最近、シンプルでミニマルな生活ができるということから注目されている「タイニーハウス」。そんな生活に憧れているという人も多いのではないでしょうか。そこで、タイニーハウスに住むメリットやデメリットをご紹介します。日本での事例と併せて紹介するので、ぜひシンプルな暮らしを思い描いてみてください。
タイニーハウスとは
タイニーハウス(tiny house)は言葉通り、tiny「ちっちゃな」_house「家」であり、小さな家のことを指します。日本語では小屋という意味になります。ほかにも、スモールハウスやマイクロハウスと呼ばれることもありますが、タイニーハウスと同じ意味合いです。どれほど小さいかというと、明確なルールはありませんが、6畳のワンルームだったり、6畳の1DKだったり。小さいものでは4畳半のタイニーハウスもあります。
なぜ、このような小さな家が注目されているのか。それは、ミニマルでシンプルな暮らしがトレンドになっていることが理由の一つです。以前は、大きな家こそが豊かさの象徴であるような風潮がありましたが、物を持ちすぎず大切なものだけを集めたシンプルな暮らしこそが、本当の豊かさだと考える人も増えてきたのです。
トレーラーハウス、コンテナハウスとの違い
タイニーハウスと同じように「小さな家」といえば、トレーラーハウスやコンテナハウスを思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、何が違うのかよくわからないという人もいるかもしれません。ここでは、トレーラーハウスとコンテナハウスの違いについて解説します。
・トレーラーハウス
トレーラーハウスとは、車輪が付いた家のことを指します。普通の車のように自走はできませんが、牽引などで移動できるのが特徴です。一つの土地に縛られることなく、日本中を旅しながら、住み慣れた家で生活できるとあって、その自由度が人気の秘密です。
さらに、トレーラーハウスは、「車両を利用した工作物」という扱いなので、建築確認が不要というメリットも。固定資産税もかからないという税制上の優遇も受けられます。法的には建築物と扱われませんが、中身は一般的な住宅と変わりません。居室のほかに、キッチンやトイレ、お風呂などもあり、まさに小さな家そのものです。
・コンテナハウス
コンテナハウスは、もともと物資の輸送に使われていた海上コンテナを再利用し、住居として建築されたものです。海外では、中古の海上コンテナをそのまま使って住居にすることもありますが、日本では建築物とみなされるため建築基準法に適合したものでなければ建てられません。
そのため、よく見かけるコンテナのような形の住宅は、コンテナを模したデザインのものであるか、コンテナに手を加えて建築基準法を満たす構造にしたものになります。コンテナハウスもトレーラーハウスと同様に、中身は普通の住宅と同じです。コンテナ一つの大きさでコンパクトに暮らしたり、コンテナを組み合わせて大きな住宅を建てることもできます。
タイニーハウスは小さい家、小屋という意味なので、工法や素材によって区別されるわけではありません。タイニーハウスでないトレーラーハウス・コンテナハウスもあれば、タイニーハウスのトレーラーハウス・コンテナハウスもあります。トレーラーハウスかコンテナハウスであるかにかかわらず、小さい家の総称をタイニーハウスと呼びます。
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費用や手続きの問題…建築確認、固定資産税は?
ミニマルな暮らしをしてみたいと考えたときに、気になるのが費用や手続きの問題です。家が小さい分、あまり費用がかからないと思われがちですが、実際はどうなのでしょうか。タイニーハウスは建築確認が必要なのか、固定資産税はかかるのかについて見ていきましょう。
建築確認
タイニーハウスは基本的に建築確認が必要です。実は車庫や物置など、小さい建物でも原則確認申請が必要になります。小規模な倉庫は建築物とみなさないという決まりもありますが、タイニーハウスではほとんどのケースで建築確認が必要です。ただし、以下の場合は建築確認申請が不要になります。
1.10平方メートル以下の建築物であること
2.増築・改築・移転であること(新築の場合は不可)
3.防火指定のない地域(防火地域・準防火地域以外の地域)
また、都市計画区域外であれば、200平方メートル未満(木造であれば500平方メートル未満)まで建築可能です。200平方メートル未満というと、およそ60坪。120畳に相当するので、ここまでの大きさになると、もはや「タイニーハウス」とは呼べないかもしれませんね。大きさでいうと、かなり自由度が高いタイニーハウスが建てられそうです。
固定資産税
建物に基礎があると土地に定着化しているということになるので、固定資産税が発生します。トレーラーハウスを除く、ほとんどの建物には固定資産税がかかると思っていていいでしょう。固定資産税は、評価額に標準税率の1.4%(税率は自治体によって異なる)を掛けて算出されます。
評価額は部屋が大きいほど高額になるため、その分納める税金も大きくなります。一方、タイニーハウスは面積が小さい分、一般的な住宅ほどの固定資産税はかからないでしょう。ライフサイクルコストを抑えられるのも、タイニーハウスに住む大きなメリットです。
タイニーハウスのメリット
タイニーハウスに住むとどんなメリットがあるのでしょうか。日本での事例を併せてご紹介します。
コストが安い
タイニーハウスは面積が小さいので、一般の住宅と比べると建築費が安く済みます。住居として住むのはもちろんのこと、タイニーハウスにはさまざまな使い道があります。趣味の部屋やゲストハウス、子どもの遊び場や別荘にしたり。大人の隠れ家的な居場所が、低価格で実現できます。
「IMAGO(イマーゴ)」というタイニーハウスは価格が105万円から、と非常にリーズナブル。セルフビルドなので、キットを組み立てて完成させます。家族や友人と一緒に、建てる楽しみも味わえます。
シンプルに暮らせる
タイニーハウスは、小さいので部屋も狭く、必然的に荷物は少なくなります。「大切なものだけに囲まれて暮らしたい」というミニマリストの生活にもぴったりです。シンプルな雑貨でおなじみの無印良品から発売されている「無印良品の小屋」は、ミニマルな暮らしにジャストフィット。
屋内は9.1平方メートルと、5畳程度の大きさでありながら、開口部が大きいので窮屈さを感じません。自然のなかに設置すれば、逆に開放感を感じるほどです。価格は標準仕様(材料費・施工費を合わせた税込価格)で300万円。群馬県の「無印良品カンパーニャ嬬恋キャンプ場」では宿泊もできるので、体感してみてはいかがでしょうか。
参考:良品計画
維持費を節約できる
タイニーハウスの小ささは、光熱費などの維持費の削減にもつながります。部屋が1部屋しかなければ、照明も少なくて済みますし、部屋が小さいのですぐに部屋が暖められ、冷暖房効率もアップします。自然の多い場所で建てるなら、太陽光発電システムと蓄電池を取り入れて電気の自給自足をしてみてはいかがでしょうか。環境にやさしい生活ができます。
移動も可能
トレーラーハウスなら移動もできます。そのときの気分で、必要最小限の荷物だけ乗せて旅をするのもすてきですね。先ほど述べたように、トレーラーハウスなら固定資産税も節約できます。日本でも乗用車で牽引できるトレーラーハウスを建てている人もいます。
タイニーハウスのデメリット
タイニーハウスは小さいため、一般的な住宅では感じられないような不便な点もあります。デメリットを押さえたうえで、購入を検討しましょう。
生活空間が狭い
タイニーハウスの大きなデメリットは、絶対的な狭さです。部屋が狭いため、どうしても物が増やせません。そのため、「物が捨てられない」「コレクションがたくさんある」という人は、タイニーハウスでの暮らしに窮屈さを感じてしまうかもしれません。また、家族と一緒に暮らす場合、1部屋しかないとプライベート空間の確保も難しくなってしまいます。
友人と電話をしたりする声が家族に筒抜けになってしまったり、リモート会議に子どもの声が入ってしまったり。せっかくシンプルな暮らしを求めてタイニーハウスを建てたのに、反対に物に圧迫されたり、家族に遠慮しながら生活することになってしまう可能性もあります。
独特のライフスタイルになる
タイニーハウスで生活する場合、いわゆる「普通の暮らし」が難しくなってしまいます。特に、子どもが幼稚園や小学校に上がると「うちは他の家庭と何か違う」と感じるかもしれません。
1人暮らしや夫婦だけの生活なら問題ないかもしれませんが、子どもを含めた生活においては、タイニーハウス暮らしは独特のライフスタイルになることを覚悟する必要があります。
セカンドハウス向き
ライフスタイルの制限や生活空間の狭さなどのデメリットを考えると、タイニーハウスはセカンドハウス(別荘)向きだといえます。その場合、単純にもう一つ住まいが増えることになるので、それ相応のコストがかかります。
たとえば、本宅は通勤に便利な都心の賃貸マンションで、別宅は自然が豊かな郊外という暮らし方です。別宅をタイニーハウスにすれば、それほど荷物も必要ないので、タイニーハウスでも十分ではないでしょうか。趣味の部屋やバーベキューを楽しむ部屋などに使えば、都会の喧騒から離れ、疲れを癒すことができるでしょう。
まとめ
タイニーハウスは、シンプルな暮らしを好む「ミニマリスト」や、自由な場所で働く「ノマドワーカー」など、現代の暮らし方にマッチした住まいです。ムダな物がなく、大切な物だけに囲まれた暮らしは、心を豊かにしてくれるでしょう。タイニーハウスを建てるときには、メリットだけではなくデメリットも踏まえて検討することが大切です。
(最終更新日:2024.04.19)