公立高校無償化とは、高等学校に通う子どもがいる家庭を対象とした高等学校等就学支援金のことをいいます。ただし、この制度には所得制限があるため、誰でも利用できるものではありません。
この記事では、公立高校の授業料が実質無償化になる高等学校等就学支援金制度や所得制限の内容、所得の計算方法などを詳しく解説します。
公立高校の授業料無償化とは
公立高校無償化とは、高等学校等就学支援金を利用することで授業料が実質無償になることをいいます。
この制度は「公立高校無償化」といわれることが多いのですが、実際は公立高校だけではなく、私立高校、高等専門学校、高等専修学校、中等教育学校(4~6年)などに通う生徒も、条件を満たせば支援金を受け取れます。
ただし、すでに卒業した人や、留年等で在学期間が36ヶ月を超えた人は対象外となりますので注意しましょう。
支給額について
高等学校等就学支援金の支給額は、公立高校は年額11万8,800円まで、私立高校は最大で年額39万6,000円までとなっています。
この支援金は生徒や親には支給されず、学校に直接支給されて授業料と相殺される仕組みです。そのため、実際に現金を受け取ることはなく、授業料にかかる金額以上を支給されることもありません。
高校の授業料無償化(高等学校等就学支援金)には所得制限がある
高校の授業料が無償になると学費負担を減らすことができますが、この制度には所得制限があります。そのため、条件を満たした世帯でなければ支援金制度を利用することができません。ここでは、高等学校等就学支援金の所得制限について、詳しく解説していきます。
高校の授業料無償化が該当する世帯年収とは
文部科学省では、授業料が無償化となる目安、つまり支援金を利用できる所得基準に相当する年収の目安を以下のように公表しています。
出典:文部科学省「高校生等への修学支援 (参考)年収目安」
この表を見るとわかるように、39万6,000円を受け取るための所得条件は、11万8,000円を受け取る場合に比べてかなり厳しくなっています。
私立高校に通っていても、所得制限にかかってしまった場合は11万8,800円しか受け取れないこともあるでしょう。
また、上記の世帯年収はあくまでも目安です。次に、厳密な所得の算出方法を説明していきます。
高等学校等就学支援金における所得の計算方法
高等学校等就学支援金を受け取るためには、世帯全体で一定基準以下の所得である必要があります。
所得制限にかかるかどうかを判断するためには、まず「(市町村民税の課税所得額×6%)−(市町村民税の調整控除額)」を計算します。そして、それが30万4,200円未満であれば年収目安910万円未満となり、11万8,800円の支援金の対象になります。
夫婦共働きの場合は、それぞれ計算したものを合算して判断します。上記の表のとおり、夫婦共働きは基準値がやや上がります。
この所得制限は両親の収入の合算であるため、扶養内で働く妻のパート収入も含まれます。ただし、世帯収入ではなく、同居している祖父母の収入など、保護者以外の収入は含める必要はありません。
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高等学校等就学支援金の手続き方法
高等学校等就学支援金の申請は、自分自身で行う必要があります。入学時などに学校から案内があるので、必要書類を用意し忘れずに学校に提出しましょう。ここでは、申請方法について詳しく解説します。
必要書類
高等学校等就学支援金制度に申し込むためには、入学時の4月に必要書類を学校に提出する必要があります。申請書などの案内は、入学時に学校から行われます。
基本的に、用意する必要書類は以下のとおりです。
・申請書
・親権者全員のマイナンバーカードのコピー、もしくはマイナンバーカードが記載された住民票の写しなど
マイナンバーカードを持っていない場合は、マイナンバーが記載された住民票の写しで代用できます。ただし、マイナンバー通知カードは原則使えないため、注意してください。
申請時期
高等学校等就学支援金の申請時期は、原則として高校に入学した4月です。申請書の案内も4月に行われるため、支援金の説明を受けてから実際に申請するまで、あまり時間はありません。
具体的な期日は各都道府県や学校によって違うこともあります。もらった書類はきちんと確認しておきましょう。
この支援金制度では、申請した月から受給開始となります。申請が遅くなると受給額も減ってしまうため、できるだけ4月中に申請書を提出してください。
申請方法
高等学校等就学支援金は国から学校に直接支払われるため、申請者が現金を受け取ることはありません。国と学校の間で処理を行い、支援金と学費を相殺します。
就学支援金は、入学した学校からの案内に従って申請します。申請書の提出期限は学校により決められていますので、期日までに遅れずに提出しましょう。
高等学校等就学支援金における注意点
高等学校等就学支援金は高校の教育費を大幅に抑えられる制度です。そのため、申請から受給まで、確実に手続きを行いましょう。ここでは、高等学校等就学支援金における注意点について解説します。
地方住民税の申告が必要
高等学校等就学支援金の受給は世帯収入により制限されます。
条件を満たしているかどうかを判断するときには地方住民税情報が使われます。そのため、地方住民税が未申告だと支援金を受給できるかどうかの判断ができず、支援金の対象外となる恐れがあります。
基本的に住民税の申告を個別で行う必要はありませんが、給与所得以外の収入がある人、所得税で年末調整や確定申告をしていない人は申告しなければなりません。
この条件に該当する場合は、支援金の申請をする前に地方住民税の申告をしておきましょう。
私立高校の場合、差額はそれぞれの家庭が負担する
高等学校等就学支援金では、私立学校に通っている場合には最大39万6,000円、私立高校(通信制)の場合は最大29万7,000円、国公立の高等専門学校(1~3年)の場合は最大23万4,600円を利用することが可能です。
しかし、私立高校は支援金よりも授業料が高いこともよくあり、超過分は各家庭で負担しなければなりません。そのため、私立高校においては、収入制限をクリアしても完全に無償にならないこともあります。
私立高校実質無償化という言葉もありますが、学校によっては自己負担額がありきますので注意してください。
高校授業料無償化の所得制限にかかる家庭はどうすればいいか
所得制限にかかってしまって高等学校等就学支援金を利用できない場合は、どのようにして学費を確保すればよいのでしょうか。ここでは、所得制限にかかり、支援金を受け取れない場合の対策方法を解説します。
学費ローンを利用する
支援金を受け取れない場合は、まず株式会社日本政策金融公庫による国の教育ローンを検討しましょう。この教育ローンにも所得制限がありますが、世帯年収の上限が高等学校等就学支援金よりも少しだけ高くなってはいます。
国の教育ローンが利用できない場合は、民間の金融機関が提供している学費ローンを検討しましょう。使いみちが教育費と限定されているため、一般的なローンよりも低い金利で借りられます。
学資保険を利用する
子供の高校入学まで時間がある人は学資保険も検討しましょう。
学資保険は長期的に学費をコツコツ貯蓄できますし、万が一契約者が死亡した場合は、保険料の払い込み途中でも保険金が満額支給されます。教育資金を用意するのに適している商品でしょう。
ただし、学資保険は子どもが一定の年齢以下でないと申し込めません。また、医療保障が手厚い学資保険は資金の一部を保障に充当しているため、最後に受け取る学資金が元本割れする可能性もあります。
学資保険についての詳しい情報は、こちらの記事を参考にしてください。
関連記事:子どもの教育資金の確保するために入る“学資保険”って、本当に必要?
まとめ
公立高校無償化とは、授業料が実質無償化となる高等学校等就学支援金のことを指し、公立高校だけでなく私立高校に入学する場合も利用できます。
ただし、高等学校等就学支援金には所得制限があり、一定の所得を超える人は支援金を利用することができません。
支援金が利用できるかどうかの目安となる所得は両親の収入が基準となっており、パートの収入なども加味されるため、注意が必要です。
(最終更新日:2024.04.19)