これまで、個人事業主が行う「確定申告」は、税務署に出向いて提出する方法が主流でした。しかし、新型コロナウイルスの感染症拡大を防止するため、非接触・非対面が推奨される今、「確定申告のデジタル化」が進む兆しを見せています。また、青色申告特別控除の要件変更なども、電子申告の普及を後押ししているようです。
外出自粛と青色申告特別控除の見直しで、電子申告の需要が拡大
弥生株式会社が「確定申告のデジタル化に関する意識調査」を実施。令和2年(2020年)分の確定申告について青色申告を予定している人に、電子申告(e-Taxによる申告)を利用する予定があるか質問をしたところ、38.9%の人が「電子申告の利用意向がある」と回答しました。
これは、令和元年分に「電子申告を利用した」と回答した人の26.5%に対し、12.4%増という結果となりました。一方、令和元年分の提出方法として31.6%と最も多かった「税務署へ持参する」人に関しては、令和2年分は22.7%という結果で、8.9%減となりました。
電子申告を利用する理由は「税務署に行かずに済むから」が54.6%と最も多く、コロナ禍における非接触・非対面の浸透も促進要因となっていることが推察されます。また「時間を気にせず手続きができるから」が44.7%と利便性も評価されています。「青色申告特別控除65万円が受けられるから」が29%という結果で、青色申告特別控除が後押しとなっていると考えられます。
一方、電子申告を利用しない理由としては「ICカードリーダーを買いたくないから」が32.9%、「紙での提出に慣れているから」が31.5%、「マイナンバーカードを持ちたくないから」が26.2%と続きました。事前準備や申告方法の変更の手間が阻害要因となっていると考えられます。
3人に1人が知らない! 青色申告の「電子申告による優遇制度」
令和2年分から変更になる「青色申告特別控除の要件変更」の認知率についても調査したところ、電子申告の利用意向がない青色申告者のおよそ3人に1人にあたる34.2%が、「青色申告特別控除の要件変更」について「知らない」と回答。「聞いたことはあるが内容は知らない」も含めると66.3%となり、およそ3人に2人が、正確に制度について把握していないことが明らかになりました。政府や企業による事業者への制度の周知不足が浮き彫りになる結果となりました。
青色申告特別控除額の要件変更とは?
確定申告には「青色申告」と「白色申告」があり、「青色申告」をするには、開業届と青色申告承認申請書の届出が必要です。確定申告の準備は「青色申告」のほうが複雑ですが、「青色申告特別控除」が受けられるため、所得税の大幅な節税が可能になります。
所得税の確定申告は、2020年分から青色申告特別控除と基礎控除の控除額が変わっています。これまでは要件を満たした場合の青色申告特別控除が65万円(要件を満たさない場合は10万円)、基礎控除が38万円でしたが、改正後には青色申告特別控除が55万円(10万円の場合は現行のまま)に減額、基礎控除が48万円に増額されます。
青色申告特別控除については、従来の要件に加えて「e-Taxによる電子申告」と「電子帳簿保存」のうち、いずれかの要件を満たせば、引き続き 65 万円の青色申告特別控除が受けられます。つまり、控除額は従来の103万円(65万円+38万円)より10万円多い113万円(65万円+48万円)となるのです。
詳しく読む:【もうすぐ】マイナンバーカードが無い人のための2021年版「確定申告」の流れ
業務の効率化を求め、書類や記録の整理もデジタル化の流れ
証憑(しょうひょう)整理(請求書や領収書などの書類を集めて整理すること)や取引記録を自動取込・自動仕訳をするインプットのデジタル化の意向について、令和元年に利用した人が26.2%なのに対し、令和2年に利用したい人は5.2%増の31.4%でした。利用したい理由としては「データ入力処理の作業時間を減らすため」が77.8%と、業務の効率化を求め徐々にデジタル化が進んでいることがわかりました。
まとめ
毎年税務署に出向いて確定申告を行っている人にとって、電子申告に切り替えることは抵抗があるかもしれません。しかし、新型コロナウイルスの感染リスクを軽減するため、そして控除額の観点からも、電子申告は魅力的な選択です。コロナ禍と制度変更を機に、電子申告も検討してみてはいかがでしょうか。
【調査概要】
「確定申告のデジタル化に関する意識調査」
調査対象:全国の20~70代の男女、令和 2 年分の確定申告を行う予定の個人事業者1,000名
調査方法:インターネットによるアンケート調査
実施期間:2021年1月18日~1月19日
実施機関:弥生株式会社