所得税の扶養控除を受けたり社会保険料の負担を軽減したりするために、家族を扶養親族に入れられる制度があります。家族を扶養親族に入れるためには一定の条件があり、条件を満たせば配偶者や子どもだけでなく、自分の兄弟も扶養に入れることが可能です。
この制度はあくまでも親族を扶養する人の負担を軽減するためのものなので、メリットやデメリットを一概に比較するのは難しいでしょう。そこで、この記事では、兄弟を扶養に入れる際のポイントについて解説します。
兄弟を扶養に入れるメリット
兄弟を扶養に入れる場合どのようなメリットがあるのか、具体的に説明します。
税制上のメリット
扶養親族がいる場合、納税者は所得税において扶養控除を受けられます。扶養控除額の分だけ課税所得を減らせるため、納税者が支払う所得税の減額が可能です。
扶養親族に該当するためには、納税者と生計を一にしている親族であり、扶養親族の年収が給与所得の場合は103万円以下、それ以外では48万円以下という条件を満たさなければなりません。
また、控除される金額は扶養親族の年齢によって決められており、具体的には以下のとおりです。
兄弟の場合、「70歳以上」の場合、「同居している親以外の者」の項目で該当する控除額が適用されます。
社会保険上のメリット
健康保険においては、納税者の兄弟が社会保険上の扶養親族として認められた場合、兄弟自身は健康保険料を払わなくても済みます。
扶養親族の場合、納税者が加入している健康保険に加入しているとみなされるため、兄弟は必要な保障をきちんと受けられます。納税者自身が加入している健康保険から保険証が発行され、病気やケガをした場合に使用できます。
納税者自身が支払う社会保険料は、扶養親族の人数が増えても変化しません。兄弟を扶養しても金銭のの負担は増えないため、すでに扶養親族がいる場合は兄弟を扶養親族に入れても損はありません。
ただし、自営業などの雇用されずに働いている人が加入する国民健康保険は加入する人数分料金が発生します。
兄弟を扶養に入れるデメリット
兄弟を扶養に入れると税制や社会保険においてメリットがありますが、なかにはデメリットといえる部分もあります。ここでは、兄弟を扶養に入れる場合の具体的なデメリットを解説します。
国民年金の納付義務は免除されない
前途の通り兄弟を扶養親族に入れると兄弟自身は健康保険料を払わなくても済みます。。しかし、無職や学生、低収入者であっても国民年金の第1号被保険者となるため、原則60歳までは年金保険料の納付義務が発生します。
日本年金機構によると、本人が支払えない場合は世帯主や配偶者が納める、としています。そのため、兄弟が国民年金を支払えないほど困窮しているときは、代わりに納付しなければなりません。
ただし、国民年金には免除制度や納付猶予制度があります。経済的に保険料が納められないのであれば、手続きを行い、保険料の免除や支払い猶予を受けましょう。国民年金を支払わなかった分将来の受給額は減ります。
自分の年金受給額が気になる方は、次の記事を参考にしてください。
関連記事を読む:【気になる】将来もらえる「年金」を簡単に把握する計算方法とは?
金銭的な援助が必要になる
税制と社会保険において兄弟を扶養親族に入れるためには、生計を一にするという条件があります。兄弟なら同居していなくても扶養親族には入れられるものの、金銭的な援助は必須です。
扶養控除の場合、どのくらい仕送りをすれば生計を一にすると考えられるのかは明記されてはいません。しかし、健康保険においては別居の場合、扶養親族の年収が被保険者からの援助による収入額より少ない、という条件があります
兄弟を扶養すれば得なのではなく、扶養する親族がいる人の負担を軽くする制度であることを意識しましょう。
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扶養親族の条件とは
扶養親族になれるかどうかの条件は、税制と社会保険でそれぞれ異なっています。兄弟を扶養親族に入れるためには、あらかじめ条件をよく理解しておくことが大切です。ここでは、兄弟を扶養親族に入れるための条件について解説します。
税制における扶養
税制上の扶養親族として所得税の扶養控除を受けるための条件は、以下のとおりです。
・配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)、または里子、養護を委託された老人
・納税者と生計を一にしている
・年間の合計所得金額が48万円以下、給与収入のみの場合は103万円以下
・青色申告者の専業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の専業専従者ではないこと。
納税者の兄弟は、2親等の血族で、6親等内の血族に該当します。そのため、扶養控除の対象として認められます。
生計を一にするとは、金銭的に援助している場合だけを指しているわけではありません。同居しておらず生活を共にしていなくても、仕送りがあれば生計を一にしていると認められる場合もあります。年間の合計所得金額や給与収入については、条件を満たしているかどうか兄弟に確認してください。
また、税制において扶養控除を受けられるのは扶養親族が16歳以上の場合ですが、扶養親族の人数によって影響が出る制度もあります。16歳未満の幼い兄弟を扶養するときでも、申告はしたほうがいいでしょう。
社会保険における扶養
社会保険上の扶養親族になるためには、被保険者に生計を維持されていなければなりません。それだけではなく、以下の表のような関係性である場合のみ、扶養親族とできるようになります。
上記の表とのとおり、兄弟は同居していなくても扶養親族にできます。
また、扶養親族は扶養が必要な状態でなければならないため、年間収入にも以下の表のような制限があります。
兄弟を扶養に入れるときの手続き方法
新たに兄弟を扶養親族に入れるためには所定の手続きが必要です。ここでは、兄弟を社会保険上の扶養に入れるときにはどのような手続きが必要なのかを解説します。
なお、兄弟を税制上の扶養に入れるためには年末調整の際に届け出が必要であるため、忘れずに手続きを行いましょう。
被扶養者(異動)届を用意する
被扶養者が増えた場合には、自分が勤務している企業に対して「被扶養者(異動)届」を提出する必要があります。提出期限は兄弟を被扶養者に含めることになった日から5日以内と短いため、速やかに申請書を準備しましょう。
申請書は、日本年金機構のホームページからダウンロードが可能です。何か不明点があれば、日本年金機構のホームページを確認するか、企業の担当者などに問い合わせてください。
参考:日本年金機構「家族を被扶養者にするとき、被扶養者となっている家族に異動があったとき、被扶養者の届出事項に変更があったとき」
必要書類を用意する
親族を扶養に入れる際は、「被扶養者(異動)届」とともにいくつか書類を提出しなければなりません。状況によって必要書類は変わりますが、基本的に以下の書類は必要となるケースが多いでしょう。
・続柄が確認できる書類(戸籍謄本・戸籍抄本もしくは住民票の写し)
・被扶養者の収入が確認できる書類
必要書類がそろっていないと手続きがスムーズに進まない可能性があるため、きちんと準備しておいてください。ただし、厳密にどのような書類が必要か、確かめてからにしましょう。
所属企業に提出する
「被扶養者(異動)届」とその他の必要書類は、所属企業に提出します。兄弟を被扶養者に含めることになった日から5日以内に必ず提出しましょう。
所属企業は、社員から受け取った書類を確認したうえで日本年金機構へ送付します。手続きの結果については、日本年金機構から被保険者へ直接連絡される仕組みです。
まとめ
扶養制度は、扶養する親族がいる人の負担を軽くするために設けられた制度です。兄弟を扶養親族に入れることができれば、扶養者が所得税控除を受けられる、被扶養者の健康保険料が免除される(国民年金保険を除く)などのメリットがあります。兄弟を扶養に入れる際は、制度の特徴をよく理解したうえで手続きを進めましょう。
(最終更新日:2024.04.19)