住みたいエリアに土地を見つけ、いざ家を建てようと動き始めたら、いろいろトラブルが…。そんな事態に陥らないために、住宅会社や建築設計事務所といった「家づくりのプロ」と土地を探すことを専門家は推奨しています。
それはなぜなのか、どんなメリットがあるのか、これからマイホームを考えている人は、ぜひ知っておきたいところです。そこで、人気のYouTubeチャンネル『家づくり せやま大学』を運営する瀬山彰さんにお話を聞きました。
「建物」重視の家づくりは住宅会社探しから
瀬山さんが家づくりで推奨しているのは、まず、「建物」重視と「土地」重視、どちらで進めるかを決めること。
「土地重視なら、建て売り住宅や建築条件付き物件を探しましょう。住環境が整っているので、費用や手続きが最低限で済みます」(瀬山さん)
一方、建物重視で自分好みの注文住宅を建てる場合は、土地を探すよりも、住宅会社を先に見つけるほうが良いそうです。その理由について詳しく解説してくれました。
土地先行の家づくりで起こり得るトラブル
「マイホームを建てたい」と土地探しを始めた人が、「掘り出しものが欲しい」「相場より安く手に入れたい」「後悔したくない」と考えるのは当然です。しかし実際には、良い条件の割安な物件はないと思って間違いないそうです。「言い方を変えるなら、安い土地にはそれなりの訳があると思っていいでしょう。その訳を知ったうえで手に入れるなら何ら問題はありませんが、住んでみて後悔するのだけは避けたいものです」と瀬山さん。
では、施主だけで土地探しをすると、どのようなトラブルに見舞われる可能性があるのでしょうか。瀬山さんによると、3つのリスクがあるそうです。
リスクその1:予想外の経費
まず、不動産会社が打ち出している土地価格が安くても、家を建てるまでに思わぬ経費がかかってしまうリスクがあるそうです。例えば水道や電気の引き込みといったインフラ整備、水道市納金(名称は地域による)、道路との高低差を処理する工事、隣りとの境界調整、古い家が建っているならその解体費用…と、挙げればきりがないほどさまざまな経費が潜んでいる可能性があるといいます。
これらは目には見えないため、専門家にとっては当たり前でも、一般の人は知る由もありません。結果的に、家を建てるまでに余分な費用がかかり、「割高になってしまった」となるわけです。
リスクその2:建築制限
次に、思うような家が建てられない可能性があるそうです。土地には、建ぺい率、容積率、北側斜線、道路斜線、外壁後退、風致地区といった建築制限がかかっている場合があります。「一般の人が、これらをすべて理解し、該当するかどうか検討するのは不可能と言っても過言ではありません」と瀬山さん。
外壁後退の指定を受けている土地では、隣りや道路から一定の距離を置いて建物を建てるというルールがあるそうです。ほかにも、北側斜線によって家の高さに制限がかかったり、風致地区の指定により景観を選べなかったりするケースも考えられるといいます。つまり、せっかく買った土地の好きな場所に家を建てることはおろか、デザインやサイズも制限される可能性が出てくるのです。
リスクその3:契約手続きの難しさ
最後に、契約手続きの難しさが挙げられます。「一般消費者だけで、土地のプロである不動産会社を相手に取り引きすると、契約がスムーズに運びにくい」と瀬山さん。詳細な専門知識が少ないため、土地売買契約書の内容を正しく理解できる人は少ないといいます。
また、契約の前には、物件に関する重要事項の説明が必ずありますが、こちらについても瀬山さんは「基本的な確認から法令上の制限、インフラ整備など、チェックポイントが多く、施主だけで理解するのは難しいでしょう」と話します。
「家づくりのプロ」と一緒なら、その都度的確なアドバイスが受けられる!
以上のようなリスクを回避するために、まずは家を建ててもらいたい住宅会社の目星をある程度つけて、土地探しの相談をしてみるのはどうでしょう。瀬山さんによると「住宅会社は造成費用や建築規制を確認するプロであり、しっかりした会社であれば相談に乗ってくれるはず」と言います。相談に乗ってくれるかどうかを、住宅会社選びの基準にしても良いそうです。
土地を見つけたら、「住宅会社の担当者に現地調査をしてもらうといい」と瀬山さん。造成など余分にかかる費用を見積もってもらったり、役所で法的な規制をチェックしてもらったりと、その都度的確なアドバイスを受けられるそうです。相場や値ごろ感も聞けるので、不動産会社と価格交渉するヒントにもなるといいます。
まとめ
土地探しから家づくりをスタートするとき、自分たちだけでは思わぬトラブルが発生する可能性があります。土地と建物を別々に進めるより、トータルでプランニングしていくのがおすすめです。「家づくりのプロ」のアドバイスをその都度受けることにより、設計、資金の両面でもより理想に近いマイホームを実現できるでしょう。
【取材協力】
瀬山彰さん
家づくり知識メディア『グッシン』、YouTubeチャンネル『家づくり せやま大学』を中心に、「なるべくお金をかけずに質の高い家を建てたい!」という方向けの情報を発信。悩める施主のバイブル「せやま基準一覧表」は3万ダウンロードを突破し、日本全国にせやまファンが増加中。
筑波大学理工学群を卒業後、大手コンサル会社で住宅業界を担当。その後、住宅会社での支店立ち上げや支店長業務を経て、独立。自社メディアでの情報発信にとどまらず、YKK AP主催セミナーで講師を務めるなど、日本の住宅業界の未来を担う一人として注目を集めている。