近年は若い世代を中心に引っ越しの挨拶をしない人が増えています。ただし、引っ越しの挨拶をするかどうかは状況によって異なります。近所へ挨拶をするべきか、するとしたらいつ頃に行えばいいのかなど、悩んだことがないでしょうか。そんなお悩みを解消すべく、引っ越し時の挨拶マナーについて解説します。
引っ越しの挨拶をしない人はどのくらいいるの?
引っ越し時の挨拶をしないという人は、実際にはどのくらいいるのでしょうか。
不動産・住宅情報サイト【LIFULL HOME'S/ライフルホームズ】が、10~50代の男女364人を対象に行ったインターネット調査によると、3割以上の人が「挨拶しない」と回答しています。年代別では10代がもっとも多く、次に50代、20代という結果になりました。10代は1人暮らしをする人が多く、防犯上の理由からあえて挨拶をしないこともあるようです。
反対に、「挨拶する」と答えた人がもっとも多かったのは30代でした。次に多かったのが40代・20代で、各年代とも6割以上が引っ越し時に挨拶をしていることがわかりました。20代から40代は子育て世代でもあり、家族での引っ越しが多いことが関係していると考えられます。
参考:引越し時の挨拶、する?しない? 3割の人が引越しの挨拶をしない理由|LIFULL
引っ越しの挨拶をしない理由とは?
紹介したインターネット調査では、引っ越しの挨拶をしなかった理由についても尋ねています。特に多かったのが「時間やタイミングがなかった」「余計な人間関係をつくりたくなかった」「そもそも引っ越しの挨拶をしたことがない・されたことがない」というものでした。それぞれ具体的にみてみましょう。
挨拶のタイミングが合わない
20代に多かったのが、「挨拶に行く時間がなくてタイミングを逃してしまった」という理由です。20代といえば1人暮らしが多い年代です。仕事やアルバイトで帰宅が深夜になる、休日は朝から予定があるといったことが続くうちに、そのままになってしまったという人が多いのかもしれません。そもそも単身者向けのワンルームマンションなどでは、住民の生活サイクルがバラバラで在宅の時間を見計らうのが難しいとも考えられます。
面倒な人間関係に巻き込まれたくない
年代を問わず多かったのが「余計な人間関係をつくりたくない」という意見でした。地域によっては町内会や子ども会などの活動が盛んで、行事への参加を強く勧められることがあります。プライベートの時間を大切にしたいと考える人は、こうした地域のつながりには積極的ではありません。
また、もともと人づきあいが苦手という人もいます。ライフスタイルが多様化したことも関係して、近所の人とのコミュニケーションに必要性を感じない人が増えているのかもしれません。
そもそも挨拶をしたことがない
何度も引っ越しの経験がありながら、「これまでに引っ越しの挨拶をしたことがない」と答えた人も少なからずいました。反対に、「引っ越しの挨拶をされたことがないから」と答えた人も同じくらいの割合でみられました。比較的若い世代に多かったのが特徴です。20代・30代の単身者は就職や結婚などを機に住み替えるため、わざわざ引っ越しの挨拶などしないのが普通なのかもしれません。
引っ越しの挨拶をするタイミングはいつがベスト?
引っ越しの挨拶にもマナーがあります。近所の人とつきあう・つきあわないに関わらず、円満に暮らすためにもマナーは心得ておいたほうがよいでしょう。時間帯や挨拶用のちょっとした手土産など、引っ越し挨拶のキホンについて解説します。
旧居で引っ越しの挨拶をする場合
引っ越しの挨拶は転居先でするものと考えられがちですが、旧居でも挨拶しておくことをおすすめします。当日は引っ越し業者の出入りがあり、やや騒がしくなりますし、家の前にトラックが停まって近隣に迷惑をかけることがあるためです。
引っ越しの2~3日前から前日の夜までには挨拶を終えるようにしましょう。平日なら夜8時頃まで、休日なら午前10時から午後5時頃までに訪問します。なお、食事の時間帯は避けるようにしてください。
基本的には退去時の挨拶に手土産は不要です。用意するのであれば、500~1,000円ほどのお菓子やタオルなどの実用品がおすすめです。
新居で引っ越しの挨拶をする場合
新居では、引っ越しの日から数日以内には挨拶を済ませるようにしましょう。時間帯は退去時と同じく、食事の時間帯や早朝・深夜を避けるようにしてください。
新居での挨拶では、名前を覚えてもらうために「のし」をつけた手土産を持参するのが一般的です。日持ちするお菓子、お茶やコーヒー、タオルなど、500~1,000円程度のものが喜ばれます。相手の好みがわからないので、なるべく無難なものを選ぶようにしましょう。
どうしてもタイミングが合わないときは…
何度か訪ねても不在の場合には、挨拶の品に手紙を添えてドアポストや郵便受けにいれておくとよいでしょう。
その場合の挨拶の品は、ドアポストなどに入るサイズのものを選ぶようにしてください。ドアノブにかけておくという方法もありますが、紛失のおそれがありますし、食品は外気にさらされて品質が劣化するかもしれません。厚みのないパッケージのお茶やコーヒー、タオル、自治体指定のごみ袋など、コンパクトにおさまるものがおすすめです。
引っ越しの挨拶はどこまでするべき?
引っ越しのご近所挨拶といっても、どこまでが挨拶すべき範囲になるのかは悩ましいところです。集合住宅と戸建て住宅とでは挨拶しておきたい範囲が異なるため、それぞれ事前に把握しておきましょう。
マンションやアパートなどの場合
アパートやマンションなどの集合住宅では、両隣・真上・真下の部屋に挨拶するのが基本です。
両隣の部屋にはテレビの音や子どもの泣き声などが伝わります。廊下で顔を合わせることも多いため、挨拶をしておけば気まずい思いをすることがありません。上下の部屋にも生活音は伝わります。特に下の部屋には、気をつけていても音が響きやすいものです。子どもがいる家庭では、部屋の中を走り回る足音などがトラブルになることも珍しくありません。あらかじめ「子どもがいるので迷惑をかけるかもしれない」と伝えるようにしてください。
また、日頃お世話になるであろう管理人や家主へも、忘れずに挨拶しておきましょう。
一戸建ての場合は?
一戸建ての場合は、両隣・向かい・後ろの家に挨拶します。斜め向かいや斜め後ろにも接している家があれば、挨拶しておくとよいでしょう。これらの家は、ゴミ出しなど普段の生活で顔を合わせる機会が少なくありません。町内会に加入すれば同じ班になる可能性もあります。引っ越しの際に挨拶をすることでスムーズに地域にとけこめます。
また、町内会・自治会に加入する場合は、加入の申し込みがてら会長や役員に挨拶に行くようにしてください。その際に、地域の情報や注意事項などを確認しておくと、トラブル防止に役立ちます。
引っ越しの挨拶をしないデメリットは?
引っ越しの挨拶をしなかったからといって、そこに住めなくなるわけではありません。しかしながら、挨拶をしないことで次のようなデメリットが生ずることも覚えておいてください。
トラブルになったときに対処しづらい
ご近所トラブルで多いのが音に関するものです。子どもの声やペットの鳴き声、楽器や車・バイクの音など、本人はたいしたことはないと思っていても近隣には迷惑になっているかもしれません。特に集合住宅では、ちょっとした生活音もトラブルになりがちです。
ただし、顔見知りであれば気にならないという人も案外多いものです。普段からコミュニケーションをとって良い印象を与えていれば、トラブルにまで発展することはほとんどありません。引っ越し時の挨拶は、そのコミュニケーションの第一歩といえるでしょう。
災害時に頼りづらい
地震や台風などの災害時には、近所での助け合いが必要になることがあります。たとえば、介護が必要な家族がいる場合、人手がなければ避難できないかもしれません。両親が仕事に出ていて子どもが家にいる場合には、子どもが無事に避難できたかどうかが気にかかるでしょう。自分自身が災害に巻き込まれて、身動きできない状態になる可能性もあります。
そんなときに近所に顔見知りがいれば、心配してくれたり助けてくれたりするはずです。近所との関わりがあれば、緊急時の情報も得られやすくなります。自分の存在を知っておいてもらうために、引っ越し時には挨拶をしておくことをおすすめします。
近所に関する情報収集
自分が住む地域の情報は、先にその地域に住む近所の人に聞くのが一番です。特に子どもが小さいうちは、近所の人からの情報が子育てに役立つことが少なくありません。自治体が発行する広報やインターネットでも情報収集はできますが、引っ越し時の挨拶で同じような年頃の子どもがいる家族と知り合えれば、より有益な情報が期待できます。小児科や保育園・幼稚園などの情報を得るためにも、引っ越し時には挨拶をしておいたほうがよいでしょう。
引っ越しの挨拶をしないほうがいいケースもある
引っ越し時には近所に挨拶すべきと説明してきましたが、挨拶をしないほうがよいケースもあります。1人暮らしの女性は、防犯上の理由から挨拶を避けたほうが無難です。ワンルームマンションなど単身向けの物件では引っ越し時の挨拶を迷惑に思う人もいるため、無理にすることはありません。挨拶をする場合には両親や兄弟、友人などに同行してもらい、1人暮らしであることは隠すようにしてください。
まとめ
かつては引っ越し時の挨拶は常識とされていましたが、ライフスタイルが多様化した昨今は挨拶をしない人も増えています。特に若い世代に多く、1人暮らしの女性などは防犯上の理由からあえて挨拶をしないことも多いようです。反対に子どもや高齢者がいる家庭では、緊急時に近所の助けが必要になることもあります。ご近所トラブルを避ける意味でも、引っ越し時には挨拶をしておいたほうが無難です。