものは18キロメートル以上もあります。地上部分の防音壁も2メートルと高く、騒音の拡散を抑制し住環境にも配慮。最高時速は130キロメートルと速く、「秋葉原」駅-「つくば」駅間を最速45分で結んでいます。踏切がないことに加え、ホームドアなどの安全防止策もあるため、運行の遅延も起こりにくく、通勤利便性に優れた沿線と言えるでしょう。
1都3県、11の自治体を通る沿線で新しい街づくりが活発化
つくばエクスプレス線は、東京都の4区(13.2キロメートル)、埼玉県の2市(7.4キロメートル)、千葉県2市(13.5キロメートル)、茨城県3市(24.2キロメートル)の1都3県の多彩な街を通ります。順に、千代田区、台東区、荒川区、足立区、八潮市、三郷市、流山市、柏市、守谷市、つくばみらい市、つくば市。自治体が異なるので、街の特長も様々です。
交通アクセスの面では、「秋葉原」駅でJR山手線「秋葉原」駅と結ばれることに加え、5路線が乗入れる「北千住」駅を経由。東京メトロ千代田線・日比谷線、JR常磐線、東武伊勢崎線が利用できるので、都心の主要駅へ往来がしやすい点が魅力です。また、「守谷」駅で関東鉄道常総線、「流山おおたかの森」駅で東武アーバンパークライン、「南流山」駅でJR武蔵野線と乗り換えができます。
2005年のつくばエクスプレス線開業以降、駅周辺部の土地区画整理が進むなど沿線開発は活発化しています。沿線人口も着実に増加し、2005年に1日あたり約15万1,000人だった利用者数は、2017年には約37万人を超えるなど鉄道利用者が大きく増加しました。
利用者増加の大きな要因が駅開業とともに進められた市街地開発。つくばエクスプレス線開業とともに新たに誕生した街では、マンションや戸建て、分譲地が活発に供給されました。以下の表は、2019年度のつくばエクスプレス線沿線の平均乗客数のデータです。街の成熟度が異なるため、利用者数には開きはあります。
JR山手線・総武線と接続し始発駅でもある「秋葉原」駅、5路線が交わるターミナル駅「北千住」は、5万人を超える乗客数。次いで、東武アーバンパークラインと交わる「流山おおたかの森」駅の3万9,000人台、JR武蔵野線と交わる「南流山」駅の3万7,000人台が続きます。さらに「守谷」駅、「八潮」駅が続き、「柏の葉キャンパス」駅、「つくば」駅、「三郷中央」駅の順になっています。
つくばエクスプレス線の誕生でつくられたフレッシュな駅が多い一方、関東鉄道常総線も通る「守谷」駅のように100年を超える歴史があり、首都直結のつくばエクスプレス線開業によって大きく発展した街もあります。また研究学園都市として鉄道整備の以前から街づくりが始まっていた「つくば」駅は、他駅と比べ街の成熟度が高いです。
つくばエクスプレス線には、さまざまな街が誕生しており、「秋葉原」駅に直結するなど都心へのアクセスもスムーズ。駅アクセスの良好な場所に美しい街並みの戸建て住宅やマンションが供給されることも新しい街ならではの魅力です。
もともと低利用地だったこともあり、価格も他沿線に比べリーズナブルです。一般的には、都心へのアクセスで住宅価格が形成されやすいですが、「つくば」駅のように成熟度の高い街もあり、都心から離れると必ずしも価格が安いというわけではありません。通勤利便性とライフスタイルを考えて、街を探してみてはいかがでしょう。
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つくば市では移住支援金の施策も
「守谷」駅から「つくば」駅までの6駅が茨城県内の街になります。茨城県では、定住人口の促進に力を入れています。例えばつくば市では、市内への移住・定住の促進と市内中小企業などにおける人手不足解消を目指して、「つくば市わくわく茨城生活実現事業」を実施しています。
東京23区に在住または、東京圏在住で東京23区に通勤する人が、つくば市に移住し、都道府県が移住支援金の対象とする就業先としてマッチングサイトに掲載している求人に就職した場合、もしくは県内で起業し、茨城県が実施する「地域課題解決型起業支援補助金」の交付決定を受けた場合に、世帯100万円、単身60万円の移住支援金を支給しています。転職・移住となるとハードルは高いですが、起業を考える人にはメリットが大きいでしょう。
「つくば」駅は、東京の過密緩和を図るとともに、高水準の研究と教育を行うための拠点を形成することを目的に国家プロジェクトとして建設されました。筑波研究学園都市は、大きく研究学園地区と周辺開発地区の2つの地区がありますが、「つくば」駅周辺は、研究学園地区に指定されています。筑波研究学園都市内には、2017年(平成29年)4月時点で、29の国等の研究・教育機関が立地しています。「つくば」エリアには、「つくばクレオススクエア」や「イーアスつくば」といった大型商業施設やアリーナなどのある「つくばカピオ」などの公益施設が充実しており、街の成熟度の高さは、「つくば」エリアで暮らす魅力です。
また「つくば」駅と同じく始発電車のある「守谷」駅は、都心通勤でも座っていける場合も。「守谷」駅周辺部には、「イオンタウン守谷」「アクロスモール守谷」「ジョイフル本田守谷店」などの大型商業施設が点在し、大型遊具のある「北園森林公園」や「守谷城址公園」など憩いのスポットが豊富にあります。駅から歩ける敷地面積が50坪前後の新築戸建てが4,000~5,000万円前後で購入できることもあり、人口も増え続けています。
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ららぽーと柏の葉のある「柏の葉キャンパス」、流山おおたかの森S・Cのある「流山おおたかの森」
「南流山」駅から「柏たなか」駅までの5駅が千葉県内。そのなかでもおすすめの街が、柏市に位置する「柏の葉キャンパス」駅と流山市に位置する「流山おおたかの森」駅です。ともに駅周辺が土地区画整理事業によって整備され、暮らしやすい住環境になっています。「柏の葉キャンパス」駅には「ららぽーと柏の葉」、「流山おおたかの森」駅には「流山おおたかの森S・C」という大型複合商業施設が揃っており、生活利便性も高いが高いことも魅力です。
「柏の葉キャンパス」駅の特徴は、名前の通り東京大学柏キャンパス、千葉大学柏の葉キャンパスといった学びの場が身近にあること。保育園などの子育て関連施設も駅周辺に充実しています。2020年(令和2年)4月1日時点で柏市の待機児童数は0人です。
また、ラグビーのトップリーグの試合も行われる総合競技場のある千葉県立柏の葉公園は、45ヘクタールの広大な敷地があり、地域の「緑・スポーツ・文化」の拠点として整備が進められています。自然環境も充実していて、家族が暮らしやすい街です。
国立がん研究センター東病院などの公益施設も充実しており、駅周辺部には分譲マンションや賃貸マンションの建設が進んでいます。「ららぽーと柏の葉」に加え、蔦屋書店を中核とした生活提案型商業施設「柏の葉T-SITE」などの商業施設も充実しています。
「流山おおたかの森」も「柏の葉キャンパス」と同様に、商業と子育て環境が充実しています。グルメから映画館まで約180店舗が揃う「流山おおたかの森S・C」をはじめ、つくばエクスプレス高架下には、商業施設「こかげテラス」も。2021年3月31日は、南口都市広場に面した場所に「流山おおたかの森S・C FRAPS」も新規にオープンしました。駅周辺部でマンション開発が進んでおり、新たなにぎわいスポットが誕生しています。
また、「流山おおたかの森」では、人口増加を受けて2021年4月に新設の「おおぐろの森小学校」が開校しました。
「三郷中央」駅は、車でアクセスできる大型商業施設が点在
埼玉県内は、「八潮」駅と「三郷中央」駅の2駅。そのなか注目したいのが「三郷中央」駅です。「三郷中央」駅がある三郷市は、この10年間で6パーセント以上人口が増加している、総人口14万人超の市です。
駅周辺部は、土地区画整理事業で整備され、エムズタウン三郷中央、ヤオコーといった商業施設や公園や病院、体育館などがそろうコンパクトな街です。また、車でアクセスできるJR武蔵野線「新三郷」駅周辺には、コストコ新三郷 倉庫店、ららぽーと新三郷、IKEA新三郷といった大型商業施設が立地。街はのどかな雰囲気で、子どもが遊べる自然も豊富です。「三郷中央」駅から徒歩約3分の場所には、会議室、カフェなどの交流拠点「三郷中央におどりプラザ」が2019年8月にオープンしています。都心へのアクセスが良好なわりに、3000万円前後で購入可能な新築マンションがあるなど住宅価格がリーズナブルな点も魅力です。
以上、つくばエクスプレス線の街を紹介してきましたが、生活利便性が高く、自然も豊富な暮らしやすい住環境で、都心アクセスもスムーズ。沿線へ移り住む人が多いのも納得です。若いファミリーでも買える価格設定は、大きな魅力でしょう。
では、留意すべきことはないのでしょうか。つくばエクスプレス線は、移動距離があるため運賃も相応の金額に。「秋葉原」駅までの運賃は、「柏の葉キャンパス」駅から690円、「つくば」駅から1210円となります(2019年10月1日改定値。大人10円単位)。また、東京都内に比べ鉄道網が発達していないので、移動するには車があったほうが便利です。
とはいえ、スタートしたばかりの美しい街に住めるのは大きな魅力。沿線には、筑波宇宙センターやさまざまな収穫体験ができる農園など、レジャースポットも豊富にあります。
また、将来の混雑緩和を図るため、2030年代をメドに現在の6両編成を8両編成に更新し、輸送力を高める「8両編成化事業」を決定。路線を「東京」駅まで延伸することも検討されています。都心近郊エリアの価格上昇で住まいの購入をあきらめていた人も、つくばエクスプレス線沿線の住まいを検討してみてはいかがでしょうか。