確定申告書の控えを紛失してしまった場合でも、再発行してもらうことができます。確定申告書の控えは融資の審査や保育園の申し込みなど、生活のさまざまな場面で必要となる重要な書類です。そのため、紛失したときは早めに再発行の手続きを行うことが大切です。今回は、確定申告書の控えを再発行する方法について詳しく解説していきます。
そもそも確定申告書の控えをもらうには?
確定申告書の控えとは、税務署が確定申告の書類を受け取った日付を示す「収受日付印(受付印)」が押されている書類のことをいいます。窓口で確定申告書類を提出した場合は、その場で収受日付印が押された控えをもらうことができます。しかし、郵送やe-Taxで提出した場合はいつ、どのようにして控えを受け取ることができるのでしょうか。確定申告書
の控えを受け取る方法について、詳しく見ていきましょう。
確定申告書を郵送で提出した場合
確定申告書を郵送で提出した場合は、返信用封筒を同封すると、控えを郵送で受け取ることができます。
確定申告書の控えを返送してもらいたい場合は、まず、申告時に「提出用」と「控え用」の両方の確定申告書類を同封します。税務署などで手に入る確定申告書類は複写式なので、原本と控えを切り離さずに、両方一緒に送付します。e-Taxなどを使って確定申告書のデータを作った場合は、控えの分まですべて印刷して、まとめて提出します。
そして、書類に加えて、自分の住所や氏名を書いて切手を貼った返信用封筒を同封します。
確定申告書を郵送する場合は、このように「控えの書類」と「返信用封筒」を一緒に提出することで、収受日付印が押された控えを返送で受け取ることができます。
e-Taxで確定申告をした場合
e-Taxでは確定申告のデータをインターネット経由で税務署に送るため、紙の申告書の控えを受け取ることはできません。しかし、「確定申告書のデータ」と「受信通知」の二つを提示することで、確定申告書の控えの代わりとして利用することができます。
e-Taxで確定申告を行うと、申告等のデータが税務署に到達したことを知らせる「受信通知」がメッセージボックスに届きます。この受信通知には「申告した人の氏名又は名称」「提出先税務署」「受付日時」「申告した科目」等が記載されており、確定申告書を提出した証明になります。所得を証明する際には、確定申告書のデータとこの受信通知を一緒に提出することで、確定申告書の控えの代わりとなります。
ただし、受信通知には保存期間があり、約5年が経過するとメッセージボックスから削除されてしまうので注意してください。
平成20年以降は、e-Taxを利用して確定申告を行った場合に、電子申請等証明書の交付を請求できるようになっています。電子申請等証明書は、確定申告のデータに電子署名が付与されているもので、このデータを確定申告の控えとして銀行などに提出することができます。
電子申請等証明書は、受信通知画面から請求することができます。請求が認められるとメッセージボックスに電子申請等証明書のファイルが交付されますので、それをダウンロードして利用しましょう。
確定申告書の控えが必要なケースとは?
確定申告書の控えは、会社員の源泉徴収票と同じように「所得を証明するための書類」としてさまざまな場面で必要になります。
たとえば、住宅ローンや自動車ローンなどの借り入れをするときには、融資の可否や融資の限度額を審査してもらうために確定申告書の控えを提出します。また、個人事業主の場合は、事業資金の借り入れに確定申告書の控えが必要となります。
また、保育園の保育料は親の所得によって決まるため、入園申し込みの書類として、確定申告書の控えを提出します。奨学金の申請では、奨学金が必要な家庭なのかを見極めたり、無利子か有利子かを決めたりするために、確定申告書の控えが必要となります。
このように、確定申告書の控えはさまざまな場面で必要となりますので、きちんと保管しておくようにしましょう。
確定申告書の控えを再発行してもらう方法
確定申告書の控えを紛失してしまった場合は、再発行してもらうことができます。ただし、再発行には一定の時間がかかりますので、確定申告書の控えが必要な場合は早めに手続きを行いましょう。それでは、再発行の具体的な手続き方法について、詳しく解説していきます。
開示請求をすれば控えを再発行してもらえる
確定申告書の控えを再発行したい場合は、過去の確定申告に関する開示請求を行います。
開示請求とは、納税者本人または代理人が税務署の窓口または郵送で申請することで、過去の確定申告の情報を開示してもらえる制度です。この開示請求を行うと、確定申告書の控えを紙面で受け取ることができます。
開示請求の申請では、窓口と郵送の2つの方法があります。
窓口で申請する場合は、まず、確定申告書を提出した税務署で「保有個人情報開示請求書」を提出します。この申請をすると原則として30日以内に開示の可否の通知が届きます。
開示が可能だった場合は、「保有個人情報の開示の実施方法等申出書」に必要事項を記載します。そして、通知から30日以内に税務署の窓口または郵送で提出し、申告書の控えを受け取ります。
申請の際には、本人確認書類(運転免許証や健康保険証、住民基本台帳カード、個人番号カード、外国人登録証明書など、氏名と住所が記載されている書類)が必要です。また、申告書に不備があったときに訂正できるよう、印鑑を持っていくと安心です。
郵送で申請する場合は、「保有個人情報開示請求書」と「本人確認書類の写し」に加えて、個人番号が記載されていない住民票の写しまたは外国人登録原票の写しを併せて郵送する必要があります。
窓口の場合と同様、開示の可否を受け取った後に、「保有個人情報の開示の実施方法等申出書」に必要事項を記入し、窓口または郵送で確定申告書の控えを受け取りましょう。
「保有個人情報開示請求書」や「保有個人情報の開示の実施方法等申出書」などの必要書類は、国税庁のホームページから入手できます。
開示請求するのにかかる費用は?
開示請求するのにかかる費用は、1件につき300円です。
窓口で申請をする場合は、「保有個人情報開示請求書」を提出するときに、請求件数に応じた手数料を現金で納付します。
郵送で請求する場合は、「保有個人情報開示請求書」に印紙を貼る欄がありますので、300円分の印紙を貼ってから送付します。行政文書1件につき300円の手数料が必要なので、複数の請求をする場合は、訴求件数に応じた金額の収入印紙を貼付しましょう。
開示の可否が届いたあとは、「保有個人情報の開示の実施方法等申出書」を記入して窓口もしくは郵送で提出します。郵送で確定申告書の控えを受け取りたい場合は、申出書と一緒に郵送料分の切手を貼った返信用封筒を、送付先を記載したうえで同封しましょう。特定個人情報(マイナンバーが記載された申告書)の写しが必要な場合は、追跡可能な手段で送付されるため、簡易書留郵便などの郵送料が必要です。また、速達で受け取りたい場合は速達分の切手を貼る必要があります。
開示請求をする際の注意点
開示請求をする際の注意点は3つあります。
一つ目は、開示請求にかかる時間です。開示請求で確定申告書の控えを取得するには約1ヶ月程度かかるため、早めに手続きを開始しないと必要な時期に間に合わないことがあります。たとえば、住宅ローン契約の場合では、書類がそろわずに住宅ローンの契約が遅れると金利が上がってしまい、当初思っていたよりも不利な条件での契約になってしまうことがあります。
また、奨学金や保育園の申し込みには締め切りがあるため、開示請求に時間がかかると書類の用意が間に合わず、申し込みができなくなることもあります。確定申告書の控えの再発行には時間がかかるため、できるだけ早く開示請求を行うことが大切です。
二つ目は、開示請求に必要な書類の種類についてです。一般的には、確定申告書の控えを請求するには「保有個人情報開示請求書」を提出しますが、特定個人情報(マイナンバー)が記載されている申告書の開示を請求する場合は、「特定個人情報開示請求書」を使用します。マイナンバー記載が必要かどうかによって、請求書類を使い分けましょう。
三つ目は、代理人請求についてです。代理人は申請書を提出する場合は、納税者本人が書いた「委任状」が必要です。この委任状には納税者本人(委任者)の実印を押印するため、委任状に加えて委任者の印鑑登録証明書も必要となります。印鑑登録証明書は市役所で取得できますので、早めに用意しておくようにしましょう。
申告書の内容を確認するだけなら閲覧請求もできる
証明書類としての確定申告書の控えは必要なく、過去の確定申告の閲覧のみを行いたいという場合は、閲覧請求をすることができます。閲覧請求は開示請求よりも簡単な手続きで行うことができ、申請日当日に過去の確定申告書を見ることができます。それでは、閲覧請求の方法について詳しく解説していきます。
確定申告書の閲覧請求をする方法
確定申告書の閲覧請求の方法は比較的簡単で、納税地の税務署の窓口で「申告書等閲覧申請書」を提出し、本人確認書類(運転免許証や健康保険等の被保険者証、個人番号カード、住民基本台帳カード、在留カードなど)を提示するだけです。申請が認められるとすぐにその場で確定申告書類を閲覧することができます。
閲覧請求では納税者本人だけでなく代理人も閲覧をすることができますが、代理人が申請する場合は委任状と印鑑登録証明書が必要となります。
また、代理人は親族以外では納税管理人、税理士や弁護士、行政書士などと決められており、代理人は委任状や印鑑証明書のほかに、資格士業の証明書やそれに代わるものを提示する必要があります。納税者の情報はこのように厳しく守られていますので、代理人が請求をする場合は必要なものをしっかりと準備するようにしましょう。
確定申告書を閲覧する際の注意点
確定申告書を閲覧する際には、いくつか注意点があります。まず、閲覧請求は納税地を管轄する税務署、つまり確定申告を行った税務署の窓口でしか申請することができません。ほかの税務署では閲覧できないので注意しましょう。
また、閲覧は窓口のみで申請が可能です。電話や郵送で問い合わせをしても、申告書の情報を教えてもらうことはできません。
閲覧では、デジタルカメラやスマートフォン、タブレットや携帯電話など、その場で写真が確認できる機器に限っては撮影が認められているものの、原則としてコピーをとることは認められていません。
写真を撮った場合も、その写真を証明書類として利用することはできません。所得の証明書類としての確定申告書の控えが欲しい場合は、開示請求を行うようにしましょう。
まとめ
確定申告書の控えを紛失したときには、開示請求を行うと再発行してもらうことができます。開示請求は税務署の窓口だけでなく郵送でも行うことができますが、どちらも申請から再発行まで約1ヶ月かかるため注意が必要です。
過去の確定申告書を確認するだけの場合は、開示請求ではなく閲覧請求でも可能です。閲覧請求は納税した税務署の窓口でのみ受け付けています。申請日当日に確定申告書を閲覧することができ、写真撮影も可能となっています。
確定申告書の控えは、さまざまな場面で必要となります。紛失した場合は、早めに再発行の手続きを行うようにしましょう。