街を歩いていると、民家の前に飲料などの自動販売機が設置されているのを見かけることがあります。こうした自動販売機は、所有者が自身の土地を有効活用するために設置しているもの。しかし、実際のところ売り上げは上がっているのでしょうか。この記事では、自動販売機ビジネスの方式やメリット、デメリットについて解説していきます。
自動販売機ビジネスとは
まずは、自動販売機ビジネスとはどのようなビジネスなのか見ていきましょう。
余っている土地を有効活用できる自動販売機ビジネス
自動販売機ビジネスとは、自身が所有する土地や借りている土地に自動販売機を設置し、商品売り上げから収益を得るビジネスのこと。自動販売機は大きな面積を必要としないことから、余っている小さな土地でも有効活用できるのがポイントです。
一般社団法人日本自動販売機工業会が発表している「自販機普及台数及び年間自販金額 2016年(平成28年)版」によると、日本全国に設置されている自販機は約494万台。なかでも、飲料の自動販売機が全体の約半数にあたる約247万台を占めています。こうしたことから、ビジネスにおいても飲料の自動販売機がメインです。
ただ、飲料のほかにもカップラーメンやお菓子といった食品、雑誌、小物類、タバコなど、自動販売機で取り扱える商品はさまざま。商品を販売するものばかりでなく、自動写真撮影機のような「自動サービス機」も対象となります。
他の土地活用ビジネスとも相性がよい自動販売機ビジネス
自動販売機ビジネスは、賃貸マンション・賃貸アパート、コインパーキング、コインランドリー、トランクルームといったほかの土地活用ビジネスとも相性がよいビジネス。
たとえば、マンションやアパートの隣に飲料の自動販売機があれば住民の利用が期待できますし、コインパーキングやコインランドリーの近くに自動販売機を置いておけば、利用者が合間に商品を買って休憩することができるといった具合です。また、スーパーやコンビニから遠い場所でも、自動販売機を設置することで賃貸住宅や施設の利便性をアップできます。
自動販売機ビジネスの2つの方式
自動販売機ビジネスは、大きく「フルオペレーション」「セミオペレーション」という2つの方式に分けることができます。それぞれどのような方式なのか解説していきましょう。
フルオペレーション
フルオペレーションとは、いわゆる「場所貸し」のこと。自身は所有している土地や設置場所のみを提供し、自動販売機の運営・管理にまつわるすべての業務をオペレーターと呼ばれる専門会社に委託する経営方式です。
フルオペレーションではオペレーターが自動販売機を手配するため、設置者が自ら機械をリース・購入する必要はありません。普段かかる費用は電気代のみで、売り上げ本数によってマージンを受け取ることができます。一般的なマージンの水準は1本あたり15〜20%程度。
自動販売機で販売する商品は単価が低いため、15〜20%程度のマージンではそれほど大きな収益は見込めません。オペレーターにすべて任せることができてローリスクな分、リターンも低い方式と言えます。
セミオペレーション
対するセミオペレーションは、オペレーターから自動販売機を購入(もしくはリース)し、運営・管理にまつわる業務をすべて設置者自身で行う経営方式のこと。簡単に言い換えると、自動販売機のオーナーになるということです。
セミオペレーションの場合、自動販売機の購入費用は設置者持ち。日々の電気代はもちろんのこと、販売する商品も自分で仕入れなければなりません。通常の商売と同じく、売り上げから仕入れ原価を差し引いた金額が収益となるため、いかに仕入れ原価を安く抑えるかがポイントとなります。
セミオペレーションはフルオペレーションよりも多くの収益を見込めますが、その分リスクが大きい経営方式です。一定の経営スキルやマネジメントスキルが求められ、うまくいかないと赤字転落してしまうリスクもあるでしょう。
自動販売機ビジネスのメリット
うまく活用すれば安定的な収益を得られる自動販売機ビジネスですが、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
不労所得になる
自動販売機は、人手が一切かからない優秀なセールスマンのような存在。24時間365日、天候にも左右されることなく自動で商品を販売してくれます。特にフルオペレーションの場合、商品の補充や機械のメンテナンス・清掃といった業務もオペレーターに委託できるので、置いているだけで勝手に売り上げを生み出してくれる存在になります。
また、取り扱う商品は賞味期限が長く、形状が統一されていて壊れにくいものがほとんどなので、廃棄ロスが生じにくいというのもポイントです。
土地の有効活用
一般的な土地活用ビジネスはある程度まとまった広さの土地が必要となりますが、自動販売機ビジネスは機械の設置場所さえ確保できれば事業を行うことが可能。余っている小さな土地でも有効活用できるのはメリットです。自販機のサイズはバリエーションが豊富で、小型なものだと幅699mm×奥行730mmから設置できます。
先ほどご紹介したとおり、ほかのビジネスと併用して運営できるのも自動販売機ビジネスならではのメリットです。
簡単に移転できる
通常の店舗経営では、一度出店してしまうと「思うように集客できない」「売り上げが思ったほど上がらない」と感じても、そう簡単に移転することができません。大きなコストが必要になるだけでなく、そもそも適した移転場所を見つけられるかどうかわからないからです。移転が簡単にできないからこそ、最初の場所選びは慎重にならざるを得ません。
一方、自動販売機の移転コストは1〜2万円程度。小さな余剰スペースがあればどこでも設置できるので、移転先も比較的簡単に見つけられます。自動販売機ビジネスは、最初の場所選びに失敗したとしても再チャレンジしやすいのです。
災害時に飲み物を提供できる
地震などの災害発生でライフラインが途絶えたとき、真っ先に問題になるのが飲み水の確保。災害時に無償でドリンクを提供する機能を備えた自動販売機を設置しておけば、地域の災害対策にもつながります。
自動販売機ビジネスのデメリット
もちろん自動販売機ビジネスはいい面ばかりではありません。続いて、自動販売機ビジネスのデメリットについても解説します。
ゴミの被害
自動販売機ビジネスにとって、ゴミ問題は切っても切り離せない課題です。自動販売機で商品を購入した人用にゴミ箱を設置すると、必ずと言っていいほど関係のないゴミも捨てられてしまいます。特に人通りの多い場所に設置された自販機だとゴミの回収が追いつかなくなり、周囲にゴミが散乱してしまうといった事態も想定されます。
ゴミ問題が深刻化すると、近隣住民に迷惑をかけてしまいクレームの原因になる場合もあるでしょう。自動販売機ビジネスを安定的に運営するためには、ゴミ対策が欠かせません。
電気代がかかる
比較的費用のかからないフルオペレーションであっても、電気代だけは土地の所有者が負担しなければなりません。最近では節電タイプの自動販売機もありますが、いずれにしても24時間365日分の電気代を支払い続ける必要があります。
節電機能の付いていない自販機では、1ヶ月の電気代は1台当たり4,000〜6,000円程度。節電タイプであれば、1ヶ月2,000〜3,000円程度が目安です。電気代は季節によっても異なり、冷たい飲み物・温かい飲み物の両方を提供する冬場は電気代が高くなる傾向にあります。
いたずらの被害
無人でオープンな自販機は、いたずら被害のリスクと隣り合わせです。落書きをされる、お金の投入口にガムを詰め込まれるといった軽い被害から、機械を壊される、お金を盗まれるといった強盗被害まで、さまざまないたずらが想定されます。
繰り返し被害が出るようなら、防犯カメラやセキュリティシステムの設置を検討したほうがいいでしょう。
まとめ
小さなスペース、小さな投資で始められる自動販売機ビジネス。比較的簡単に始められるビジネスではありますが、一つの事業であることに変わりはありません。とりわけセミオペレーションで運営する場合、期待していた売り上げに到達せず商品在庫を抱えるといったリスクも考えられます。小さな事業であっても、マーケティングをしっかり行い、オペレーターとも十分に相談したうえで始めるようにしましょう。