新築マンションが今年2021年は一気に増える? 去年からの動きと見極めポイント

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、2020年の新築マンション発売戸数は過去最低水準まで減少しましたが、2021年はかなりの増加が期待できます。ただし、価格は高値で横ばいが続きそうですし、コロナ禍で先行き不安もあります。選択肢は増えても買いにくい環境が続きそうです。

発売が先送りになった物件が市場に出てくる

民間調査機関の株式会社不動産経済研究所が、2021年1月25日に「首都圏マンション市場動向−2020年のまとめ−」を、2月24日には、「全国マンション市場動向-2020年のまとめ-」を発表しました。

それによると、2020年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で発売戸数は大幅にダウンしたものの、価格は高値でジワジワと上昇が続いています。厳しい環境下でも新築マンションは比較的堅調な販売が進んでいること、また2020年にはコロナ禍の影響で発売が先送りになっていた物件が多く、それらが市場に出てくる可能性が高いこと――などから2021年には発売戸数が増加すると予想されます。選択肢が増えるのは朗報ですが、価格的には現在の高値が続きそうです。

高値でも安定的に売れているところから、分譲会社は強気の姿勢で値付けを行っており、2020年並みの高値が続くことは間違いなく、物件によってはこれまでの相場より高い価格設定になるかもしれません。

首都圏の発売戸数はバブル崩壊時以来の低水準

まず、首都圏の新築マンション動向を見ると、図表1にあるように、2020年の新築マンション発売戸数は2万7,228戸と、2019年の3万1,238戸に対して12.8%の減少となりました。2020年4月に1回目の緊急事態宣言が発出され、ほとんどのモデルルームが閉鎖され、新築マンションの発売が先送りされて激減しました。秋口からは回復したものの、前年比で2桁台のマイナスになってしまいました。

首都圏の年間発売戸数が3万戸割れになったのは、バブル崩壊後の1992年の2万6,853戸以来、実に28年ぶりのことだそうです。

ただ、調査に当たった不動産経済研究所では、2021年の発売戸数は3万2,000戸になり、前年比17.5%の増加になるだろうとしています。コロナ禍の影響で2020年に発売を見送られたマンションが2021年に登場することになり、ほぼ2019年の水準に回復するのではないかと期待されています。

出典:株式会社不動産経済研究所「全国マンション市場動向-2020年のまとめ-」

首都圏の平均価格は6,000万円台の大台に

首都圏の新築マンションの価格は上昇が続いています。2020年の平均価格は6,083万円で、2019年の5,980万円に対して前年比1.7%の上昇でした。首都圏の新築マンション価格の上昇は2年連続で、6,083万円という数字は、バブルピーク時の1990年の6,123万円に次ぐ過去2番目の水準だそうです。

価格が1億円を超えるいわゆる億ションは1,818戸で、2019年より2.6%の減少で、過去最多の1990年の3,079戸に比べると大幅に減っています。億ションの数が少なくなるなかでの価格上昇ですから、首都圏の新築マンションのベースが全体的に押し上げられており、たいへん買いにくくなっているといってもいいでしょう。

なかでも、この価格の上昇を牽引しているのが東京都区部の存在です。図表2にあるように、2020年の東京都区部の平均価格は前年比5.8%アップの7,712万円になりました。この激しい上昇ピッチが2021年も続けば、なんと8,000万円台の大台に乗ってしまう計算です。

それに対して、神奈川県の2020年の平均価格上昇率は2.7%で、埼玉県は1.2%にとどまり、都下と千葉県は0.5%のダウンですから、東京都区部の上昇がひと際目立っています。

出典:株式会社不動産経済研究所「全国マンション市場動向-2020年のまとめ-」

全国の2020年発売戸数は1976年以来の低水準

次に、全国の動向をやはり不動産経済研究所の調査から見ると、図表3にあるように、2020年の新築マンション発売戸数は5万9,907戸でした。2019年の7万660戸に対して、前年比15.2%の減少です。これは、1976年以来の低水準でした。首都圏は、バブル崩壊後以来の少なさでしたが、全国的に見るとそれ以上に大きな落ち込みだったということになります。

反対にこれまでの最高を見ると、1994年の18万8,343戸でしたから、それに比べると2020年は3分の1以下に減少した計算です。

ただ、エリア別に見ると、三大都市圏はいずれも2桁台の減少ですが、なかには、北陸・山陰22.3%増、四国122.4%増とむしろ増加した地域もあります。こうしたエリアによる増減が、最後に触れる売主・事業主別ランキングに影響した可能性もありそうです。

なお、不動産経済研究所では、2021年の発売戸数は6万9,000戸と見込んでいます。2020年の実績に対して15.2%の増加であり、実際にそうなれば全国の新築マンション発売戸数が増加になるのは3年ぶりということになります。

出典:株式会社不動産経済研究所「全国マンション市場動向-2020年のまとめ-」

全国の平均価格は4年連続上昇して4,971万円

全国の新築マンションの2020年の平均価格は4,971万円でした。図表4にあるように、2019年の平均は4,787万円だったので、前年比では3.8%のアップです。先の首都圏の1.7%を上回る上昇率です。この4,971万円という価格は、全国平均としては過去最高で、これで4年続けて過去最高を更新していることになります。

5,000万円が目前ですが、2021年も2020年並みの上昇率になれば、初めて5,000万円台に到達することになります。

先にも触れたように首都圏平均では2020年に6,000万円台に乗り、東京都区部の平均は8,000万円が目前に迫っています。それに全国平均も5,000万円台乗るとなれば、いよいよ新築マンションは高嶺(高値)の花ということになりそうです。

出典:株式会社不動産経済研究所「全国マンション市場動向-2020年のまとめ-」

マンションの分譲会社にも動きが

不動産経済研究所の「全国マンション市場動向-2020年のまとめ-」では、売主・事業主別の発売戸数ランキングを作成しています。

その上位10社は図表5にあるとおりです。プレサンスコーポレーションが4,342戸で、初めてトップに立ちました。代わって、2014年から2019年まで6年連続1位を守り続けてきた住友不動産は3位に下がっています。

トップになったプレサンスコーポレーションという社名、首都圏にお住まいの皆さんにはあまりなじみがないかもしれません。図表5を見ればわかるように、首都圏の発売戸数は極めて少なく、6割以上を近畿圏が占めています。近畿圏と中部圏の発売戸数が多い不動産会社で、比較的リーズナブルな価格帯が中心のファミリー向けの「プレサンス ロジェ」、資産運用主体の「プレサンス」ブランドのマンションを供給しています。

2020年のランキングを見ると、5位のエスリードも近畿圏中心の会社で、6位のあなぶき興産は中国・四国、九州地方を地盤としています。

首都圏や近畿圏は地価が高くなりすぎ、マンション用地の取得が難しくなっている現在、首都圏や近畿圏だけに依存していては、ランキング上位の座を確保しにくくなっているのかもしれません。今後も、上位の顔ぶれには大きな変化が続く可能性がありそうです。

出典:株式会社不動産経済研究所「全国マンション市場動向-2020年のまとめ-」

価格や予算とともに分譲会社の見極めも大切に

みてきたように、2021年の新築マンション市場は、2020年に比べて発売戸数が増加、選択肢が増えていますが、価格は微上昇または高止まりの状態が続きそうです。

そのなかで、分譲会社には新たな勢力のシェアが高まっています。

2021年のマンション購入においては、価格や予算ともに分譲会社の見極めも大切になってきそうです。

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