住宅購入時に利用できるお得な制度は「住宅ローン減税」が有名ですが、そのほかにも「すまい給付金」をはじめとするさまざまな制度があります。これらのほとんどが、自分で申請をしなければ制度の恩恵を受けることができません。期間限定の制度や自治体独自の制度もあるため、手続きを忘れることのないよう、あらかじめチェックしましょう。
「すまい給付金」で消費税増税の負担を軽減
「すまい給付金」は、消費税が5%から8%へと増税された際、住宅取得者の負担を軽減するために創設されました。2020年12月現在は年収775万円までの人が、収入に応じて最大50万円の給付金を受け取れます。50歳以上で収入額の目安が650万円以下であれば、住宅ローンを組んでいない人も給付金の対象となります。対象となるのは、2021年12月31日までに引き渡し、入居が完了した住宅です。
すまい給付金の支給額は、以下で求めることができます。
給付額=給付基礎額×持分割合
持分割合は、法務局に登記されている不動産(住まい)の持分に応じて決まります。
例えば、収入が450万円以下で給付基礎額50万円、持分割合100%の人は50万円が給付されます。
国土交通省の「すまい給付金」ページで給付額がシミュレーションできるので、一度確認してみましょう。
Try! あなたの「給付額」をチェックしてみよう!
すまい給付金シミュレーション
長期優良住宅・低炭素住宅の減税措置「投資型減税」
住宅ローンを利用せずに自己資金のみで住宅を購入した場合、住宅ローン減税を利用することができません。代わりに利用できる制度として、耐久性や省エネルギー性に優れた「長期優良住宅」「低炭素住宅」を対象として、自己資金のみで住宅を購入した場合も所得税が控除される「投資型減税」制度があります。性能強化に必要な「掛かり増し費用」の10%が所得税から控除されます(限度額あり)。
2021年12月までの措置で、最大控除額は65万円。控除しきれない部分は翌年の所得税から控除されます。ただし、住宅ローン減税との併用はできないため、注意が必要です。「投資型減税」を受けるための主な要件や手続き方法は、住宅ローン減税と同様です。詳しくは、「【税理士監修】今さら聞けない「住宅ローン減税」、適用条件や期間は?」をご覧ください。
住宅取得等資金の非課税制度で最大1,500万円が非課税に
20歳以上の人が両親または祖父母からマイホームの購入や新築・増改築のための費用を援助してもらう場合、住宅取得等資金の非課税制度を利用することにより、最大1,500万円まで贈与税が非課税となります(2020年4月1日~2021年3月31日まで)。
また、住宅購入に関わらず、「贈与税の基礎控除(暦年課税制度)」により、毎年110万円までの贈与は非課税というルールがあります。つまり、毎年110万円までは贈与されても贈与税がかかりません。この「贈与税の基礎控除(暦年課税制度)」は、住宅取得等資金の非課税制度と併用して使用することが可能なため、1,500万円+110万円=1,610万円までの贈与は、税金がかからないというわけです。
贈与税を減額できる「相続時精算課税」
「相続時精算課税制度」は、60歳以上の親もしくは祖父母からの贈与を受ける場合、2,500万円まで贈与税がかからず、相続時に相続税で精算する制度。20歳以上の子や孫が財産の贈与を受ける際に選択できます。その名の通り、贈与時ではなく相続時に「精算」つまり納税の必要があり、それまでは税金の支払いを先延ばしにできます。「住宅取得等資金の非課税制度」とも併用可能で、併用した場合、最大4,000万円(1,500万円+2,500万円)まで贈与税が非課税となります(消費税10%時、住宅用家屋の取得に係る契約の締結日が2020年4月1日~2021年3月31日の場合)。
「相続時精算課税」にはいくつかの注意点があります。まず、一度利用すると、以後の贈与はすべてこの制度の対象となってしまうため、前段落で紹介した「贈与税の基礎控除(暦年課税制度)」は使用できません。また、贈与財産の種類や贈与回数に制限はなく、合計2,500万円になるまで贈与税が課税されませんが、2,500万円を超えた分は一律20%が課税されます。贈与した人が亡くなったタイミングで過去まで遡って清算されるため、注意が必要です。
なお、「相続時精算課税」には、マイホーム用の資金に対して特例があり、2021年12月31日までの住宅取得等資金の贈与の場合は、贈与者(親もしくは祖父母)の年齢がその贈与の年の1月1日時点で60歳未満であっても「相続時精算課税」を利用できます(適用には一定の要件があります)。
まとめ
住宅購入時には、税負担の軽減や繰り越し、給付金など、さまざまな支援制度を利用できます。これらのほとんどが、自ら申請しない限り、制度の恩恵を最大限に享受することはできません。お得な制度を見逃すことがないよう、早めの情報収集と行動を心がけてみてはいかがでしょうか。
監修:税理士 土屋 裕昭(土屋会計事務所)
(最終更新日:2021.03.19)