窓を開けると街を一望できる景色、高層階からの眺めは格別です。防犯性や眺望の良さから、高層マンションに住んでみたいという人も多いのではないでしょうか。そこで気になるのが、高層マンションと「超」高層マンションの境界線。この記事では、高層マンションと超高層マンションの違いについてご紹介します。
違いに明確な定義はない
マンションについて調べていると、低層マンション・高層マンション・超高層マンションなど、いろいろな種別が出てきますよね。高層マンションに比べて、超高層マンションのほうが高いというのは想像がつきますが、どの程度高いのか、そのボーダーラインについてはあまり知られていません。
実は、マンションにおける低層・高層・超高層の区分に「これ」という明確な定義はないのです。「何階以上のマンションは超高層」と決められているわけではないので、周りの建物よりも高くそびえ立つマンションであっても、「超」がつかず高層マンションと呼ばれるケースもあります。とはいえ、この区分には一定の目安が広まっています。
なぜ、定義がないのに区別されているのかというと、その背景には建築に関わる法令があります。建築基準法や消防法、そのほかの法令をもとに、マンションの区別が定着化してきたといわれています。それでは一般的にはどのようなマンションを高層マンション、超高層マンションと呼ぶのでしょうか。
高層マンションは31メートル(10階)超
一般的には31メートル(おおよそ10階)を超えるマンションが高層マンションとされています。
31メートル超が基準
建築基準法や消防法などでは、建築物の高さによって、さまざまな制限がかかります。その区分は31メートル、60メートル、100メートルとされていて、高ければ高いほど基準が厳しくなっていくのです。そのなかで、31メートル超の建築物は「高層建築物」と呼ばれています。階数はおおよそ10階以上です。このことから、31メートルを超えるマンションは高層建築物となり、「高層マンション」と呼ばれることになったのです。
高層建築物では、非常用エレベーターの設置や消防計画の作成、消防用水の確保などが義務付けられています。マンションとしての定義はないものの、建築物の法令の定義によって、31メートルを超えるマンションは一般的に「高層マンション」と呼ばれているのです。
なぜ31メートル?
60メートルと100メートルと比べて、なぜ高層建築物は31メートルというキリが悪い数字なのでしょうか。それは、大正8年に制定された「市街地建築物法」の「百尺規制」からきているといわれています。大正時代では、建物の高さを尺という単位を用いて制限していました。当時、住居地域では65尺、住居地域以外では100尺という高さ制限が設けられ、50年もの間運用されていました。この100尺が今でいう31メートルに該当します。
その後、市街地建築物法が建築基準法として改正されましたが、以前の名残で31メートルが高層建築物の高さとして採用されているといわれています。
超高層マンションは60メートル(20階)超
高さ60メートル超えるマンションは、超高層マンションと呼ばれています。この区別にも、高層マンションと同じく法令が関わっています。そして、高層マンションよりも高いため、さらに厳しい制限が加わります。
60メートル超が基準
先ほどお話ししたように、建築物は高さによって法令上の制限が区分されています。60メートルを超える建物は建築基準法においてさらに厳しい規制が定められているため、「超高層建築物」と呼ばれています。階数はおおよそ20階です。そのため、超高層マンションとは、60メートル超のマンションとされています。つまり、高層マンションと超高層マンションとの線引きは「60m以下かそれを超えるか」になります。高層マンションと比べると、約倍の高さになるので、周辺のマンションのなかでもひときわ目立つ存在になるでしょう。この高さを支えるには、それ相応の強靭な建物が必要になります。
指定性能評価機関による審査
超高層建築物を建築するには、一般的な建物とは違い、建物の安全性を確認する複雑な計算(これを構造計算と呼びます)が必要になります。そのような建物においては、施主が建築確認申請を行う前に、国土交通大臣から認定を受けなければなりません。認定を受けるためには、事前に「指定性能評価機関」から審査を受けます。超高層マンションを建築する際に、主に審査されるのは下記の内容になります。
構造安全性能:時刻歴応答解析(地震時の揺れを細かく予測する方法)によって構造安全性を確認する
耐火性能:火災が発生した場合を想定し、発生から終了までの間に、「主要構造部の耐火性能」「開口部における防火設備の遮炎性能」を確認する
避難安全性能:火災が発生した場合に、館内にいる人が煙などにさらされることなく避難できるかどうか確認する
審査が完了すれば、性能評価書を受け取り、それをもとに認定を受けて初めて建築確認が下りることになります。厳しい基準をクリアしなければ、建築することはできないため、超高層マンションは安全性について信用できる建物だといえるでしょう。
人気を集めるタワーマンション
超高層マンションは「タワーマンション」とも呼ばれ、非常に人気があります。憧れる人も多いでしょう。なぜ、タワーマンションが人気なのか、その理由をご紹介します。
タワーマンションという呼び名が一般的に
今では超高層マンションという呼び方よりも「タワーマンション」「タワマン」という呼び名のほうがポピュラーです。そのため、タワーマンションの多くは、高さ60メートルを超え、20階以上の建物だと考えていいでしょう。
なかには、100メートルを超えるタワーマンションも多く建設されています。100メートル超の高さになると、階数も30階以上になる場合があり、より多くの住人が同じマンションに住むことになります。エレベーターの混雑も予想されるため、タワーマンションでは、高層階用と低層階用でエレベーターが分かれていて、スムーズな移動ができるような工夫も施されています。
100メートル超になると…
超高層建築物のなかでも特に高層で、100メートルを超える建物になると、新たな制限が加わることがあります。東京都の場合、100メートルを超える建築物には環境アセスメント条例が適用されます。高さの基準は都道府県によって異なりますが、100メートルを基準にしているところが多いです。
環境アセスメントとは建築物を建てることによって、周辺環境に与える影響(景観や日照阻害、風害、電波障害など)を調査したうえで、影響を回避する対策を講じることです。超高層建築物を建築すると、安全対策が必要なだけではなく、周辺の環境に与える影響についても十分な配慮が必要になってくるのです。
人気の理由1 眺望が良い
タワーマンションに住みたい理由として、最も大きいのが、眺めの良さです。街を見渡せる眺望は素晴らしく、都市部ではきらびやかな夜景も楽しめます。また、高層階は周りに日差しを遮るものが少ないため、日当たりが良い物件が多いのも特徴です。眺望の良さからステータスを感じる人も多く、高層階に行けば行くほど物件価格や家賃が高くなる傾向があります。
人気の理由2 充実した共用施設
タワーマンションには入居者が利用できる特別な施設があることが多いです。たとえば、トレーニングジムやスパがある施設では、運動して汗を流したりすることができます。ジムやスパは、通うのが面倒になりがちですが、同じタワーマンション内にあれば、仕事で忙しい人も気軽に通えます。また、リフレッシュにぴったりな、屋上カフェやライブラリーなどがあることも。特に、タワーマンションの屋上のカフェとなれば、その眺めはまさに絶景です。友人を招いたときにも喜ばれるでしょう。
人気の理由3 高度なセキュリティ
住まいについて考えるときには、窃盗や侵入などの犯罪から身を守れるかどうかも大切です。防犯対策として、防犯ガラスや二重ロックなどを取り入れている住宅もたくさんありますが、高層階なら窓からの侵入を心配する必要はありません。高さがあり、高層階の窓から侵入することは実質不可能です。マンションによっては、防犯カメラや多重オートロックを採用しているところも多く、セキュリティ性が高いのが特徴です。住人以外の人が許可なくマンション内に入ることはできないようになっているため、小さな子どもがいる家庭にとっても安心です。
人気の理由4 資産価値が高い物件が多い
タワーマンションは駅の近くに建てられることが多く、なかには駅に直結しているタワーマンションもあります。歩いてすぐの好立地なので、通勤や通学にもとても便利です。そして、人気の立地に建つ高層マンションは、資産価値が下がりにくい傾向があります。売却するときにも有利なことが多く、なかには購入時よりも高く売却できるケースもあります。憧れのタワーマンションとして、周囲に認知されている物件であれば、ステータス性も高く、極端に人気がなくなることもないでしょう。
まとめ
建築技術の進歩とともに、建物は高層・超高層と進化してきました。一般的に、60メートルを境界線として、高層マンションと超高層マンションに分けられています。高層マンションには、眺めの良さやセキュリティ性の高さ、好立地であれば資産価値が下がりにくいという、さまざまなメリットがあります。特徴を踏まえて、高層(超高層)マンションライフを楽しみましょう。