意外とデメリットが多い? ロフトの使い勝手を考える

家の購入や選択でロフトの設置を希望する人は少なくありません。ロフトには、居住スペースを有効に活用できる、開放的な雰囲気を演出できる、秘密基地のようなワクワク感があるといった特徴があり、生活に楽しみや潤いをもたらしてくれます。

一方で「ロフトを設置して後悔した」という声が聞かれることも事実です。この記事では、ロフトの使い勝手について解説します。

ロフトとは

ロフト(Loft)は部屋裏にあるスペースのことです。専門的な観点から見たロフトは、多くの人がイメージしているものとは異なる点もあるため、設置にあたっては以下のポイントを把握しておきましょう。

もともとは屋根裏収納

ロフトの原型である古民家の屋根裏

従来、ロフトは使用頻度が少ない物を置くための倉庫として使われていました。茅葺(かやぶき)の古民家などでは、現代のロフトの原型ともいえるスペースがあります。そこには、葺き替え(ふきかえ)に使う茅、囲炉裏の燃料となる薪や木炭などを収納して、必要な時期に使えるようストックしていました。天井が高い古民家の屋根裏は寒く、居住には適していなかったことも倉庫として使われていた理由のひとつです。

一方、現代の住宅では、天井を高くして部屋の一部を2層式にした上部空間のことをロフトと呼んでいます。就寝スペース、子どもの遊び場、物置など、使い道はさまざまです。近年では、戸建て住宅のみならず、賃貸住宅やワンルームマンションにもロフトが設置されているケースが増えてきています。

建築関連法令での規制

プラスアルファの居住スペースとして使われることの多いロフトは「広いスペースを確保したい」「天井を高くして歩けるようにしたい」と希望する人もいます。しかし、ロフトには建築基準法における細かな規制があるため注意が必要です。

建築基準法ではロフトを「小屋裏物置等」としており、床面積には算入されません。そのため、持ち家の場合は固定資産税の節約になります。一方、ロフトの広さや高さを自由に決められるわけではありません。ロフトには「床面積が、ロフトがある階の2分の1未満」「天井高の最も高い部分が1.4メートル以下」という基準があります。また、床面積に関しては、ロフトがある階の8分の1を超える場合、各階の壁量を増やす必要があります。

自治体によっては固定式のハシゴを設置してはならないとしているケースもあり、その場合はロフトに昇る都度、可動式のハシゴをセットすることになります。

これらの規制により、現実的には「部屋の一角にハシゴで昇れる小さなスペースがある」という状態になることも少なくありません。この基準を守らないと、床面積に参入されるうえに「階」として判断されることになり、固定資産税にも影響します。

このような規制がある以上「狭小住宅だから広いロフトがほしい」「立って自由に歩きたい」「ハシゴは危険だから階段を設置したい」という希望をロフトの設置でかなえることは難しいと考えましょう。

ロフトの3つのデメリット

ロフトには魅力的な特徴が多くあるものの、ロフトならではのデメリットがあります。ロフトの設置を検討する際には、デメリットをよく理解したうえで使い方を考えましょう。

夏はロフト部分が暑い

ロフトは天井に近く、暖かい空気は上にあがります。そのため、夏はロフトの温度が上昇し、居住スペースとして使用するのは難しい場合があります。特に、ベッドを置いて就寝スペースとして使用する場合は注意が必要です。エアコンで室内温度を調整してサーキュレーターで涼しい空気を送る、注文設計の場合は換気扇を設置するなど、温度の上昇を抑えるよう工夫しましょう。

実際には、これらの対策を施しても朝までぐっすりと眠るのは難しいという声も多く聞かれます。どのような状況になるかわからないうちは、ベッドを設置するのではなく、いざとなったら移動できる敷布団で様子を見るのも一つの方法です。いずれにしても、就寝時の熱中症には注意しましょう。

ハシゴの昇り降りが面倒

ハシゴの上り下りが危険なことも…

ロフトへの昇降はハシゴを使用します。疲れて帰宅した日の就寝時にハシゴを昇るのは、階段を昇る以上に負担がかかります。また、夜中にトイレに起きたとき、お酒を飲んで酔っているとき、体調が優れないときなどは、ハシゴの昇り降りは非常に危険です。

ロフトを子どもの遊び場として考えている場合も、ハシゴの昇り降りがネックになることがあります。子どもがハシゴから落ちる可能性を考えると「ロフトで遊ぶのは親の監視下のもとで」ということになり、目が離せません。

そもそもハシゴ自体に不具合が生じた場合は、転落や怪我の恐れがあります。万が一の事態に見舞われないよう、常にハシゴの状態を確認し、メンテナンスをする手間と時間が必要です。

掃除がしにくい

ロフトはあくまでも屋根裏です。そのため、埃がたまりやすく、こまめな掃除が欠かせません。一方で、ハシゴを使って掃除機を持ち上げるのはかなりの労力です。ロフト専用の掃除機をあらかじめ置いておく場合は、設計段階でコンセントを設置するなどの工夫が必要です。

実際の掃除では、天井高が低いために掃除機を使用せず、雑巾がけを行っているケースも多く見られます。日々の生活に時間的な余裕がある場合は問題ありませんが、多忙な人にとってはロフトの小さなスペースでも雑巾がけは大変な作業です。

そもそも、狭いロフトは物が占有しているスペースが多く、物を移動しながらの掃除はかなり大変です。ロフトの設置においては、掃除に手間と労力がかかることを理解しておきましょう。

ロフトの3つのメリット

デメリットを考えると「やっぱりロフトは設置しないほうがいいかも」と考える人もいるでしょう。しかし、ロフトならではのメリットもたくさんあります。メリットを活かすためには、ロフトを居住スペースとしてではなく、家での時間を充実させるためのスペースとして考えることが大切です。

天井が高くて開放感がある

ロフトのある部屋は天井が高く、開放感があります。同じ床面積でも、天井が高いことで部屋が広く感じられ、リラックスできる空間になるでしょう。シーリングファンなど、デザイン性に優れている設備とも相性がよく、室内全体がおしゃれな雰囲気になります。

天井高がある部屋は意外に使い方が難しく、ともするとガランとした印象になることもあります。だからといって、背丈の高い家具ばかりを配置すると圧迫感が生まれ、せっかくの天井の高さを活かせません。

また、ロースタイルを好む人は、できるだけ背丈の低い家具で揃えたいという希望もあるでしょう。ロフトがあればいいアクセントになり、背丈の低い家具でコーディネートしてもバランスよく仕上がります。

部屋をゆったりと使える

狭小住宅やワンルームマンションなどでロフトが好まれるのは、ロフト以外の居住スペースをゆったりと使えるからです。ロフトを就寝スペースとして使用すれば、部屋にベッドを置く必要はありません。ベッドは大きな部分を占める大型家具であり、そのスペースが空くだけでも生活上の可動域はかなり広くなります。

ロフトを収納スペースとして使用している場合は、部屋に収納ケースを置かずに済み、余裕が生まれます。特にワンルームなど居住スペースが狭い部屋では収納スペースも最小限に抑えているケースが少なくありません。中にはクローゼットのみという部屋もあります。

季節ものや平積みで収納したいものなどをロフトに移動することで、狭い部屋でも有効に活用できるでしょう。

趣味専用部屋として使用することも可能

ロフトを趣味専用部屋に

少し視点を変えて、趣味を楽しむスペースとしてロフトを活用するのもひとつの方法です。子どもたちはロフトに「大人は入れない秘密基地」としての楽しみを見出すかもしれません。設計時に天窓を付ければ、天体観察や星空を見ながら寝るといった大人ならではの楽しみ方もできます。

テレワークの普及により、作業専用のスペースが必要だと考える人も増えてきました。デジタルデバイスなどを自由に配置して、お気に入りの空間をつくるのも有効な使い方です。

まとめ

ロフトの使い勝手はとてもいいわけではありません。一方で、使い勝手の悪さを加味しても、捨てがたい魅力があることも事実です。いずれにしても、もっとも避けなければならないのは、せっかくのロフトが意味のない空間になってしまうことです。メリットとデメリットを把握して、ロフトのある生活を楽しみましょう。

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